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第45話
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事務手続きのために先行して西サモアのアピアに上陸して戻って来たパーサーたちから面白い話を聞いた。
「マーケットで果物や野菜とかが売られているわけよ。そこにさあ、ヤシの葉で編んだ籠が置いたあったから、これは土産にいいかもと思っておばちゃんに聞いたんだよ、そしたらそれは売り物じゃないって言うんだ。
それは「レジ袋」だって言うの。だからタダでもらっちゃったよ」
「へえー、ドリアンでも買って来ようかなあ? 安いだろうから」
「あんまりヘンな物は買って来るなよ、病気になると困るからな?」
「はーい」
パーサーのふたりは東海大学出身のユーモアのある人たちだった。
商船士官も限られた閉鎖社会であり、一応の学閥もある。
神戸、東京商船大学か、全国にある5つの商船高専の中でもエリートしか大手船会社には就職出来ない。
一期生の先輩たちの話では4年生の夏に座学が終わると、船会社の人事部の人たちが寮の前で学生を待っていて、まるで野球選手のドラフトのように、料亭で接待されて航海訓練所での1年間の航海実習への「餞別」と言われて当時で50万円の支度金を貰えたらしい。
残念ながら私たちは富山商船高専の12期生、海運業界は不況で就職氷河期であった。
運輸省航海訓練所は東京商船大学か、神戸商船大学卒でなければ教官にはなれない。
この航海が終わったらパーサーを辞めるつもりだと仰っていた。
休日にまずは街にみんなで飲みに出かけた。
リゾートホテルのプールで泳ぎながら、私はマイ・タイを飲んでいた。
久しぶりの陸である。ビキニのお姉ちゃんが眩しい。青少年には毒である。最高!
「サモアも意外といいところだな?」
「ああ、酒が美味いしビキニのおねえちゃんもいるしな? デブばっかりだけど」
「ここでは男も女も太っていることがモテる条件らしいぞ」
「ボラボラ島だっけ? 島の女とキスしただけで島から出られなくなるのって?」
「本当かよ?」
「よう知らんけど」
「あはははは」
そんなことを言いながら喜んでいると、グラスの底に何か黒い物が沈んでいた。
(なんかの果物の種かな?)
なんとそれはでっかいハエだったのである。ギョエーッ! もう三分の二も飲んじゃったよ!
まあそんなもんかとクレームも言わずに諦めた。
大きなマーケットで恐る恐るアイスクリームを買って食べた。
「マンゴー味なのかな? けっこう美味いね?」
「うん、これはなかなか美味いな?」
今でもこのサモアのアイスを上回るアイスに出会ったことはない。
学生が休暇上陸をしている頃、本船ではキャプテン主催の親善パーティが船上で開かれていた。
本船も運輸省航海訓練所の船なので、日本の親善大使としての役割もあるからだ。
寄港地では必ず地元の名士たちを招いての親善パーティが催される。
翌日は遠足となった。バスに分乗して語学研修も兼ねてアピア観光へ。
地元のレストランで昼食をすることになった。
だが私は食べる気になれなかった。
サモアは島であり真水が不足している。水道が整備されているのはごく一部だった。
スコールがあるのでそれぞれに大きな貯水タンクがあり、その水を利用しているようだった。
だが当然ボウフラが浮いている。
装飾はヤシの葉が柱に巻き付けてあるだけ。
庭で穴を掘っていたので近くで見てみると、なんと子豚がバナナの葉に包まれて土に埋められ、その上で焚き火をしているではないか! 焼芋ならぬ「焼豚」である。
そしてその豚さんが今度は炭火で丸焼きにされて「照り焼き」にされているではないか!
レストランに行くとスタッフが自慢げにその豚の丸焼きの前に立っていた。
「美味そうだろう? さあいっぱい食べて下さい! 遠慮しないで!」
遠慮するよ! その子豚さん、かわいそうに口にハイビスカスの花を咥えていた。
とても俺には無理だったので、コーラだけ飲んだ。
日曜日の朝、地元の人たちが男は白いシャツに女は白いワンピースを着て教会へと歩いてゆくのが見えた。
波の音とやさしい海風。白い服が揺れていた。
私はゴーガンの『タヒチの女』を思い出していた。
この平和な島もまた、アメリカによって侵略されて併合されたのかと思うと、私は怒が込み上げて来た。
白人のために有色人種が家畜や奴隷のように扱われている現実。
大好きなハワイも例外ではない。
日本は鎖国政策によって白人のキリスト教を隠れ蓑にした「布教侵略」を阻止できたが、結局はアメリカの植民地にされてしまった。
それでもロシアや中国の支配下になるよりはマシと言えるのかもしれない。
いつになったら世界平和が訪れるのだろうか?
