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最終話
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オレンジとの青春を思い出しながら、いつの間にか私は駅に着いた。
心地よい風がホームをすり抜けて行く。
水曜日の午後のホームは人も疎らで、気怠い駅のアナウンスが流れていた。
私はホームの自販機で温かい缶コーヒーを買った。
「まもなく3番線に電車が参ります。
危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ち下さい」
減速した電車がホームに近づいてくるのが見えた。
その時、反対側のホームに私を見て微笑むオレンジが立っていた。
それは紛れもなく、あの時のオレンジだった。
長く美しい栗色の髪、スラリと伸びた長い足、そして鳶色の澄んだ瞳。
間違いなくそれはオレンジだった。
彼女は私に何かを言った。
「何? オレンジ、今何て言った?」
すると彼女は笑って言った。
「好きよジュン、愛しているの。今でもずっとあなたが好き・・・」
私はオレンジのその言葉を聞いて安心した。
「柑奈! 俺もお前が好き・・・」
私がそう叫ぼうとした時、ホームに入って来た上り電車に私は吸い込まれていった。
駅の空き地には枯れたススキの穂が秋風に揺れ、線路には潰れた缶コーヒーが転がっていた。
空は溶けたクリームソーダのような色をしていた。
『オレンジとボク』完
心地よい風がホームをすり抜けて行く。
水曜日の午後のホームは人も疎らで、気怠い駅のアナウンスが流れていた。
私はホームの自販機で温かい缶コーヒーを買った。
「まもなく3番線に電車が参ります。
危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ち下さい」
減速した電車がホームに近づいてくるのが見えた。
その時、反対側のホームに私を見て微笑むオレンジが立っていた。
それは紛れもなく、あの時のオレンジだった。
長く美しい栗色の髪、スラリと伸びた長い足、そして鳶色の澄んだ瞳。
間違いなくそれはオレンジだった。
彼女は私に何かを言った。
「何? オレンジ、今何て言った?」
すると彼女は笑って言った。
「好きよジュン、愛しているの。今でもずっとあなたが好き・・・」
私はオレンジのその言葉を聞いて安心した。
「柑奈! 俺もお前が好き・・・」
私がそう叫ぼうとした時、ホームに入って来た上り電車に私は吸い込まれていった。
駅の空き地には枯れたススキの穂が秋風に揺れ、線路には潰れた缶コーヒーが転がっていた。
空は溶けたクリームソーダのような色をしていた。
『オレンジとボク』完
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