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第4話
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ノアは魔法学校を退学処分になり、すっかり落ち込んでしまい、何もする気になれなかった。
母親のような伝説の魔女になるために、中世のフランスから現代の東京へとタイムスリップしたノアだったが、その夢が絶たれてしまった。
ノアは『ペロペロ・キャンディ』を辞めた。
リンダも退学になってしまった。
ふたりはいつものファミレスでボッーとしていた。
「ごめんねノア、私がデリなんかに誘ったばっかりにこんなことになっちゃって・・・」
「ううん、そんなことないよ、気にしないでリンダ。
どちらにしても授業料が払えなかったんだから同じことだよ」
「これからどうするの?ノア」
「マックかムーン・バックスで働くよ」
「ああー、魔女になりたかったなあー。
あのレッサーパンダと都知事みたいなロッテンマイヤー、最悪」
「ホントだよね?」
「私、実家のラーメン屋を手伝うことにしたんだ」
「そう、今度食べに行くね?」
「うん、チャーシューおまけしてあげる、チャーシュー麺にしてあげるからね? 中華そばを頼んでも」
「ありがとうリンダ」
ノアは和風おろしハンバーグを食べながら、深い溜息を吐いた。
リンダと別れ、夜の街をトボトボと歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「ノアさん、白石ノアさん」
ノアが振り返ると、そこにはニッコリと笑う、恰幅のよいカーネルサンダースみたいな老人が立っていた。
「はじめまして、私、東京調理魔法専門学校の服部と申します」
それは服部理事長だった。
「こんばんは理事長、御校を退学になった私に何の御用ですか?」
「ノアさん、今回は実にお気の毒でした。残念ですが規則ですから止むを得ません。
あなたは魔法科では成績も優秀だし、このまま普通の女の子になるのは勿体ない。
まああなたのようにチャーミングならサッシーや前田敦子、村重のようになんちゃら49にもなれるかもしれませんが、ドラマや映画に出たら人気はガタ落ちになるかもしれません。
そこでどうでしょう? 魔女になるためのプライベート・レッスンを受けてみる気はありませんか?」
「プライベートレッスンだなんて怪しいじゃないですか? それって個人営業のデリヘルっていうことですか?
私はもうデリヘルは辞めたんですよ」
服部理事長は大声で笑った。
「そういう類のものではありません、実はウチの学校を定年退職した魔法使いがおりましてな? ノアさんのことを話しましたら「弟子にしてもいい」ということになりまして、それでいかがかと思いましてお誘いしたわけです」
「バイトも辞めたのでお金もありません、レッスン料もお支払い出来ませんから無理です。
私は両親を亡くしてステラおばさんと暮らしているので」
「もちろん無料です」
「無料? 無料で魔法使いの弟子にですか?」
「そうです、あなたには素質がある。
それに私も彼もあなたのお母さんのファンでした。
いやあ、あなたのお母さんは美熟女、じゃなかった美魔女でした。
私たち魔法使いたちの憧れでした。
あんなことさえなければ、ウチの東京調理魔法専門学校の校長になっていたはずです」
「ママが校長に?」
「ソフィアは凄い魔女でした。たった一人で3匹のドラゴンを倒し、蒲焼にしてしまったのですからな?
あれは実に見事だった」
「ドラゴンを蒲焼にですか? 鰻みたいに?」
「そうです、都民全員に振舞って下さいました。
いかがですか? 会うだけ会ってみませんか?
ただし、その魔法使いは相当な変わり者ですが」
「本当に魔女になれますか?」
「来年の1級魔法士の試験を受けてみてはどうです?
独学よりはいいと思いますよ」
「じゃあ、お願いします!」
「では早速参りましょう、これに乗って下さい」
服部理事長はノアに魔法の箒を渡した。
ふたりは箒にそれぞれ跨ると、東京の高層ビルの谷間を抜け、奥多摩の山中へと飛んで行った。
「ここです」
そこは小さな古いお寺だった。
「お寺じゃないですか?」
「はい、そうですけど何かおかしいですか?」
「おかしいでしょう? だって魔法はキリスト教でしょう? 仏教じゃなくて?」
「仏教でも魔法は使いますよ、誰が決めたんですか? 魔法使いはキリスト教だと?」
「だってハリーポッターだって、あんなカッコいいホグワーツの魔法学校で勉強していたじゃないですか?」
「あれはあれ、これはこれです。
振袖の美魔女なんて、ステキじゃないですか?」
すると首から大きな数珠をぶら下げた、海坊主のような和尚が出て来た。
「おう、この娘がソフィアの娘か?」
「そうなんだデカプリオ、来年の1級魔法士に合格出来るようによろしく頼むよ」
(デカプリオ? この海坊主が? どう見ても武蔵丸だろうが!)
