★【完結】メタルシティ(作品230619)

菊池昭仁

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第8話 日本解放戦線

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 「こんなことが許されていいわけがない! 絶対に!」
 「これ以上民自党の好きにはさせん! まずは総理の小山田と官房長官の井沢に天誅を下すべきだ!」
 「自由で平和な日本を取り戻すのだ! 日本の未来のために!」

 都内の老朽化したビジネスホテルの最上階がこの日本の激変と戦う『日本解放戦線』のアジトになっていた。
 彼らは密かに小山田総理たちの暗殺を計画していた。
 リーダーの中洲川の表の顔は大本営陸軍作戦参謀だった。祖先は幕臣であり、明治維新から続く代々軍人の家系だった。
 防衛大学を首席で卒業したエリート軍人である。
 周囲は彼を「ラストサムライ」と呼んでいた。
 冷静沈着、常に自分を第三者として俯瞰することが出来る男だった。
 軍人というよりオーケストラの指揮者のような雰囲気を持っていた。

 「半年後に国立競技場で行われる「独立記念日」の祝典には小山田をはじめ多くの政府閣僚が列席する。そこを狙うことにする。当然のことではあるが厳重な警備体制により小山田たちに近づくことも会場に爆薬を仕掛けることも出来ない。ドローン攻撃や化学兵器での暗殺も不可能に近い。もちろん狙撃もだ」
 「となると特攻ですか?」
 「そうだ。会場近くに配備される10式戦車を奪い、そのまま会場に突撃して小山田たちを殲滅する」
 「中洲川参謀、その任務は是非この私にやらせて下さい! メンバーの中で10式戦車を熟知し、操縦出来る者は私以外にはおりません」
 「木島中尉、やってくれるか?」
 「はっ! 喜んで自分がやらせていただきます!」
 「木島、俺も貴様と行動を共にするぞ!」
 「春村、貴様だけに手柄は立てさせんぞ! 貴様には参謀を護衛してくれ。これからの日本のために」
 「貴様だけにいいカッコさせてたまるか! 仲間は多いほうがいい!」
 「何も死に急ぐことはない。貴様はゆっくり日本の平和と安定を見届けてから来い」

 防大で木島と春村陸軍中尉は同期だった。

 「自分は喜んで自決します!」
 「木島中尉の名は永久に日本の歴史に刻まれることだろう。案ずるな、我々もいずれ後を追う覚悟である。
 薄汚い権力者どもを滅ぼし、貧富の差がない自由で平和で平等な日本を創るのだ。
 我々日本解放戦線の使命は現政権の打倒にある。それを成功させ世界のリーダーとしての日本を再生させなければならない。
 日本の未来は有栖川たち若手官僚を中心とした『洗心の会』に託そうではないか!」
 「我々に勇気を!」
 「日本に自由と平和と平等を!」
 「世界に安定した正しい秩序を!」


 中洲川たちは綿密な作戦計画の立案に着手した。
 だがその日本解放戦線の幹部の中には江戸時代から続く「御庭番」が紛れ込んでいた。
 日本解放戦線の動きは内閣官房調査室に逐一報告されていた。


 調査室長の柳葉はほくそえんでいた。

 「もう少し泳がせて一網打尽にするのだ。そしてその家族諸共、公開処刑となることだろう。お気の毒様」


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