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第11話 発見された父親
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「おい、純一郎が見つかったぞ!
うちの連中が50名体制で1か月も掛かってな!」
「紘一叔父さん、ありがとうございます!」
「しかし、相沢家の当主にも困ったものだ。いきなり行方不明だなんて恥ずかしいことを。
昭和のサスペンスドラマじゃあるまいし、この令和の時代に蒸発など、アイツ、気でもふれたか?」
「ありがとう、お兄さん。あの人は生きているんですね? よかった!」
「千代、良かっただって? 自殺でもしてくれていた方が良かったくらいだよ、まったく」
「まあ、なんてことを。お言葉が過ぎますわよ!」
「自殺でも」という紘一の言葉を千代は諫めた。
「それで親父は今、何処にいるんです?」
「富山だ」
「富山?」
全員に動揺が起こった。
誰も富山には縁のない土地だったからだ。
北陸という認識はあっても、そこが金沢とどういう位置関係にあるのかすら分からなかった。
「無数の防犯カメラをチェックするのはもちろん、その足取りを隈なく追った。
広域暴力団なら可能かもしれないが、民間の探偵事務所ではまず無理だろうな?
何しろ住民票もそのまま、保険証も利用した形跡もない。
カネは愛人名義のカードを使っていたようで、ATMからの情報もダメだった。
そして今、純一郎は富山の漁師町、中新湊で焼鳥屋のオヤジをしているようだ。
高裁の裁判官が焼鳥屋だぞ? そんな話、聞いたことがない。
法務省に東大の同期が事務次官をしていたので、体調不良ということにして休職扱いで処理してくれた。
必ず連れ戻せ。いいな?
それからその店は元ヤクザが店主だったのだが、先日敵討ちに遭い、死んだそうだ。
拳銃で胸と腹を撃たれて即死だったらしい。6発もだぞ。
アイツ、どれだけ俺たち一族に泥を塗るつもりだ!
暴力団と関わるなど、スキャンダルもいいところだ!」
そう言うと紘一は純一郎の写っている写真をテーブルの上に放り投げた。
そこには真剣に焼鳥を焼く純一郎の姿や、酔客と楽しそうに談笑している彼の姿が写っていた。
「これがあの威厳に満ちた親父なのか?」
こんなに楽しそうに大きく口を開けて笑う純一郎を、誰も見たことがなかった。
裕也は言葉が出なかった。
もちろん、愛理も千代も同じだった。
「わかりました。なんとか都合をつけて来週にも僕と愛理、そして母の3人で、父を富山に迎えに行って来ます。
ご迷惑をお掛けしました」
「やれやれ、これでワシも次官の椅子が見えて来たというものだ。
紘一、ありがとう」
「これは貸しということで。官邸の方はよろしく頼みますよ、相沢財務事務次官殿」
「わかっているよ、警視総監殿、わーっはっはっはっあ!」
だが、家族の想いは複雑だった。
「どうして富山なんかに・・・」
そうまでして私たち家族、仕事、そしてこの相沢家と離れたかったのかと思うと、やるせない気持ちになった。
しかも一人で焼鳥屋のオヤジをやっているなんて・・・。
伯父たちが帰った後、裕也と愛理、そして千代たちはホッと胸を撫で下ろした。
「兎に角、親父が生きていてくれて良かった。
でもどうして富山なんかに?
母さんは親父と富山に行ったことはあるの?」
「富山どころか、お父様と旅行になんか行ったことなんかなかったわよ。
富山って東京から遠いの?」
「北陸新幹線で2時間半くらいかな?
飛行機でも行けるけど、飛行時間は1時間位だから新幹線の方がラクだろうね? 乗り換えもないし」
「そう、じゃあ新幹線で行くのね?」
「でも、どうしてお父さんは焼鳥屋さんなんかになったのかしら?
