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第7話 蘇った皇軍

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 10日後、国内は何事もなかったかのように平穏が戻り、飴と鞭、国民一人当たりに国から100万円が支給され、民自党を批判する者も、そして改憲や国家管理保護法に対しても異論を唱える者は殆どいなくなっていた。
 そして遂に老人の安楽死と、16歳の男女の選別、徴兵制が開始されることになった。
 軍備は増強され、日本は国内外に日本の核武装を宣言し、そのデモンストレーションとしてナホトカ沖、朝鮮半島沖 そして青島沖に弾道ミサイルをピンポイントで落下させ、今まで核のない日本を舐めて、好き放題をしていた国々は、かつて日本軍に支配され、その恐ろしさを思い起こすこととなり、怯えた。

 原子力発電所のウランからプルトニュウムを抽出し、JAXAのロケット技術を応用することで、核を搭載したICBMを新たに増産させた。
 それは日本の高度な科学技術をもってすれば容易いことだった。

 核武装をした国産の原潜、高性能のステルス戦闘機、そして大型空母も凄まじいスピードで配備されていった。
 今までアメリカの言い値で買わされていた兵器を購入する必要もなくなり、頭を押さえられていた日本の軍需産業は水を得た魚のように急速に進化し、成長して行った。
 そして遂に、核爆弾の3,000倍の破壊力を持つといわれる「水爆」をも完成させてしまった。

 満16才になった男子は2年間の徴兵義務を負い、軍事訓練を強制させられた。
 海上保安庁は海軍に編入され、尖閣諸島には日本の軍事基地が建設されたことで、そこへ近付く他国の艦船や航空機は全て即座に撃沈、撃墜された。
 以前のようにスピーカーで「お願いですから領海から出て行っていただけませんかー」などと、いつもの「事なかれ主義」は消えていた。

 竹島の韓国の軍事施設を空爆し、日本陸軍によって竹島は奪還された。
 そして韓国も北朝鮮も、核を手にした日本に逆らうことはなくなった。

 日本軍は北方領土も制圧し、ナホトカ、ウラジオストックをも占領した。
 あれほど日本を侮辱していた国々は、日本に対して簡単に戦争を仕掛けて来ることはなかった。
 核を持つとはそういうことなのだ。「持っていても迂闊には使えない」、つまり核を持っていることで相手への脅威となる。
 相手国のチンピラたちは銃を構え、日本は憲法第9条によって刀さえ抜くことも出来ず、されるがままのサムライたちは決起したのだ。

 韓国はそんな日本に忖度し、徴用工問題は消え、慰安婦像も街から撤去された。
 日本に対して侮蔑的な態度だったかつての大統領や政府高官、竹島に上陸してパフォーマンスを行った議員たちは逮捕され、収容所へと送られた。

 国防省には『憲兵隊』が復活し、警視庁は内務省に改編され、『特別高等警察』、いわゆるあの恐怖の『特高』も蘇った。
 日本の国家に反逆する者は、日本人であろうと外国人であろうと、裁判を経ることなくその場で処刑された。
 列強の言いなりでしかない国連は機能不全に陥り、そして大口の「物言えぬスポンサー」にされていた日本は、国連を脱退した。



 
 ホワイトハウスでは連日、日本をいかに叩き潰すかが議論されていた。


 「今や日本は以前の北朝鮮よりも脅威となった。武器があっても使いこなせない、士気の低い、練度の劣る兵士とは違い、日本の兵士も士官も世界最高水準の軍隊であり、何よりも彼らは死をも恐れないのだ」
 「カミカゼの復活」
 「死を恐れぬ民族、Japanese」
 「大統領、JAPは身の程知らずにもほどがありますな?」
 
 大統領のハロルドはゆっくりと話し始めた。

 「JAPを侮ってはならない。確かにPearl Harborは当時の大統領の策略だったが、あのまま日本海軍が引き返さずにサンディエゴを攻撃されていたら、我がアメリカ合衆国は日本人によって占領されていたかもしれないのだよ。
 ただ幸いな事に、かつての中田のようなリーダーではなく、小山田にはカリスマ性はなく、知識も教養も先見性もない。あの男は総理の器ではない。諸君は日本の元老院をご存知かね?」
 「あの伝説の日本の秘密結社のことですか?
 確かCIAの調査報告では、日本の敗戦と同時にGHQによって解体されたと聞きましたが?」
 「当時の大統領は取引をしたんだよ。
 天皇制と元老院を存続させる代わりに、ヒロシマ、ナガサキの原爆投下を容認し、沖縄占領を承諾したのだ。
 無条件降伏などではないのだよ」
 「天皇制と元老院?」
 「2,000年以上続く天皇家を守っているのは元老院なのだ。
 そして彼ら13人の使徒と首領は魔法使いでもある。
 人の心の中に浸潤し、操ることが出来る。
 あのGHQの総司令官が解任されたのは何故だと思うかね?」
 「朝鮮戦争で核攻撃をしようとしたからですよね?」
 「そう言わせたのがその元老院の首領なのだよ。
 彼らはこの時を虎視眈々と狙っていたのだ。
 あのCrazyな大日本帝国の復活を」
 「そうはさせませんよ! また日本を占領すればいいのです! 我々合衆国が Yellow Monkey に屈するわけにはいかない!」
 「私も同じ意見だよ、国防長官。
 ではこれから私のプランを説明しよう。
 『Disappearance of Japan project(日本消滅計画)』をね?」
 「消滅?」
 「この危険な国を、民族諸共この世界から葬り去るのだ。皆殺しだよ」

 アメリカの首脳陣は息を呑んだ。
 それは禁止された言葉、

      Genocide

 を意味していたからだ。

 「おお、神よ・・・」

 胸の前で十字を切る者もいた。

 国家安全保障会議室は深く鎮まり返った。
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