127 / 139
Ⅴ 由佳の選択
18 誰だった?
しおりを挟む
神戸に帰った次の日、吉見先生から連絡された駅に行った。
改札を出ると、満面の笑みをうかべた大柄な女性が近づいて来る。香奈さんではなかった。
しかし誰だか思い出せない!
「先輩、やっと会えた」
第一声で、誰だか分かった。水泳部の後輩だ。確か浅岡先生の娘さんだったな。
弁当を作ってくれて、卒業式にも来てくれた。・・・・名前が出てこない。
第二声は、泣きそうな声で言った。
「足が痛くてもう立ってられへん。どこかで座っていいですか?」
顔に玉のように汗が浮かんでいる。暑いのにいつから待っていたんだ?
とりあえず近くのコーヒーショップに入った。そこで彼女は延々話し続けた。
まだ名前が思い出せない。
なぜ足が痛いのか?いつもはぺったんこ靴ばかりなのに、無理してヒールを履いてきたから。
よそ行きの格好をするのは今日が初めて。
先輩は水泳部に入った時からあこがれていた。かっこいいし、何より私より背が高い。
先輩が仁志さんのことが好きなのは分かっていた。だから彼女が卒業したら告白するつもりだった。でも先輩が3年になって部活に来なくなったので、思い切って教室に会いに行った。
でも疲れた顔の先輩を見て何も言えなくなった。
話を中断して、顔を直してくると言って席を離れた。
高校の時よりほっそりしているとはいえ、バタフライの選手だっただけに華奢とは言い難い。
先程聞くと、身長は170cmと言ったがもっとあるような気がする。
最後に会ったのは卒業式だったな。
10分も過ぎて戻ってきた時、さっき見た顔と様子が違うので面食らった。
どうもメイクは慣れていないようだ。
ほぼ素顔の彼女を見て、ようやく『木ノ嶋みどり』という名前を思い出した。
話は延々と続いた。
水泳部のお別れ会に呼んだ時、初めて手をつなぐことができた。うれしくてその日は手を洗わなかった。卒業式でも握手してくれたけど、もう会えないと思うと悲しくて家で泣いた。
おまけに先輩が六甲大に合格したと聞いて、もう無理って思った。
私なんかが行ける大学じゃないから。
高3になって、私も六甲大に行こうと思って必死に勉強した。
体重が減って成績は上がったけど、入試には落ちてしまった。進学したのは第二志望の県立看護大。それでも母は奇跡だって喜んだけど、私は残念な気持ちで一杯だった。
先輩がオリンピックに出ると知って、水泳部の友達と横断幕を作った。
ゴールした時、感動して大泣きした。同じように近くで涙を流していた吉見先生が、私の思いを聞いてくれた。
先月、吉見先生から先輩と会う気があるかどうか聞かれて夢かと思った。
先輩がテレビで見たあのきれいな女性と別れるなんて信じられなかったから。
今日は、成人式の日以上に時間をかけてお化粧をしてきた。
母さんは私に一番似合うのはトレーニングウェアだというけど、先輩には大人の女性になった私を見てほしかった。
彼女は、由佳となぜ別れたのか聞かなかった。多分吉見先生から聞いているのだろう。
何時間も話を聞くだけのデートだったが、心の憂さが晴れるような気がした。
9月の出会いから、彼女に誘われるまま、月二、三度のデートに付き合った。
映画、コンサート、テーマパーク。プールにも行った。
行かなかったのはカラオケと回転寿司。
デートはそれなりに楽しかった。
同じ高校の水泳部だったという共通の話題があるし、淳一が黙っていても話し続けてくれるので気が楽だ。
並んで歩いていると、肩を寄せてきたり、おずおずと淳一の手を握ってきたりする時がある。
その手を握り返すと、とてもうれしそうにした。
でもそれ以上のことはしなかった。家に送ったことはあるが、部屋に呼んだことはない。
改札を出ると、満面の笑みをうかべた大柄な女性が近づいて来る。香奈さんではなかった。
しかし誰だか思い出せない!
「先輩、やっと会えた」
第一声で、誰だか分かった。水泳部の後輩だ。確か浅岡先生の娘さんだったな。
弁当を作ってくれて、卒業式にも来てくれた。・・・・名前が出てこない。
第二声は、泣きそうな声で言った。
「足が痛くてもう立ってられへん。どこかで座っていいですか?」
顔に玉のように汗が浮かんでいる。暑いのにいつから待っていたんだ?
とりあえず近くのコーヒーショップに入った。そこで彼女は延々話し続けた。
まだ名前が思い出せない。
なぜ足が痛いのか?いつもはぺったんこ靴ばかりなのに、無理してヒールを履いてきたから。
よそ行きの格好をするのは今日が初めて。
先輩は水泳部に入った時からあこがれていた。かっこいいし、何より私より背が高い。
先輩が仁志さんのことが好きなのは分かっていた。だから彼女が卒業したら告白するつもりだった。でも先輩が3年になって部活に来なくなったので、思い切って教室に会いに行った。
でも疲れた顔の先輩を見て何も言えなくなった。
話を中断して、顔を直してくると言って席を離れた。
高校の時よりほっそりしているとはいえ、バタフライの選手だっただけに華奢とは言い難い。
先程聞くと、身長は170cmと言ったがもっとあるような気がする。
最後に会ったのは卒業式だったな。
10分も過ぎて戻ってきた時、さっき見た顔と様子が違うので面食らった。
どうもメイクは慣れていないようだ。
ほぼ素顔の彼女を見て、ようやく『木ノ嶋みどり』という名前を思い出した。
話は延々と続いた。
水泳部のお別れ会に呼んだ時、初めて手をつなぐことができた。うれしくてその日は手を洗わなかった。卒業式でも握手してくれたけど、もう会えないと思うと悲しくて家で泣いた。
おまけに先輩が六甲大に合格したと聞いて、もう無理って思った。
私なんかが行ける大学じゃないから。
高3になって、私も六甲大に行こうと思って必死に勉強した。
体重が減って成績は上がったけど、入試には落ちてしまった。進学したのは第二志望の県立看護大。それでも母は奇跡だって喜んだけど、私は残念な気持ちで一杯だった。
先輩がオリンピックに出ると知って、水泳部の友達と横断幕を作った。
ゴールした時、感動して大泣きした。同じように近くで涙を流していた吉見先生が、私の思いを聞いてくれた。
先月、吉見先生から先輩と会う気があるかどうか聞かれて夢かと思った。
先輩がテレビで見たあのきれいな女性と別れるなんて信じられなかったから。
今日は、成人式の日以上に時間をかけてお化粧をしてきた。
母さんは私に一番似合うのはトレーニングウェアだというけど、先輩には大人の女性になった私を見てほしかった。
彼女は、由佳となぜ別れたのか聞かなかった。多分吉見先生から聞いているのだろう。
何時間も話を聞くだけのデートだったが、心の憂さが晴れるような気がした。
9月の出会いから、彼女に誘われるまま、月二、三度のデートに付き合った。
映画、コンサート、テーマパーク。プールにも行った。
行かなかったのはカラオケと回転寿司。
デートはそれなりに楽しかった。
同じ高校の水泳部だったという共通の話題があるし、淳一が黙っていても話し続けてくれるので気が楽だ。
並んで歩いていると、肩を寄せてきたり、おずおずと淳一の手を握ってきたりする時がある。
その手を握り返すと、とてもうれしそうにした。
でもそれ以上のことはしなかった。家に送ったことはあるが、部屋に呼んだことはない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる