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第46話
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練習タービン船、北斗丸は西サモアのアピア港を出港して最後の寄港地、オーストラリアのブリスベンに向けて順調な実習航海を続けていた。
夜間の航海実習の時、南太平洋にサザンクロスが輝き、船首方向に月が登り始めた。
月明かりが月へと続く道となり、私たちは幻想的な世界に心を奪われた。
北斗丸には商船大学の機関学科の学生もタービン船での操機実習をしていた。
その商船大学生から声を掛けられた。
「高専の諸君、ブリスベンに着いたらブリスベンの女子大生とダンス・パーティをする予定なんですが、良かったら一緒にいかがですか?」
「金髪のボン、キュー、ボンとチーク・ダンス!」
「します! します! 絶対参加でお願いします!」
「何っ! 金髪とヤれるんかあ!」
私たちは歓喜した。
「諸君はダンスのご経験は?」
「もちろん全然ありません! ディスコでナンパならしましたが!」
「ABBAとかビー・ジーズとかマイケルとかスティービー・ワンダーとか」
「ではブリスベンに入港するまでに特訓しましょう。ウチにはソシアルダンスの経験者もおりますので」
流石は商船大学。あの『相棒』の右京さん、水谷豊さんも憧れただけはある。
歌も歌っている。
『行きたかったよ商船大学』
港みなとに~♪ 女がいて~♪ 銅鑼の音~ひとつ~が~別れのメロディ~♪
行きたあ~かったあよ~♪ 商船大学~♪
それから毎日、私たちは腐女子が大好物みたいなイケメンBL、見つめ合ってのダンスレッスンが始まった。
何しろ金髪美女である。私たちはかなり真剣に練習に汗を流した。はあはあ
チャチャチャの基本ステップから始まり、タンゴやジルバ、まるで役所広司の『Shall we dance?』である。
「ハイ、スロー、スロー、クイック、クイック・ターン」
だが折角の練習も無駄になってしまった。
商船大学の学生さんたちは我々のダンスに絶望したのか?
「諸君! ダンス・パーティは中止になりました、ごめんなさい」
と謝って来たからだ。
おそらく彼らはダンパに行き、夜は彼女とベッドでダンスをした筈である。
まあその時のダンスレッスンが後日、日本で役には立ったんだけどね(笑)
ハワイ、サモア、そして三カ国目の海外、オーストラリアのブリスベンに到着した。
ブリスベンには母校、富山商船高専一期生の先輩が空手道場と日本食のレストランを経営して成功を収め、キャプテン主催の親善パーティにブロンド美女の奥様とメルセデスS600で優雅に登場した時はみんなから溜息が漏れたほどである。
「シブい!」
「かっけええ!」
さすがは我が先輩、学生時代にはあの有名女優さんともお付き合いがあり、東京で知り合った女の子がわざわざ富山商船まで追いかけて来たほどであったそうだ。伝説の先輩である。
わが校の誇りである。
太っ腹の先輩は我々後輩のために酒をケースで届けてくれた。ありがたやありがたや(合掌)
ブリスベンは都会ではあったが、半径数キロの都市で、すぐに砂漠地帯になっていた。
日本との交換留学生も多い。同級生にも何人かオーストラリアに留学していた奴もいた。
大阪出身の鳥羽商船高専の彼もまた留学経験を持ち、在学中に超難関の甲種船長の筆記試験にも合格し、日本郵船に就職したスーパーエリートである。当時の彼女はモデルだった(うらやましい)
ブリスベンの国道をタクシーで走っていると、でっかいFRPのプールが立てかけて売られていた。スケールが違う。あの日本では金魚をいれている、庭に埋める小さな水槽が十数メートルもあるプールになっているのである。
