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第16話
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東北新幹線で仙台駅に着いた。私はタクシーに乗り、そのまま祥子のマンションを訪ねることにした。
玄関ドアの前でチャイムを押したが反応はなかった。電話はしないで欲しいということだったので、直接やって来たのだから、それはやむを得ないことだった。
(不在か?)
インターフォンから男の声がした。
「誰だ?」
「祥子さんの知り合いの者です」
するとドアが開き、入れ墨のある全裸の男がいきなり私の髪を掴み部屋の中に引き摺り込んだ。
「お前、俺の女に手を出した奴だな? 直接乗り込んで来るとはいい度胸してんじゃねえか? 手間が省けてよかったぜ。どうなるか分かってここへ来たんだろうな? 辰巳会の俺の女に手を出してただで済むと思うなよ」
いきなり5発殴られ、前歯が2本折れた。
「彼は関係ないわ! 見逃してあげて!」
そこには全裸で縛られ、アザだらけになった祥子が転がっていた。
顔もかなり腫れ上がっていた。
「安心しろ、殺しはしねえよ。コイツは大切なATMだからなあ。とりあえずこれだけ今すぐ銀行に行って下ろして持って来い」
黒沢は指を三本立てた。
「それだけ払えば祥子は返してくれるのか?」
「返してくれるだあ? お前日本語がわかんねえのか? 祥子は俺の女だ、どうしてお前に返すんだよ。これは慰謝料だ、賠償金だよ賠償金、俺の女を寝取ったんだからなあ。そうだろう?」
「だったら断る」
「それじゃあゲームをしようぜ。俺も最近退屈してんだよ。海を見に行こうぜ、ついてきな。
おい、客人と海にドライブするからクルマを持って来い」
10分もしないうちにガラの悪い連中がやって来て、私はワゴン車に乗せられた。
「早く乗れ」
男たちは薄ら笑いを浮かべていた。
仙台湾の砂浜に到着すると、先に来ていた子分が穴を掘っていた。
黒沢は祥子を連れてランド・クルーザーでやって来た。
「ルールは簡単だ、お前はその穴に入って首だけ出している、そこへ俺がランクルで駆け抜ける。
お前が悲鳴をあげたり、顔を背けなければお前の勝ちだ。カネは要らねえ。
だがもしお前が声を出しり目をつぶったら、1千万、俺に払え。いいな?」
私は男の手下に両脇を掴まれ、首だけ出して砂浜に埋められた。
「お願いだからやめて、何でも言うことを聞くからあ!」
「おめえは黙ってろ! これは男と男の勝負だ、それじゃ始めるぜ」
黒沢はランクルに乗り込み、エンジンをふかした。
ダダダン ダダダン ダダダン
黒沢が乗ったランクルが、100キロ近いスピードで私の顔を僅か15センチほどで通過した。
クルマから黒沢が降りて来た。
「お前、いい根性してるじゃねえか?」
黒沢が私の頭を蹴り飛ばした。
「祥子はいい女だよなあ、あんないい女は中々いねえ。毎日切った張ったの世界でしのぎを削って生きている俺にとって、アイツは宝だ。いい女を手に入れることは手段じゃなくて目的なんだよ。祥子は誰にも渡さねえ、二度と祥子の前に現れるんじゃねえぞ」
そう言うと黒沢は祥子と子分を連れて去って行った。
私はカラダを少しずつ動かし、砂浜の穴からやっとの思いで這い出した。
辺りはすっかり闇に包まれ、波と風の音がした。
玄関ドアの前でチャイムを押したが反応はなかった。電話はしないで欲しいということだったので、直接やって来たのだから、それはやむを得ないことだった。
(不在か?)
インターフォンから男の声がした。
「誰だ?」
「祥子さんの知り合いの者です」
するとドアが開き、入れ墨のある全裸の男がいきなり私の髪を掴み部屋の中に引き摺り込んだ。
「お前、俺の女に手を出した奴だな? 直接乗り込んで来るとはいい度胸してんじゃねえか? 手間が省けてよかったぜ。どうなるか分かってここへ来たんだろうな? 辰巳会の俺の女に手を出してただで済むと思うなよ」
いきなり5発殴られ、前歯が2本折れた。
「彼は関係ないわ! 見逃してあげて!」
そこには全裸で縛られ、アザだらけになった祥子が転がっていた。
顔もかなり腫れ上がっていた。
「安心しろ、殺しはしねえよ。コイツは大切なATMだからなあ。とりあえずこれだけ今すぐ銀行に行って下ろして持って来い」
黒沢は指を三本立てた。
「それだけ払えば祥子は返してくれるのか?」
「返してくれるだあ? お前日本語がわかんねえのか? 祥子は俺の女だ、どうしてお前に返すんだよ。これは慰謝料だ、賠償金だよ賠償金、俺の女を寝取ったんだからなあ。そうだろう?」
「だったら断る」
「それじゃあゲームをしようぜ。俺も最近退屈してんだよ。海を見に行こうぜ、ついてきな。
おい、客人と海にドライブするからクルマを持って来い」
10分もしないうちにガラの悪い連中がやって来て、私はワゴン車に乗せられた。
「早く乗れ」
男たちは薄ら笑いを浮かべていた。
仙台湾の砂浜に到着すると、先に来ていた子分が穴を掘っていた。
黒沢は祥子を連れてランド・クルーザーでやって来た。
「ルールは簡単だ、お前はその穴に入って首だけ出している、そこへ俺がランクルで駆け抜ける。
お前が悲鳴をあげたり、顔を背けなければお前の勝ちだ。カネは要らねえ。
だがもしお前が声を出しり目をつぶったら、1千万、俺に払え。いいな?」
私は男の手下に両脇を掴まれ、首だけ出して砂浜に埋められた。
「お願いだからやめて、何でも言うことを聞くからあ!」
「おめえは黙ってろ! これは男と男の勝負だ、それじゃ始めるぜ」
黒沢はランクルに乗り込み、エンジンをふかした。
ダダダン ダダダン ダダダン
黒沢が乗ったランクルが、100キロ近いスピードで私の顔を僅か15センチほどで通過した。
クルマから黒沢が降りて来た。
「お前、いい根性してるじゃねえか?」
黒沢が私の頭を蹴り飛ばした。
「祥子はいい女だよなあ、あんないい女は中々いねえ。毎日切った張ったの世界でしのぎを削って生きている俺にとって、アイツは宝だ。いい女を手に入れることは手段じゃなくて目的なんだよ。祥子は誰にも渡さねえ、二度と祥子の前に現れるんじゃねえぞ」
そう言うと黒沢は祥子と子分を連れて去って行った。
私はカラダを少しずつ動かし、砂浜の穴からやっとの思いで這い出した。
辺りはすっかり闇に包まれ、波と風の音がした。
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