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最終話
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組事務所に連れて来られた椿は服を脱がされ、ストッキングや下着を剥ぎ取られ、髪の毛を掴まれて奥の組長専用のベッドルームへと連れて行かれた。
「さあ楽しもうじゃねえか? 宇宙食もあるぜ」
「いやあー! 止めて!」
組長の小野寺は椿を押さえつけると、覚醒剤の入った注射器を椿の腕の静脈に刺した。
注射器に椿の血液が少し逆流して来た。
「これを使うとな? もうお前は俺から離れられなくなる。
宇宙食が欲しくて欲しくてたまらなくなるんだ。
これから三日三晩、お前を調教してやる。
最高のエクスタシーをお前に教えてやるぜ」
椿は次第に抵抗するチカラを失っていった。
大体の状況は把握出来た。
俺はキッチンのシンク下の扉を開け、キッチン収納の上に新聞紙に包んで粘着テープで留めて隠しておいた、トカレフと実弾10発を取り出し、釣竿のケースに入れておいた日本刀を鞘から抜き、慎重に刃を確認した。
そして刃物避けるために新聞紙を重ね、上半身に晒布を巻いてそれを固定した。
女房の遺影に手を合わせた。
「女を取り返して来る」
俺は紅鯱の組事務所へとひとりで向かった。
途中、会社の人事宛に辞表をポストに投函した。
会社に迷惑を掛けたくはなかったからだ。
組事務所に着くと、俺はインターホンを押した。
「どちらさんですか? こんな時間に」
「俺の女を返してもらいにやって来た。ここを開けろ」
すると遠隔でドアが解錠された音がした。
俺は階段を上がり、二階の事務所の扉を開いた。
事務所には組員が4人いて、俺を威嚇した。
「椿を返してもらう」
「誰だそれ? ここにはそんな女はいないぜ。ここは紅鯱のオフィスだ。
怪我しねえうちに早くけえんな」
俺はその組員の顔を殴りつけた。蹲る男。
事務所が騒然となった。
「オッサン、タダでここから出られると思うなよ!」
「極道に喧嘩売るとはいい度胸だ!」
「もうここから生きて帰ることは出来ねえぜ?」
男たちは金属バットや木刀を握り、俺に近づいて来た。
「なーんだ。お前も同業者か?」
俺のワイシャツの袖から入れ墨が透けて見えたようだった。
「どこの組のモンかしらねえが、手加減はしねえ。
覚悟は出来ているんだろうな!」
俺は釣竿のケースから日本刀を取り出して上段に構えた。
「やる気か? 面白えじゃねえか? ちょうど退屈していたところだ!
容赦しねえぞこの野郎!」
俺はその男の左腕を切り落とした。
「うぎゃーーーーっつ!」
男たちがひるんだ。
そして俺は腰のベルトからトカレフを抜いた。
「コイツ、チャカまで持っていやがる!」
「女はどこだ?」
組事務所内に緊張が走った。
その時、奥の部屋から椿の声がした。
奥に進み、俺はドアを開けた。
椿が口から涎を垂らし、男に犯されていた。
(シャブを打たれたのか?)
