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Ⅴ 由佳の選択
24 養子縁組
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前から考えていた改名を、本気でしようと決心した。
選択肢はいくつもあった。
子供のころの安原にするか、篠山に住む祖父母の細見か、みどりの本名である浅岡でもよかった。
一番簡単なのは、みどりと結婚して妻方の姓にすることだ。
木ノ嶋というのは通称で、浅岡みどりが本名だ。
そのことを話すと、みどりは大喜びをした。
「私と結婚してくれるんやったら、名前なんか何でもかまへん。早くしよう。来月でもええやん」
まさか4回生になった4月に学生結婚か。
「まあ結婚は、卒業してからでもいいだろう?二人共就職して二、三年した頃にしようかな」
彼女は、泣きそうな顔になった。
「あかんて。淳ちゃんが陸上でいい記録出したら、また有名になってタレントさんみたいな人に囲まれる。私そんなん嫌や。捨てられるん嫌や」
「まさか。じゃあもう走るのを止めようか?」
「それも嫌や」
まるで小さな子供だ。しかし名前を変えるのは、予想外に早まった。
お寺の住職である、三田島の伯父さんから声をかけられたのだ。
前に住んでいた古い平屋を建て直すので、また一緒に住まないかという誘いだった。
話し合いには、みどりを連れて行った。
「由佳の事ではいろいろ迷惑をかけてしまったが、もう一度うちに住む気はないかな?部屋の間取りとかは、君の希望を聞いて建ててもいいと思っている」
伯母さんが、お茶を持ってきた。
「淳一さんさえよかったら、前に話した養子縁組の事、もう一度考えてくれないかしらね。あなたが出て行った後、私たち寂しくてねえ。できたらこのお嬢さんも来てくれたらうれしいわ。あなた方、いつかは結婚するんでしょう?」
彼女はうれしそうに何度もうなずいた。
そうだな。改名を先延ばしにするより、さっさと決めてしまった方がいいかもしれない。
4月、三田島淳一として4回生をスタートした。
寺に移り住むのは半年後と決まった。部屋の設計は、みどりが手伝うことになった。
陸上競技部のトレーニングに参加するようになった。
筋肉量が落ちていたので、筋トレで体を絞り運動量を増やした。
陸上競技部の新しい主将は、吉泉監督の指名で東田が選ばれていた。
彼は大学院に進み、後数年間は走り続けると宣言している。
淳一は陸上競技全般の技術指導担当になった。
といっても中長距離走以外何も知らない。監督は試合で選手を励ますだけでいいと言ってくれた。
俺に出来る事はそれくらいしかない。
2年前、淳一をサポートしてくれた先輩の顔はなく、新入部員があこがれのなまなざしで見つめてくる。やれるだけ責任を果たそうと思った。
みどりを東田に紹介した。
彼は、淳一とみどりの顔を交互に見比べ、何とも言えない顔をした。
「ええと、僕は彼の保護者みたいなもんです。一人だと大変だったので、これから君と一緒に倉本君を世界の陸上界に戻しませんか?」
そう言ってみどりの手を握った。いつも東田はクールで如才ない。
みどりは学外から六甲大学陸上競技部に、マネージャー兼トレーナー兼救護担当になった。
主に大会にだけ来るのだが、テーピングや怪我の手当てなど手際が良いので、俺なんかよりもはるかに部員から頼りにされている。
選択肢はいくつもあった。
子供のころの安原にするか、篠山に住む祖父母の細見か、みどりの本名である浅岡でもよかった。
一番簡単なのは、みどりと結婚して妻方の姓にすることだ。
木ノ嶋というのは通称で、浅岡みどりが本名だ。
そのことを話すと、みどりは大喜びをした。
「私と結婚してくれるんやったら、名前なんか何でもかまへん。早くしよう。来月でもええやん」
まさか4回生になった4月に学生結婚か。
「まあ結婚は、卒業してからでもいいだろう?二人共就職して二、三年した頃にしようかな」
彼女は、泣きそうな顔になった。
「あかんて。淳ちゃんが陸上でいい記録出したら、また有名になってタレントさんみたいな人に囲まれる。私そんなん嫌や。捨てられるん嫌や」
「まさか。じゃあもう走るのを止めようか?」
「それも嫌や」
まるで小さな子供だ。しかし名前を変えるのは、予想外に早まった。
お寺の住職である、三田島の伯父さんから声をかけられたのだ。
前に住んでいた古い平屋を建て直すので、また一緒に住まないかという誘いだった。
話し合いには、みどりを連れて行った。
「由佳の事ではいろいろ迷惑をかけてしまったが、もう一度うちに住む気はないかな?部屋の間取りとかは、君の希望を聞いて建ててもいいと思っている」
伯母さんが、お茶を持ってきた。
「淳一さんさえよかったら、前に話した養子縁組の事、もう一度考えてくれないかしらね。あなたが出て行った後、私たち寂しくてねえ。できたらこのお嬢さんも来てくれたらうれしいわ。あなた方、いつかは結婚するんでしょう?」
彼女はうれしそうに何度もうなずいた。
そうだな。改名を先延ばしにするより、さっさと決めてしまった方がいいかもしれない。
4月、三田島淳一として4回生をスタートした。
寺に移り住むのは半年後と決まった。部屋の設計は、みどりが手伝うことになった。
陸上競技部のトレーニングに参加するようになった。
筋肉量が落ちていたので、筋トレで体を絞り運動量を増やした。
陸上競技部の新しい主将は、吉泉監督の指名で東田が選ばれていた。
彼は大学院に進み、後数年間は走り続けると宣言している。
淳一は陸上競技全般の技術指導担当になった。
といっても中長距離走以外何も知らない。監督は試合で選手を励ますだけでいいと言ってくれた。
俺に出来る事はそれくらいしかない。
2年前、淳一をサポートしてくれた先輩の顔はなく、新入部員があこがれのなまなざしで見つめてくる。やれるだけ責任を果たそうと思った。
みどりを東田に紹介した。
彼は、淳一とみどりの顔を交互に見比べ、何とも言えない顔をした。
「ええと、僕は彼の保護者みたいなもんです。一人だと大変だったので、これから君と一緒に倉本君を世界の陸上界に戻しませんか?」
そう言ってみどりの手を握った。いつも東田はクールで如才ない。
みどりは学外から六甲大学陸上競技部に、マネージャー兼トレーナー兼救護担当になった。
主に大会にだけ来るのだが、テーピングや怪我の手当てなど手際が良いので、俺なんかよりもはるかに部員から頼りにされている。
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