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第3話
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5本目が終わり、黒塗りの品のよろしくない、いかにもといった高級ワンボックスでノアは化粧を直していた。
風俗業界では1件2件とは数えず、1本、2本と数える。
あれは「1本」と数えた方が分かりやすいからである。
「マスカットさんは凄い人気ですね? 俺、マスカットさんの専属ドライバーになっちゃいましたよ」
「もうクタクタよー、でもジャンジャン稼がないとねー」
「今度のお客さんは212号室です。近くで待機してますから、ヘンな奴だったらすっ飛んで助けに行きますから安心して下さい」
「ありがとう、そん時はよろしくね?」
でもノアは魔法が使えるので、ヘンな客だったら魔法でチンコをへし折ってやればいい話だった。
6本目のお客はハゲ、デブ、チビの三拍子揃った最悪の客だった。
「マスカットでーす。『ペロペロ・キャンディ』から参りましたー。
本日はご指名をいただきまして、ありがとうございまーす」
「よろしくね? マスカットちゃん。
僕はね、こう見えても結構偉い人だから、そこのところ忘れないでね?」
「へえー、そうなんですかあ。どんなお仕事の偉い人なんですか?」
「まあそれはいいじゃないか。じゃあ早速・・・」
そのエロオヤジがいきなりノアのFカップの胸を揉みそうになったので、ノアがそれを諫めた。
「いやーん、もう、せっかちなんだからー。お客さん、コースはどうします?」
「マスカットちゃんは僕の好み、どストライクど真ん中だから、120分でお願いしようかな?
コースは「夜這い寝取られコース」で頼むよ」
「かしこまりました!それでは24,000円になります」
ノアはお金を貰い、事務所に電話をした。
「120分、「夜這い寝取られコース」をいただきました。はい、わかりました」
ノアはがっかりした。
さっきはイケメン営業マンの田村さんだったが、今度は脂ぎったヘンタイオジサン、しかも120分。地獄である。
ノアはなるべく風呂場で時間を消費する作戦に出た。
「じゃあ先にお風呂の準備をしてきますねー?」
「大丈夫だ、僕も一緒に入るから」
(げげっ、ついてくんなよオヤジ!)
ノアはさらに落胆した。
いやらしくノアのカラダを舐めまわすエロオヤジ。
「いやん、くすぐったいからやめてくださいよー、もう、エッチなんだからー」
ノアはエロオジサンさんのちっちゃな股間をイソジン液で消毒をした。
ベッドに移動すると、なんとエロオヤジはいきなり本番行為を要求して来た。
「お客さん、本番行為はお店から固く禁止されています、やめて下さい!」
ノアが毅然とした態度で言うと、オヤジは開き直った。
「はあ? 120分も付き合ってやるのに本番もなしだと? ふざけるな!
俺を知らんのか? おれは市議会議員の色井野好造だぞ! いいから大人しくやらせろ!」
ノアは素早く色井野と一緒に写メを撮った。
「何をする!」
「これを文秋オンラインに載せてもらうの。先生をもっと有名にしてあげるね?」
「その写真を今すぐ消去しろ!」
「ヤダもんねーだ、そんなこと言うなら、お店の人、呼んじゃうよ?
凄く怖いんだから、うちのスタッフさん。先週、刑務所から出所したばかりなんだよ」
「わ、わかった! 大人しくするから写メだけは消してくれ、頼む!」
「どっしょっかなー?」
「わかった、どうせ調査費から出せばいい金だ」
すると色井野は財布から10万円を取り出すと、ノアにそれを差し出した。
「これでどうだ?」
「これって市民の人がくれた税金でしょ? いらないよ、そんなお金。
抜きたいんでしょ、スッキリさせてあげるから、本番なんて言わないの、わかった?」
「はい・・・」
色井野議員はノアのテクニックであっけなく終わってしまった。
こういう奴に限って、欲望が満たされると説教を始める。
「マスカットちゃん、いつまでもこんな仕事してちゃダメだ。どうだ? うちの選挙事務所で働かないか? ワシの秘書として」
「お断りします」
(さんざんエッチなことをさせておいて、どのツラさげていってんのよ! この変態議員!)
