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第14話
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「こんな大金、初めて見ました」
「私は佐川紀左衛門と申します。大阪で商いをしております。
先日のテレビ番組で『寺子屋ひまわり』さんを知りました。
私は今年、86才になりますのでカネはもう必要ありません。あの世にカネは持ってはいけませんからな。
ジジイなのでボランティアは出来ませんが、せめてお金だけでもお役に立てたらと思い、持参した次第です」
「凄くうれしいのですが、よろしいんですか? こんな高額のご寄付をいただいても。
このことはご家族様は承諾されているのでしょうか?」
「それでしたらご心配には及びません。私には家族がおりませんので。
欲しい物も食べたい物もありません。一日一食、一汁一菜で十分なのです。
家族は私が殺したようなものです。私は姫路の極貧農家に生まれました。姉や妹たちは売られて行きました。
農家なのに白米が食べられない矛盾。腹いっぱい白飯を食べるのが私の夢でした。
小学校を出ると大阪に丁稚奉公に出されました。辛かったが家にいるよりはマシでした。三食メシが食えたので。
戦時中は二等兵としてフィリピンにも行きましたが、復員すると私は必死に働きました。
独立すると朝鮮動乱により商売は面白いほど上手くいきました。
私は懸命に働き、王様のように遊びました。家には殆ど帰らずにです。
ある時、家内から一人息子が進学のことで悩んでいるようだから話しを聞いてあげて欲しいと言われましたが、私はそれを軽く受け流してしまいました。大したことではないと思ったからです。
そして息子は自ら命を絶ちました。私は自分を激しく責めました。悔やみました。なぜ息子の話をちゃんと聞いてあげなかったのかと。
家内はショックのあまり生きる気力をなくしていました。
そして葬儀の翌日、家内は息子の後を追ったのです。
「忠勝だけを逝かせるわけには参りません」
そう書き残して妻も自死してしまいました。家族を殺したのは私なのです。
カネは残りましたが私の人生は後悔の人生になりました。
そして桜井さんたちの活動を拝見していたく感動いたしました。貧困が子供の将来を奪うのは間違いありません。
本来、教育とはすべての子供に等しく与えられるべき宝物なのです。
正しい教育をすれば子供は正しい大人になります。私のような大人を作ってはいけないのです」
「ありがとうございます、このお金があればまた子供たちの未来が拓けます。
大切に使わせていただきます。そして是非、これからも私たちの活動を見守っていて下さい」
「荒廃した日本にもあなたたちのような人たちがいらっしゃることに感謝します」
桃香と佐川は泣いた。
そして桃香は誓った。
「必ず将来ある子供たちをしあわせにします」
「がんばって下さい」
そして1ヶ月後、佐川はこの世を去った。佐川は末期の膵臓ガンだったらしい。
「私は佐川紀左衛門と申します。大阪で商いをしております。
先日のテレビ番組で『寺子屋ひまわり』さんを知りました。
私は今年、86才になりますのでカネはもう必要ありません。あの世にカネは持ってはいけませんからな。
ジジイなのでボランティアは出来ませんが、せめてお金だけでもお役に立てたらと思い、持参した次第です」
「凄くうれしいのですが、よろしいんですか? こんな高額のご寄付をいただいても。
このことはご家族様は承諾されているのでしょうか?」
「それでしたらご心配には及びません。私には家族がおりませんので。
欲しい物も食べたい物もありません。一日一食、一汁一菜で十分なのです。
家族は私が殺したようなものです。私は姫路の極貧農家に生まれました。姉や妹たちは売られて行きました。
農家なのに白米が食べられない矛盾。腹いっぱい白飯を食べるのが私の夢でした。
小学校を出ると大阪に丁稚奉公に出されました。辛かったが家にいるよりはマシでした。三食メシが食えたので。
戦時中は二等兵としてフィリピンにも行きましたが、復員すると私は必死に働きました。
独立すると朝鮮動乱により商売は面白いほど上手くいきました。
私は懸命に働き、王様のように遊びました。家には殆ど帰らずにです。
ある時、家内から一人息子が進学のことで悩んでいるようだから話しを聞いてあげて欲しいと言われましたが、私はそれを軽く受け流してしまいました。大したことではないと思ったからです。
そして息子は自ら命を絶ちました。私は自分を激しく責めました。悔やみました。なぜ息子の話をちゃんと聞いてあげなかったのかと。
家内はショックのあまり生きる気力をなくしていました。
そして葬儀の翌日、家内は息子の後を追ったのです。
「忠勝だけを逝かせるわけには参りません」
そう書き残して妻も自死してしまいました。家族を殺したのは私なのです。
カネは残りましたが私の人生は後悔の人生になりました。
そして桜井さんたちの活動を拝見していたく感動いたしました。貧困が子供の将来を奪うのは間違いありません。
本来、教育とはすべての子供に等しく与えられるべき宝物なのです。
正しい教育をすれば子供は正しい大人になります。私のような大人を作ってはいけないのです」
「ありがとうございます、このお金があればまた子供たちの未来が拓けます。
大切に使わせていただきます。そして是非、これからも私たちの活動を見守っていて下さい」
「荒廃した日本にもあなたたちのような人たちがいらっしゃることに感謝します」
桃香と佐川は泣いた。
そして桃香は誓った。
「必ず将来ある子供たちをしあわせにします」
「がんばって下さい」
そして1ヶ月後、佐川はこの世を去った。佐川は末期の膵臓ガンだったらしい。
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