「マーケットで果物や野菜とかが売られているわけよ。そこにさあ、ヤシの葉で編んだ籠が置いたあったから、これは土産にいいかもと思っておばちゃんに聞いたんだよ、そしたらそれは売り物じゃないって言うんだ。
それは「レジ袋」だって言うの。だからタダでもらっちゃったよ」
「へえー、ドリアンでも買って来ようかなあ? 安いだろうから」
「あんまりヘンな物は買って来るなよ、病気になると困るからな?」
「はーい」
パーサーのふたりは東海大学出身のユーモアのある人たちだった。
商船士官も限られた閉鎖社会であり、一応の学閥もある。
神戸、東京商船大学か、全国にある5つの商船高専の中でもエリートしか大手船会社には就職出来ない。
一期生の先輩たちの話では4年生の夏に座学が終わると、船会社の人事部の人たちが寮の前で学生を待っていて、まるで野球選手のドラフトのように、料亭で接待されて航海訓練所での1年間の航海実習への「餞別」と言われて当時で50万円の支度金を貰えたらしい。
残念ながら私たちは富山商船高専の12期生、海運業界は不況で就職氷河期であった。
運輸省航海訓練所は東京商船大学か、神戸商船大学卒でなければ教官にはなれない。
この航海が終わったらパーサーを辞めるつもりだと仰っていた。
休日にまずは街にみんなで飲みに出かけた。
リゾートホテルのプールで泳ぎながら、私はマイ・タイを飲んでいた。
久しぶりの陸である。ビキニのお姉ちゃんが眩しい。青少年には毒である。最高!
「サモアも意外といいところだな?」
「ああ、酒が美味いしビキニのおねえちゃんもいるしな? デブばっかりだけど」
「ここでは男も女も太っていることがモテる条件らしいぞ」
「ボラボラ島だっけ? 島の女とキスしただけで島から出られなくなるのって?」
「本当かよ?」
「よう知らんけど」
「あはははは」
そんなことを言いながら喜んでいると、グラスの底に何か黒い物が沈んでいた。
(なんかの果物の種かな?)
なんとそれはでっかいハエだったのである。ギョエーッ! もう三分の二も飲んじゃったよ!
まあそんなもんかとクレームも言わずに諦めた。
大きなマーケットで恐る恐るアイスクリームを買って食べた。
「マンゴー味なのかな? けっこう美味いね?」
「うん、これはなかなか美味いな?」
今でもこのサモアのアイスを上回るアイスに出会ったことはない。
学生が休暇上陸をしている頃、本船ではキャプテン主催の親善パーティが船上で開かれていた。
本船も運輸省航海訓練所の船なので、日本の親善大使としての役割もあるからだ。
寄港地では必ず地元の名士たちを招いての親善パーティが催される。
翌日は遠足となった。バスに分乗して語学研修も兼ねてアピア観光へ。
地元のレストランで昼食をすることになった。
だが私は食べる気になれなかった。
サモアは島であり真水が不足している。水道が整備されているのはごく一部だった。
スコールがあるのでそれぞれに大きな貯水タンクがあり、その水を利用しているようだった。
だが当然ボウフラが浮いている。
装飾はヤシの葉が柱に巻き付けてあるだけ。
庭で穴を掘っていたので近くで見てみると、なんと子豚がバナナの葉に包まれて土に埋められ、その上で焚き火をしているではないか! 焼芋ならぬ「焼豚」である。
そしてその豚さんが今度は炭火で丸焼きにされて「照り焼き」にされているではないか!
レストランに行くとスタッフが自慢げにその豚の丸焼きの前に立っていた。
「美味そうだろう? さあいっぱい食べて下さい! 遠慮しないで!」
遠慮するよ! その子豚さん、かわいそうに口にハイビスカスの花を咥えていた。
とても俺には無理だったので、コーラだけ飲んだ。
日曜日の朝、地元の人たちが男は白いシャツに女は白いワンピースを着て教会へと歩いてゆくのが見えた。
波の音とやさしい海風。白い服が揺れていた。
私はゴーガンの『タヒチの女』を思い出していた。
この平和な島もまた、アメリカによって侵略されて併合されたのかと思うと、私は怒が込み上げて来た。
白人のために有色人種が家畜や奴隷のように扱われている現実。
大好きなハワイも例外ではない。
日本は鎖国政策によって白人のキリスト教を隠れ蓑にした「布教侵略」を阻止できたが、結局はアメリカの植民地にされてしまった。
それでもロシアや中国の支配下になるよりはマシと言えるのかもしれない。
いつになったら世界平和が訪れるのだろうか?
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