動物園なんてない。その代わりサンクチュアリーといういわゆる鳥獣保護区になっており、カンガルーも放し飼いになっていた。
コアラも抱っこしたし、ワライカワセミにカモノハシ。でっかいアリゲーターにウォンバット、まるでムツゴロウ先生になった気分。そういえば白いコアラもいたなあ。
でもね、コアラって夜行性だから目が猫目なんだよ。昼間は猫娘みたいだった。
ボタニック・ガーデンにゴールド・コーストにあるSea Worldっていう遊園地に恐竜ミュージアムも行ったなあ。
夜まで時間があったのでボーリングをしに行った。
フロントで「練習したいんだけど」というと、「お好きにどうぞ」と、タダで何回も投げさせてくれた。
夜になり、地下のBARに飲みに行ったらチキンバスケットとメニューに書いてあったので注文すると、ピクニックのバスケットのような大きな籠の中に、ニワトリが丸ごと1羽入っていた。確かにチキン・バスケットである。
チキン・ナゲット5個じゃないよ。やはり肉食白人は豪快だ。
その後、街を歩いているとDavidという青年に声を掛けられ、そこらへんにいた女の子に声を掛けてみんなで飲みに行った。楽しかったなあ。
その後、バズとは日本に帰ってからもしばらく文通を続けたが、イケメンの彼ももう爺さんだよなあ。俺もだけど
。
そして本船はいよいよ帰国の途に就いた。
本船を下船すると、後は9月30日の卒業式が待っていた。
商船高専は座学が4年半で運輸省航海訓練所での実習が1年、合計5年半なので卒業は9月になるのだ。
卒業式にはテレビ、新聞がやって来る。
その頃の私は船乗りみたいな顔だったこともあり、壇上に上がると一斉にフラッシュを浴び、カメラがズームアプ。思わず意識しちゃったぜ(笑)
ホテルでの謝恩会で、定年間際の養護教諭の肝っ玉母ちゃんから、
「菊池く~ん、アンタいっぱいテレビに写っとったでえ」
「そうっすか? てへへ」
いよいよ就職である。一応就職担当の教授から何社か紹介されたがさてどうしたものか?
戦争経験者の先生は私に、
「菊池、お前は海上自衛隊に行け」
と言われた。バリバリに右翼思想だったので。敬神愛国。
夜間の航海実習の時、南太平洋にサザンクロスが輝き、船首方向に月が登り始めた。
月明かりが月へと続く道となり、私たちは幻想的な世界に心を奪われた。
北斗丸には商船大学の機関学科の学生もタービン船での操機実習をしていた。
その商船大学生から声を掛けられた。
「高専の諸君、ブリスベンに着いたらブリスベンの女子大生とダンス・パーティをする予定なんですが、良かったら一緒にいかがですか?」
「金髪のボン、キュー、ボンとチーク・ダンス!」
「します! します! 絶対参加でお願いします!」
「何っ! 金髪とヤれるんかあ!」
私たちは歓喜した。
「諸君はダンスのご経験は?」
「もちろん全然ありません! ディスコでナンパならしましたが!」
「ABBAとかビー・ジーズとかマイケルとかスティービー・ワンダーとか」
「ではブリスベンに入港するまでに特訓しましょう。ウチにはソシアルダンスの経験者もおりますので」
流石は商船大学。あの『相棒』の右京さん、水谷豊さんも憧れただけはある。
歌も歌っている。
『行きたかったよ商船大学』
港みなとに~♪ 女がいて~♪ 銅鑼の音~ひとつ~が~別れのメロディ~♪
行きたあ~かったあよ~♪ 商船大学~♪
それから毎日、私たちは腐女子が大好物みたいなイケメンBL、見つめ合ってのダンスレッスンが始まった。
何しろ金髪美女である。私たちはかなり真剣に練習に汗を流した。はあはあ
チャチャチャの基本ステップから始まり、タンゴやジルバ、まるで役所広司の『Shall we dance?』である。
「ハイ、スロー、スロー、クイック、クイック・ターン」
だが折角の練習も無駄になってしまった。
商船大学の学生さんたちは我々のダンスに絶望したのか?
