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第10話 双龍
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ホテルのバーラウンジのカウンターで、小次郎はジンライムを、そして雪乃は目の前に置かれたキールロワイヤルのグラスを見詰めていた。
「私ね、今まで人を愛することが出来なかった。昔、すごく愛していた人がいてね、イタリアンのシェフだった。一緒にイタリアに行く約束をしていたのに、彼は私を置き去りにしたままジェノバで死んでしまったの。交通事故だった。
だから彼と私の時間はそこで今も止まったまま・・・」
「今でもその彼のこと、好きなのか?」
「好きよ、でも好きだけどあなたも好き。これって浮気になるのかしら?
彼はもうこの世にいないのにね」
「俺は別に構わないよ。いや、寧ろ忘れて欲しくない。
雪乃が愛したその彼なら、きっといい奴だろうから」
今まで、そんなことを言ってくれる男は初めてだった。
大抵の男は必ずこう言う。
「俺がその男のことを忘れさせてやるよ」
そもそも会ったこともない真也に対して、「俺の方が優れている」と言っているようで、雪乃はいつも興ざめした。
だが、小次郎は「忘れて欲しくない」と言ってくれた。
雪乃はその気遣いが嬉しかった。
「ありがとう・・・」
雪乃は小次郎に凭れて泣いた。
ホテルの部屋からはライトアップされた東京タワーが見えていた。
ふたりは立ったまま、唇を重ねた。
小次郎の唇がやさしく息を吐きながら、雪乃の耳から首筋、そしてうなじへと移っていった。
雪乃の息遣いは乱れ、膝から崩れ堕ちてしまいそうだった。
小次郎は雪乃にキスをし、服を脱がせていった。
やがて雪乃は全裸にされ、ベッドに横たわった。
「ねえ、見せて頂戴、小次郎の龍・・・」
すると小次郎は窓を背にして服を脱ぎ始めた。
スーツを脱ぎ、ネクタイを外しシャツを脱いだ。
鍛え抜かれた美しいその肉体に、雪乃は見惚れた。
そして小次郎はゆっくりと雪乃に背中を向けた。
小次郎の背中には噂通り、見事な二頭の龍が描かれていた。
その双龍は雪乃を見詰め、今にも小次郎の背中を離れ、天に飛翔しようとしているかのようだった。
雪乃は言葉を失ってしまった。
「この龍はね、双龍といって雄と雌なんだ。
これが私の守り神だよ」
「凄くきれい・・・、そしてとても強そうだわ。
ねえ、触ってもいい?」
小次郎はベッドに腰を降ろし、頷いた。
雪乃は小次郎の龍を右手で触ると、その雌雄の龍に頬擦りをした。
(龍神様 どうか小次郎をお守り下さい)
雪乃は女龍となって小次郎に激しく抱かれ、何度も絶叫し、我を忘れた。
その夜、二頭の龍はひとつになった。
「私ね、今まで人を愛することが出来なかった。昔、すごく愛していた人がいてね、イタリアンのシェフだった。一緒にイタリアに行く約束をしていたのに、彼は私を置き去りにしたままジェノバで死んでしまったの。交通事故だった。
だから彼と私の時間はそこで今も止まったまま・・・」
「今でもその彼のこと、好きなのか?」
「好きよ、でも好きだけどあなたも好き。これって浮気になるのかしら?
彼はもうこの世にいないのにね」
「俺は別に構わないよ。いや、寧ろ忘れて欲しくない。
雪乃が愛したその彼なら、きっといい奴だろうから」
今まで、そんなことを言ってくれる男は初めてだった。
大抵の男は必ずこう言う。
「俺がその男のことを忘れさせてやるよ」
そもそも会ったこともない真也に対して、「俺の方が優れている」と言っているようで、雪乃はいつも興ざめした。
だが、小次郎は「忘れて欲しくない」と言ってくれた。
雪乃はその気遣いが嬉しかった。
「ありがとう・・・」
雪乃は小次郎に凭れて泣いた。
ホテルの部屋からはライトアップされた東京タワーが見えていた。
ふたりは立ったまま、唇を重ねた。
小次郎の唇がやさしく息を吐きながら、雪乃の耳から首筋、そしてうなじへと移っていった。
雪乃の息遣いは乱れ、膝から崩れ堕ちてしまいそうだった。
小次郎は雪乃にキスをし、服を脱がせていった。
やがて雪乃は全裸にされ、ベッドに横たわった。
「ねえ、見せて頂戴、小次郎の龍・・・」
すると小次郎は窓を背にして服を脱ぎ始めた。
スーツを脱ぎ、ネクタイを外しシャツを脱いだ。
鍛え抜かれた美しいその肉体に、雪乃は見惚れた。
そして小次郎はゆっくりと雪乃に背中を向けた。
小次郎の背中には噂通り、見事な二頭の龍が描かれていた。
その双龍は雪乃を見詰め、今にも小次郎の背中を離れ、天に飛翔しようとしているかのようだった。
雪乃は言葉を失ってしまった。
「この龍はね、双龍といって雄と雌なんだ。
これが私の守り神だよ」
「凄くきれい・・・、そしてとても強そうだわ。
ねえ、触ってもいい?」
小次郎はベッドに腰を降ろし、頷いた。
雪乃は小次郎の龍を右手で触ると、その雌雄の龍に頬擦りをした。
(龍神様 どうか小次郎をお守り下さい)
雪乃は女龍となって小次郎に激しく抱かれ、何度も絶叫し、我を忘れた。
その夜、二頭の龍はひとつになった。
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