お料理なんかしているところなんて、一度も見たことはないけど・・・」
裕也には心当たりはあった。
有楽町の友里恵の店で、調理を手伝っていたのかもしれないと思った。
だがそれには触れなかった。
愛理や母を悲しませると思ったからだ。
裕也はオペのスケジュールを調整し、1週間後、愛理と母を伴い、父のいる富山へと向かった。
うちの連中が50名体制で1か月も掛かってな!」
「紘一叔父さん、ありがとうございます!」
「しかし、相沢家の当主にも困ったものだ。いきなり行方不明だなんて恥ずかしいことを。
昭和のサスペンスドラマじゃあるまいし、この令和の時代に蒸発など、アイツ、気でもふれたか?」
「ありがとう、お兄さん。あの人は生きているんですね? よかった!」
「千代、良かっただって? 自殺でもしてくれていた方が良かったくらいだよ、まったく」
「まあ、なんてことを。お言葉が過ぎますわよ!」
「自殺でも」という紘一の言葉を千代は諫めた。
「それで親父は今、何処にいるんです?」
「富山だ」
「富山?」
全員に動揺が起こった。
誰も富山には縁のない土地だったからだ。
北陸という認識はあっても、そこが金沢とどういう位置関係にあるのかすら分からなかった。
「無数の防犯カメラをチェックするのはもちろん、その足取りを隈なく追った。
広域暴力団なら可能かもしれないが、民間の探偵事務所ではまず無理だろうな?
何しろ住民票もそのまま、保険証も利用した形跡もない。
カネは愛人名義のカードを使っていたようで、ATMからの情報もダメだった。
そして今、純一郎は富山の漁師町、中新湊で焼鳥屋のオヤジをしているようだ。
高裁の裁判官が焼鳥屋だぞ? そんな話、聞いたことがない。
法務省に東大の同期が事務次官をしていたので、体調不良ということにして休職扱いで処理してくれた。
必ず連れ戻せ。いいな?
それからその店は元ヤクザが店主だったのだが、先日敵討ちに遭い、死んだそうだ。
拳銃で胸と腹を撃たれて即死だったらしい。6発もだぞ。
アイツ、どれだけ俺たち一族に泥を塗るつもりだ!
暴力団と関わるなど、スキャンダルもいいところだ!」
そう言うと紘一は純一郎の写っている写真をテーブルの上に放り投げた。
そこには真剣に焼鳥を焼く純一郎の姿や、酔客と楽しそうに談笑している彼の姿が写っていた。
「これがあの威厳に満ちた親父なのか?」
こんなに楽しそうに大きく口を開けて笑う純一郎を、誰も見たことがなかった。
裕也は言葉が出なかった。
もちろん、愛理も千代も同じだった。
「わかりました。なんとか都合をつけて来週にも僕と愛理、そして母の3人で、父を富山に迎えに行って来ます。
ご迷惑をお掛けしました」
「やれやれ、これでワシも次官の椅子が見えて来たというものだ。
紘一、ありがとう」
「これは貸しということで。官邸の方はよろしく頼みますよ、相沢財務事務次官殿」
「わかっているよ、警視総監殿、わーっはっはっはっあ!」
だが、家族の想いは複雑だった。
「どうして富山なんかに・・・」
そうまでして私たち家族、仕事、そしてこの相沢家と離れたかったのかと思うと、やるせない気持ちになった。
しかも一人で焼鳥屋のオヤジをやっているなんて・・・。
伯父たちが帰った後、裕也と愛理、そして千代たちはホッと胸を撫で下ろした。
「兎に角、親父が生きていてくれて良かった。
でもどうして富山なんかに?
母さんは親父と富山に行ったことはあるの?」
「富山どころか、お父様と旅行になんか行ったことなんかなかったわよ。
富山って東京から遠いの?」
「北陸新幹線で2時間半くらいかな?
飛行機でも行けるけど、飛行時間は1時間位だから新幹線の方がラクだろうね? 乗り換えもないし」
「そう、じゃあ新幹線で行くのね?」
「でも、どうしてお父さんは焼鳥屋さんなんかになったのかしら?
お料理なんかしているところなんて、一度も見たことはないけど・・・」
裕也には心当たりはあった。
有楽町の友里恵の店で、調理を手伝っていたのかもしれないと思った。
だがそれには触れなかった。
愛理や母を悲しませると思ったからだ。
裕也はオペのスケジュールを調整し、1週間後、愛理と母を伴い、父のいる富山へと向かった。
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