★【完結】私、東京調理魔法専門学校を退学になりました(作品240523)

菊池昭仁

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第6話

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 「・・・2,998、2,999、3,000! やったねノア!」

 すでに東の空が明るくなっていた。
 コアラのタンゴは3,000回のノアのスクワットをようやく数え終えた。
 ノアはヘロヘロであった。


 「あー、やっと終わった~」
 「ノア、よくがんばったね?」
 「ありがとうマーチ、じゃなかったタンゴ。もう数え間違えないでね?」
 「ごめんごめん」

 そこへデカプリオ和尚がやって来た。

 「腹が減ったじゃろう? メシの用意が出来ておるから手を洗って来なさい」


 本堂に行き、ノアとタンゴは大日如来様に礼拝を済ませると、お膳の前に正座をした。
 一汁一菜の食事。
 艶々つやつやの炊き立てのご飯、豆腐となめこ、ネギの味噌汁。
 白菜漬けとアジの開きが用意されていた。

 「美味しそう! これみんなデカプリオ先生が作ったんですか?」
 「心を込めて料理をし、感謝して食事をいただく。
 食事も大事な修行なのじゃ。さあいただくとしよう」
 「いただきます!」
 「いただきまーす!」

 ノアはその美味しさに驚いた。

 「すっごく美味しいです! このお味噌汁!」
 「そうか? なめこも豆腐も、もちろん味噌もみんなワシの自家製じゃ。
 豪華な食事がいいというものではない、感謝して食べるということが尊いのじゃ。 
 人間は自分が生きるために命をいただかなければならん、罪深き存在なのじゃよ、人間は。
 みんな忘れておるのじゃ、どんなに美味しい食事も、健康だからこそ美味しくいただけるということをな?
 食事が美味しく食べられる、健康にも感謝するべきなのじゃ」
 「私、食事はいつもファミレスばっかりでした」
 「ファミレスが悪いというのではない、その食事に作り手の心が宿り、それを感謝して食べるかなのじゃ。
 きちんとした食事とはジュエル・ロブションや数寄屋橋次郎で食べることではない。
 カラダが喜ぶ食事を摂ることなのじゃ」


 ノアとタンゴが感謝して食事を終えると、デカプリオがノアに尋ねた。

 「母親のような伝説の魔女になって、お前は何がしたいのじゃ?」

 ノアはきっぱりと言った。

 「ママのかたきを討ちます。大司教のフロイスを殺して」
 「それで?」
 「それでって、それで終わりですけど」
 「復讐してソフィアは悦ぶのか?」
 「・・・喜んでくれるはずです」 
 「おそらくソフィアは歓びはしないじゃろう。自分のかわいい娘が人殺しになることを歓ぶ母親はおらん。
 フロイスを殺してもソフィアが生き返ることはない。
 憎しみはまた新たな憎しみを生む。復讐の連鎖は止まらないのじゃ」

 ノアは泣きそうだった。

 「いいかノア、魔女になることが悪いというのではない。
 復讐するために魔女になるのは悲しすぎはしないか?
 魔女になる本当の目的を忘れてはいかん。まあ、良い。それが分かったらワシに言うが良い、その答えを」
 「はい」
 「よし、では次の修行じゃ。この裏山にお堂がある。そこのお堂から「キリストの聖杯」を持って来るのじゃ。
 タンゴ、道案内をしてやりなさい」
 「えっ! あのお堂にですか? ブルブル」

 コアラのタンゴは怯え、ノアの腕にしがみ付いて震えていた。ブルブル

 「そんなに怖いところなの?」
 「3人のモンスターがいるんだよ。この前なんか、食べられそうになっちゃったんだから!」
 「えっーウソ~! ヤダヤダそんなのヤダ!」
 「ごちゃごちゃ言わずに聖杯を取って来い。それからこれを持って行くがよい」

 デカプリオ和尚はノアにスマホを渡した。

 「これを持ってゆけ。役に立つこともあるかもしれんからのう」

 
 コアラのタンゴとノアは、しぶしぶ山に入って行った。 

 
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