デカプリオ和尚はギロリとノアを見ると言った。
「悪かったな、武蔵丸じゃなくて。デカプリオ伊藤だ、よろしくな? ノア」
ノアは驚いた。心の中が読まれていたからだ。
「白石ノアです。よろしくお願いします」
「俺の修行は厳しいぞ、大丈夫か?」
「頑張ります!」
するとデカプリオはノアに魔法の杖を渡して言った。
「ノブレスオブリージュと呪文を唱えながら素振り1,000回! 始め!」
ノアは素振りを始めた。
こうしてノアはデカプリオ伊藤の弟子になったのである。
母親のような伝説の魔女になるために、中世のフランスから現代の東京へとタイムスリップしたノアだったが、その夢が絶たれてしまった。
ノアは『ペロペロ・キャンディ』を辞めた。
リンダも退学になってしまった。
ふたりはいつものファミレスでボッーとしていた。
「ごめんねノア、私がデリなんかに誘ったばっかりにこんなことになっちゃって・・・」
「ううん、そんなことないよ、気にしないでリンダ。
どちらにしても授業料が払えなかったんだから同じことだよ」
「これからどうするの?ノア」
「マックかムーン・バックスで働くよ」
「ああー、魔女になりたかったなあー。
あのレッサーパンダと都知事みたいなロッテンマイヤー、最悪」
「ホントだよね?」
「私、実家のラーメン屋を手伝うことにしたんだ」
「そう、今度食べに行くね?」
「うん、チャーシューおまけしてあげる、チャーシュー麺にしてあげるからね? 中華そばを頼んでも」
「ありがとうリンダ」
ノアは和風おろしハンバーグを食べながら、深い溜息を吐いた。
リンダと別れ、夜の街をトボトボと歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「ノアさん、白石ノアさん」
ノアが振り返ると、そこにはニッコリと笑う、恰幅のよいカーネルサンダースみたいな老人が立っていた。
「はじめまして、私、東京調理魔法専門学校の服部と申します」
それは服部理事長だった。
「こんばんは理事長、御校を退学になった私に何の御用ですか?」
「ノアさん、今回は実にお気の毒でした。残念ですが規則ですから止むを得ません。
あなたは魔法科では成績も優秀だし、このまま普通の女の子になるのは勿体ない。
まああなたのようにチャーミングならサッシーや前田敦子、村重のようになんちゃら49にもなれるかもしれませんが、ドラマや映画に出たら人気はガタ落ちになるかもしれません。
そこでどうでしょう? 魔女になるためのプライベート・レッスンを受けてみる気はありませんか?」
「プライベートレッスンだなんて怪しいじゃないですか? それって個人営業のデリヘルっていうことですか?
私はもうデリヘルは辞めたんですよ」
服部理事長は大声で笑った。
「そういう類のものではありません、実はウチの学校を定年退職した魔法使いがおりましてな? ノアさんのことを話しましたら「弟子にしてもいい」ということになりまして、それでいかがかと思いましてお誘いしたわけです」
「バイトも辞めたのでお金もありません、レッスン料もお支払い出来ませんから無理です。
私は両親を亡くしてステラおばさんと暮らしているので」
「もちろん無料です」
「無料? 無料で魔法使いの弟子にですか?」
「そうです、あなたには素質がある。
それに私も彼もあなたのお母さんのファンでした。
いやあ、あなたのお母さんは美熟女、じゃなかった美魔女でした。
私たち魔法使いたちの憧れでした。
あんなことさえなければ、ウチの東京調理魔法専門学校の校長になっていたはずです」
「ママが校長に?」
「ソフィアは凄い魔女でした。たった一人で3匹のドラゴンを倒し、蒲焼にしてしまったのですからな?
あれは実に見事だった」
「ドラゴンを蒲焼にですか? 鰻みたいに?」
「そうです、都民全員に振舞って下さいました。
いかがですか? 会うだけ会ってみませんか?
ただし、その魔法使いは相当な変わり者ですが」
「本当に魔女になれますか?」
「来年の1級魔法士の試験を受けてみてはどうです?
独学よりはいいと思いますよ」
「じゃあ、お願いします!」
「では早速参りましょう、これに乗って下さい」
服部理事長はノアに魔法の箒を渡した。
ふたりは箒にそれぞれ跨ると、東京の高層ビルの谷間を抜け、奥多摩の山中へと飛んで行った。
「ここです」
そこは小さな古いお寺だった。
「お寺じゃないですか?」
「はい、そうですけど何かおかしいですか?」
「おかしいでしょう? だって魔法はキリスト教でしょう? 仏教じゃなくて?」
「仏教でも魔法は使いますよ、誰が決めたんですか? 魔法使いはキリスト教だと?」
「だってハリーポッターだって、あんなカッコいいホグワーツの魔法学校で勉強していたじゃないですか?」
「あれはあれ、これはこれです。
振袖の美魔女なんて、ステキじゃないですか?」
すると首から大きな数珠をぶら下げた、海坊主のような和尚が出て来た。
「おう、この娘がソフィアの娘か?」
「そうなんだデカプリオ、来年の1級魔法士に合格出来るようによろしく頼むよ」
(デカプリオ? この海坊主が? どう見ても武蔵丸だろうが!)
デカプリオ和尚はギロリとノアを見ると言った。
「悪かったな、武蔵丸じゃなくて。デカプリオ伊藤だ、よろしくな? ノア」
ノアは驚いた。心の中が読まれていたからだ。
「白石ノアです。よろしくお願いします」
「俺の修行は厳しいぞ、大丈夫か?」
「頑張ります!」
するとデカプリオはノアに魔法の杖を渡して言った。
「ノブレスオブリージュと呪文を唱えながら素振り1,000回! 始め!」
ノアは素振りを始めた。
こうしてノアはデカプリオ伊藤の弟子になったのである。
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