クルマに戻り、ノアは次の派遣先へと向かった。
「あー、いやな客だった。今度はどこ?」
「ホテル『エリーゼ』の304です。これで今日は最後ですね? 7本なんて大変ですね?」
「商売よ、商売。帰りにマックに寄ってくれる? チョコレート・シェイクが飲みたいから」
「わかりました」
ドアをノックしたが返事がなかった。
ゆっくりとドアレバーに触れるとドアが開いた。
そしてドアを開けた瞬間、ノアは凍り付いてしまった。
なんとそこにいたのはノアの担任のレッサーパンダのゼーゼマン先生と、魔法薬学のロッテンマイヤー先生が立っていたからである。
「白石ノアさん、東京調理魔法専門学校則、第24条第3項、「当専門学校生は、いかなる理由があろうともデリヘルに勤務した場合、即刻退学処分とする」に該当します。
よって、本日付けであなたを退学処分とします。いいですね?」
「そんなー、何とかなりませんか?
もうすぐ卒業じゃないですかあ、私、授業料を払うためにバイトしていたんですう」
「規則は規則ですから。それは校則には関係のないことです」
ロッテンマイヤー先生は、きっぱりと冷たく言い放った。
レッサーパンダのゼーゼマンは、
「お前とリンダのことをGPSで追跡していたんだ。そしたらおまえとリンダが頻繁にラブホ街をうろついていることが判明してな? それでふたりとも残念ながら退学処分となったわけだ。
脇が甘いな? お前たち」
そう言ってゼーゼマンは二本脚で立ち上がると、真っ黒なお腹を見せて大きな栗の木の下での替え歌を歌った。
大きな栗と~♪ リスのうた~♪
ロッテンマイヤー先生がゼーゼマンを睨みつけた。
「ゼーゼマン先生! お止めなさい! そんな卑猥なお唄は!」
「どうもしゅいましぇーん」
ゼーゼマンはお笑い芸人の「ですよ」の真似をして、お道化てみせた。
ノアの魔女になる夢は消えた。
風俗業界では1件2件とは数えず、1本、2本と数える。
あれは「1本」と数えた方が分かりやすいからである。
「マスカットさんは凄い人気ですね? 俺、マスカットさんの専属ドライバーになっちゃいましたよ」
「もうクタクタよー、でもジャンジャン稼がないとねー」
「今度のお客さんは212号室です。近くで待機してますから、ヘンな奴だったらすっ飛んで助けに行きますから安心して下さい」
「ありがとう、そん時はよろしくね?」
でもノアは魔法が使えるので、ヘンな客だったら魔法でチンコをへし折ってやればいい話だった。
6本目のお客はハゲ、デブ、チビの三拍子揃った最悪の客だった。
「マスカットでーす。『ペロペロ・キャンディ』から参りましたー。
本日はご指名をいただきまして、ありがとうございまーす」
「よろしくね? マスカットちゃん。
僕はね、こう見えても結構偉い人だから、そこのところ忘れないでね?」
「へえー、そうなんですかあ。どんなお仕事の偉い人なんですか?」
「まあそれはいいじゃないか。じゃあ早速・・・」
そのエロオヤジがいきなりノアのFカップの胸を揉みそうになったので、ノアがそれを諫めた。
「いやーん、もう、せっかちなんだからー。お客さん、コースはどうします?」
「マスカットちゃんは僕の好み、どストライクど真ん中だから、120分でお願いしようかな?
コースは「夜這い寝取られコース」で頼むよ」
「かしこまりました!それでは24,000円になります」
ノアはお金を貰い、事務所に電話をした。
「120分、「夜這い寝取られコース」をいただきました。はい、わかりました」
ノアはがっかりした。
さっきはイケメン営業マンの田村さんだったが、今度は脂ぎったヘンタイオジサン、しかも120分。地獄である。
ノアはなるべく風呂場で時間を消費する作戦に出た。
「じゃあ先にお風呂の準備をしてきますねー?」
「大丈夫だ、僕も一緒に入るから」
(げげっ、ついてくんなよオヤジ!)
