★【完結】私、東京調理魔法専門学校を退学になりました(作品240523)

菊池昭仁

文字の大きさ
5 / 10

第5話

しおりを挟む
 「せ、千回終わりました~」

 服部理事長は箒にまたがると、

 「それじゃあノアさん、がんばって下さいね?
 デカプリオ先生、よろしくお願いします」
 「この娘次第じゃがな?」

 服部理事長は飛んで行ってしまった。


 「よし、次は滝行じゃ」
 「滝ってこの寒いのに? 夜だよ死んじゃうよ!」
 「お前はデリヘル嬢となって身も心もけがれてしまった。
 風俗で働くしかなかったのはわからんでもない、それが悪いと言っておるのではない。 
 風俗に行く男は快楽を求めて金を払う。つまり性欲の処理にやって来るのじゃ。
 穢れた欲望を捨てに来る。誰に?」
 「私にですよね?」
 「そうじゃ、男たちはお前に性欲を捨てに来る。
 お前は性欲のゴミ箱、便所のようになってしまっておるのじゃ。
 魔法をあやつる者は言葉遣い、身体、心が澄んでいなければならない。 
 魔法は天の力だからじゃ」


 その滝は10mほどの落差があり、滝幅は2m位のものだった。
 デカプリオは九字を切り、滝を清めた。

 白装束しろそうぞくに着替えたノアは、月光に照らされた滝を見詰めて言った。

 「大丈夫なんですか? 丸太とかヘビとか落ちて来ませんか? イノシシとか?」
 「イノシシやマムシ、熊なんかもたまに落ちてくるがな? だが心配には及ばん、その時は運が悪かったと思えばよい。修行には運も大切じゃからな? わはははは」
 「全然大丈夫じゃないじゃないですか!」
 「大丈夫じゃ、たぶん。
 ノアは守られておるから安心するがよい。先程教えた経文を唱えよ」
 「わかりました」


 滝に入るとそれは氷がドカドカ降ってくるようだった。

 「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・」

 ノアはだんだんトランス状態になり、遂に無の境地に達した。
 すると母親のソフィアが目の前に現れ、ノアを見て微笑んでいた。

 「ノア、がんばるのよ、ママがついているから大丈夫、デカプリオの教えを守っていい魔女になりなさい」

 それだけ言うと母、ソフィアは消えてしまった。

 「ママっ!」

 ノアは叫んだ。

 「ノア、もう上がってもよいぞ」

 滝から上がるとノアは言った。

 「ママに会いました」
 「ワシも見ておった。美しさは変わらぬままじゃったな?」
 「とってもキレイでした」
 「どうじゃ? 滝行をしてみて?」
 「身体がとても軽くなりました」
 「綺麗な瞳をしておる、穢れは落ちたようじゃ。着替えて来なさい、修行再開じゃ」

 

 「腕立て伏せ1,000回、それが終わったらスクワット3,000回!」
 「そんなの無理ですよー、アントニオ猪木さんじゃないんだからあ」
 「言われた通りにやれ、口応えは許さん!」

 ノアはしぶしぶ腕立て伏せを始めた。

 「女子プロレスラーになるんじゃないっつうの!」

 すると体が急に重くなった。

 「さーん、 よーん、 ごーお、ろーく・・・」

 背中から声が聞こえた。
 振り返るとノアの背中にコアラが乗っているではないか。

 「ちょっとアンタ誰? 重いから早く降りなさいよ!」
 「ダメだよ、デカプリオ様から叱られちゃうよ。
 ノアが誤魔化さないように数を数えるように言われたんだ。
 僕の名前はタンゴ、よろしくね? ノア」
 「笑わせないでよ、笑いすぎて腕立て伏せが出来ないじゃないのー!
 どうしてコアラのマーチじゃなくて「コアラのタンゴ」なのよー!」
 「権利の都合上、仕方がないんだよー。笑ってないで早くやらないとデカプリオ様に怒られちゃうよ、ノア」
 「だったら背中から降りてよね、重いじゃないのよお!」
 「だってノアの背中って気持ちいいんだもん、あー、凄くいい匂いがするー。
 ノアだから『レ・ノア』だったりして? キャハ」

 コアラのタンゴはノアの背中に頬ずりをした。

 「まったくもう!」

 ノアは再び腕立てを始めた。

 「いーち、にー、さーん・・・」
 「どうして最初っからなのよ!」
 「だっていくつまで数えたか忘れちゃったんだもん。テヘペロ」

 ノアとタンゴはいいコンビになったようである。たぶん。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

奥様は聖女♡

喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。 ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜

自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...