「何じゃお前!」
「あなた・・・、助けに、来てくれたの、ね? うれ、しい・・・」
俺はためらうこと無く組長の額と左胸を撃ち抜き、仰向けに転がった男の股間に銃弾を撃ち込んだ。
そこへ男たちがなだれ込んで来た。
「往生せえや!」
男たちは俺に切り込み、銃弾を浴びせた。
「キャーーーーーッ!」
大森の亡骸に縋って椿は大森の血を浴び、狂ったように泣き叫んだ。
1週間後、警察の聴取も終わり、椿は柳津虚空蔵尊の前に架かる瑞光寺橋の中央に立っていた。
椿は美空ひばりの『川の流れのように』を呟くように歌った。
知らず知らず 歩いて来た
細く長い この道
振り返れば 遥か遠く
故郷が見える
でこぼこ道や
曲がりくねった道
地図さえない
それもまた人生・・・
翌日、椿の遺体があがった。
椿の実家跡で出会った老婆がポツリと言った。
「あの娘の人生は、生まれてからずっと、不幸続きの人生だったな・・・」
椿の一生は、椿の華のように咲いて、儚くポトリと落ちた短い人生だった。
『寒椿』完
「さあ楽しもうじゃねえか? 宇宙食もあるぜ」
「いやあー! 止めて!」
組長の小野寺は椿を押さえつけると、覚醒剤の入った注射器を椿の腕の静脈に刺した。
注射器に椿の血液が少し逆流して来た。
「これを使うとな? もうお前は俺から離れられなくなる。
宇宙食が欲しくて欲しくてたまらなくなるんだ。
これから三日三晩、お前を調教してやる。
最高のエクスタシーをお前に教えてやるぜ」
椿は次第に抵抗するチカラを失っていった。
大体の状況は把握出来た。
俺はキッチンのシンク下の扉を開け、キッチン収納の上に新聞紙に包んで粘着テープで留めて隠しておいた、トカレフと実弾10発を取り出し、釣竿のケースに入れておいた日本刀を鞘から抜き、慎重に刃を確認した。
そして刃物避けるために新聞紙を重ね、上半身に晒布を巻いてそれを固定した。
女房の遺影に手を合わせた。
「女を取り返して来る」
俺は紅鯱の組事務所へとひとりで向かった。
途中、会社の人事宛に辞表をポストに投函した。
会社に迷惑を掛けたくはなかったからだ。
組事務所に着くと、俺はインターホンを押した。
「どちらさんですか? こんな時間に」
「俺の女を返してもらいにやって来た。ここを開けろ」
すると遠隔でドアが解錠された音がした。
俺は階段を上がり、二階の事務所の扉を開いた。
事務所には組員が4人いて、俺を威嚇した。
「椿を返してもらう」
「誰だそれ? ここにはそんな女はいないぜ。ここは紅鯱のオフィスだ。
怪我しねえうちに早くけえんな」
俺はその組員の顔を殴りつけた。蹲る男。
事務所が騒然となった。
「オッサン、タダでここから出られると思うなよ!」
「極道に喧嘩売るとはいい度胸だ!」
「もうここから生きて帰ることは出来ねえぜ?」
男たちは金属バットや木刀を握り、俺に近づいて来た。
「なーんだ。お前も同業者か?」
俺のワイシャツの袖から入れ墨が透けて見えたようだった。
「どこの組のモンかしらねえが、手加減はしねえ。
覚悟は出来ているんだろうな!」
俺は釣竿のケースから日本刀を取り出して上段に構えた。
「やる気か? 面白えじゃねえか? ちょうど退屈していたところだ!
容赦しねえぞこの野郎!」
俺はその男の左腕を切り落とした。
「うぎゃーーーーっつ!」
男たちがひるんだ。
そして俺は腰のベルトからトカレフを抜いた。
「コイツ、チャカまで持っていやがる!」
「女はどこだ?」
組事務所内に緊張が走った。
その時、奥の部屋から椿の声がした。
奥に進み、俺はドアを開けた。
椿が口から涎を垂らし、男に犯されていた。
(シャブを打たれたのか?)
「何じゃお前!」
「あなた・・・、助けに、来てくれたの、ね? うれ、しい・・・」
俺はためらうこと無く組長の額と左胸を撃ち抜き、仰向けに転がった男の股間に銃弾を撃ち込んだ。
そこへ男たちがなだれ込んで来た。
「往生せえや!」
男たちは俺に切り込み、銃弾を浴びせた。
「キャーーーーーッ!」
大森の亡骸に縋って椿は大森の血を浴び、狂ったように泣き叫んだ。
1週間後、警察の聴取も終わり、椿は柳津虚空蔵尊の前に架かる瑞光寺橋の中央に立っていた。
椿は美空ひばりの『川の流れのように』を呟くように歌った。
知らず知らず 歩いて来た
細く長い この道
振り返れば 遥か遠く
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でこぼこ道や
曲がりくねった道
地図さえない
それもまた人生・・・
翌日、椿の遺体があがった。
椿の実家跡で出会った老婆がポツリと言った。
「あの娘の人生は、生まれてからずっと、不幸続きの人生だったな・・・」
椿の一生は、椿の華のように咲いて、儚くポトリと落ちた短い人生だった。
『寒椿』完
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