【連載】気まぐれ日記エッセイ「残された時間の過ごし方」

菊池昭仁

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B型作業所

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 介護支援サポートを受けることになりました。
 病院を退院して4月に介護申請をして市役所のやさしい女性調査員の方がおふたりで自宅訪問。こうなった経緯を細かくヒアリングされ、家族関係等も詳しく訊かれました。

 「菊池さんの場合、介護認定の要件はすべて満たしていらっしゃいますので1ヶ月後には認定になる筈です」

 しかし、2ヶ月経っても何の返答もない。仕方なく問い合わせをしてみると「訪問記録がありません」と言われ、「えっ、ちゃんと真面目そうな美人職員さんが身分証をぶら下げて家庭訪問にお出でになりましたよ。もしかすると都知事? じゃなかったタヌキが化けた?
 お名前は忘れましたが確かにいらっしゃいました」

 散々たらい回しをされてようやく別の部署であることが判明したのが3日後でした。

      
      「認定になっております」

 
 やれやれこれで介護支援してもらえるのかと思っていると、今度はその介護支援サポートをしてくれる事業所さんを選んで下さいと言われました。
 
 「わかりました」

 一難去ってまた一難。これが実に大変でした。いただいた冊子にある事業所さんのリストは小さくて目の不自由な私には虫メガネでも見えない。スマホのカメラで拡大して連絡するも、

 「すみません、今、ウチはいっぱいいっぱいなんです」

 と何件か断られてしまいました。
 やっと介護支援サポートさんが見つかり、ホットしているのも束の間、また家庭訪問をするというのです。学校か?

 「またヒアリングですか?」
 「はい、生活の状況と身辺調査、それを書類にまとめてまた市役所に提出してそれからおよそ2ヶ月掛かります」
 「あはははは それでは介護支援サポートを受ける前に死んじゃいますね?」
 「なるべく早く役所に申請書類を提出しますので」

 と恐縮至極な美人サポーターさん。なぜか私のところにやって来る女性は皆美人なのがうれしい。

 「よろしくお願いします」
 「それから菊池さん、ワンちゃんは大丈夫ですか?」
 「ワンちゃん? 大好きですけどそれが何か?」
 「ウチはB型作業所もやっているんですよ、もしよろしければ作業所で働いてみませんか? お小遣い程度のお給料も出ますので」
 「でも私は目が不自由で心不全に腎不全のポンコツですよ。何も出来ません。出来たら支援なんかお願いしませんしね?」
 「いろんな方がいらっしゃいます。好きなことをしていただければいいのです。菊池さんはお料理が得意なのでお食事を作っていただいたり、保護犬のワンちゃんの相手をしていただくだけで結構です。作業所には保護犬が4匹います。いかがですか?」
 「食事を作って犬と遊んでお金がもらえるんですか?」
 「はい、わずかですが」

 
 そしてようやく認定証が届きB型就労なる場所へ。

 月曜日から金曜日まで、10時から15時までのお昼を挟んでの5時間をこの施設でお世話になっています。
 
 今日でやっと5日が過ぎました。1日約300円ほどでランチと送迎込み。精神を病んでいる人やカラダの不自由な人と一緒に過ごしています。
 スタッフさんが私のことを大袈裟に褒めて下さったようで、みなさんやさしくてとても親切にしてくれます。

 正直に言うと、この手の事業をされている人は胡散臭い人が多いのでちょっと警戒していました。
 でもこの会社の女性の会長さんとその優秀な息子さん社長にお会いしてお話をするとすぐに意気投合。愛の人たちでした。

 あったんです、拙著『寺子屋ひまわり』が現実に。

 この仕事は愛がないと出来ません。こども食堂と同じなんです。
 弱者のために働く人たちに感動しました。

 ということで新しく作る『儲からないカフェ』の企画をお手伝いをすることになりました。
 
 ああ、完成するまで死にたくないなあ。
 
 
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