「諸君! ダンス・パーティは中止になりました、ごめんなさい」
と謝って来たからだ。
おそらく彼らはダンパに行き、夜は彼女とベッドでダンスをした筈である。
まあその時のダンスレッスンが後日、日本で役には立ったんだけどね(笑)
ハワイ、サモア、そして三カ国目の海外、オーストラリアのブリスベンに到着した。
ブリスベンには母校、富山商船高専一期生の先輩が空手道場と日本食のレストランを経営して成功を収め、キャプテン主催の親善パーティにブロンド美女の奥様とメルセデスS600で優雅に登場した時はみんなから溜息が漏れたほどである。
「シブい!」
「かっけええ!」
さすがは我が先輩、学生時代にはあの有名女優さんともお付き合いがあり、東京で知り合った女の子がわざわざ富山商船まで追いかけて来たほどであったそうだ。伝説の先輩である。
わが校の誇りである。
太っ腹の先輩は我々後輩のために酒をケースで届けてくれた。ありがたやありがたや(合掌)
ブリスベンは都会ではあったが、半径数キロの都市で、すぐに砂漠地帯になっていた。
日本との交換留学生も多い。同級生にも何人かオーストラリアに留学していた奴もいた。
大阪出身の鳥羽商船高専の彼もまた留学経験を持ち、在学中に超難関の甲種船長の筆記試験にも合格し、日本郵船に就職したスーパーエリートである。当時の彼女はモデルだった(うらやましい)
ブリスベンの国道をタクシーで走っていると、でっかいFRPのプールが立てかけて売られていた。スケールが違う。あの日本では金魚をいれている、庭に埋める小さな水槽が十数メートルもあるプールになっているのである。
動物園なんてない。その代わりサンクチュアリーといういわゆる鳥獣保護区になっており、カンガルーも放し飼いになっていた。
コアラも抱っこしたし、ワライカワセミにカモノハシ。でっかいアリゲーターにウォンバット、まるでムツゴロウ先生になった気分。そういえば白いコアラもいたなあ。
でもね、コアラって夜行性だから目が猫目なんだよ。昼間は猫娘みたいだった。
ボタニック・ガーデンにゴールド・コーストにあるSea Worldっていう遊園地に恐竜ミュージアムも行ったなあ。
夜まで時間があったのでボーリングをしに行った。
フロントで「練習したいんだけど」というと、「お好きにどうぞ」と、タダで何回も投げさせてくれた。
夜になり、地下のBARに飲みに行ったらチキンバスケットとメニューに書いてあったので注文すると、ピクニックのバスケットのような大きな籠の中に、ニワトリが丸ごと1羽入っていた。確かにチキン・バスケットである。
チキン・ナゲット5個じゃないよ。やはり肉食白人は豪快だ。
その後、街を歩いているとDavidという青年に声を掛けられ、そこらへんにいた女の子に声を掛けてみんなで飲みに行った。楽しかったなあ。
その後、バズとは日本に帰ってからもしばらく文通を続けたが、イケメンの彼ももう爺さんだよなあ。俺もだけど
。
そして本船はいよいよ帰国の途に就いた。
本船を下船すると、後は9月30日の卒業式が待っていた。
商船高専は座学が4年半で運輸省航海訓練所での実習が1年、合計5年半なので卒業は9月になるのだ。
卒業式にはテレビ、新聞がやって来る。
その頃の私は船乗りみたいな顔だったこともあり、壇上に上がると一斉にフラッシュを浴び、カメラがズームアプ。思わず意識しちゃったぜ(笑)
ホテルでの謝恩会で、定年間際の養護教諭の肝っ玉母ちゃんから、
「菊池く~ん、アンタいっぱいテレビに写っとったでえ」
「そうっすか? てへへ」
いよいよ就職である。一応就職担当の教授から何社か紹介されたがさてどうしたものか?
戦争経験者の先生は私に、
「菊池、お前は海上自衛隊に行け」
と言われた。バリバリに右翼思想だったので。敬神愛国。
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