ノアはさらに落胆した。
いやらしくノアのカラダを舐めまわすエロオヤジ。
「いやん、くすぐったいからやめてくださいよー、もう、エッチなんだからー」
ノアはエロオジサンさんのちっちゃな股間をイソジン液で消毒をした。
ベッドに移動すると、なんとエロオヤジはいきなり本番行為を要求して来た。
「お客さん、本番行為はお店から固く禁止されています、やめて下さい!」
ノアが毅然とした態度で言うと、オヤジは開き直った。
「はあ? 120分も付き合ってやるのに本番もなしだと? ふざけるな!
俺を知らんのか? おれは市議会議員の色井野好造だぞ! いいから大人しくやらせろ!」
ノアは素早く色井野と一緒に写メを撮った。
「何をする!」
「これを文秋オンラインに載せてもらうの。先生をもっと有名にしてあげるね?」
「その写真を今すぐ消去しろ!」
「ヤダもんねーだ、そんなこと言うなら、お店の人、呼んじゃうよ?
凄く怖いんだから、うちのスタッフさん。先週、刑務所から出所したばかりなんだよ」
「わ、わかった! 大人しくするから写メだけは消してくれ、頼む!」
「どっしょっかなー?」
「わかった、どうせ調査費から出せばいい金だ」
すると色井野は財布から10万円を取り出すと、ノアにそれを差し出した。
「これでどうだ?」
「これって市民の人がくれた税金でしょ? いらないよ、そんなお金。
抜きたいんでしょ、スッキリさせてあげるから、本番なんて言わないの、わかった?」
「はい・・・」
色井野議員はノアのテクニックであっけなく終わってしまった。
こういう奴に限って、欲望が満たされると説教を始める。
「マスカットちゃん、いつまでもこんな仕事してちゃダメだ。どうだ? うちの選挙事務所で働かないか? ワシの秘書として」
「お断りします」
(さんざんエッチなことをさせておいて、どのツラさげていってんのよ! この変態議員!)
クルマに戻り、ノアは次の派遣先へと向かった。
「あー、いやな客だった。今度はどこ?」
「ホテル『エリーゼ』の304です。これで今日は最後ですね? 7本なんて大変ですね?」
「商売よ、商売。帰りにマックに寄ってくれる? チョコレート・シェイクが飲みたいから」
「わかりました」
ドアをノックしたが返事がなかった。
ゆっくりとドアレバーに触れるとドアが開いた。
そしてドアを開けた瞬間、ノアは凍り付いてしまった。
なんとそこにいたのはノアの担任のレッサーパンダのゼーゼマン先生と、魔法薬学のロッテンマイヤー先生が立っていたからである。
「白石ノアさん、東京調理魔法専門学校則、第24条第3項、「当専門学校生は、いかなる理由があろうともデリヘルに勤務した場合、即刻退学処分とする」に該当します。
よって、本日付けであなたを退学処分とします。いいですね?」
「そんなー、何とかなりませんか?
もうすぐ卒業じゃないですかあ、私、授業料を払うためにバイトしていたんですう」
「規則は規則ですから。それは校則には関係のないことです」
ロッテンマイヤー先生は、きっぱりと冷たく言い放った。
レッサーパンダのゼーゼマンは、
「お前とリンダのことをGPSで追跡していたんだ。そしたらおまえとリンダが頻繁にラブホ街をうろついていることが判明してな? それでふたりとも残念ながら退学処分となったわけだ。
脇が甘いな? お前たち」
そう言ってゼーゼマンは二本脚で立ち上がると、真っ黒なお腹を見せて大きな栗の木の下での替え歌を歌った。
大きな栗と~♪ リスのうた~♪
ロッテンマイヤー先生がゼーゼマンを睨みつけた。
「ゼーゼマン先生! お止めなさい! そんな卑猥なお唄は!」
「どうもしゅいましぇーん」
ゼーゼマンはお笑い芸人の「ですよ」の真似をして、お道化てみせた。
ノアの魔女になる夢は消えた。
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