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第6話
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北大路がシルバー恋愛センターに出勤すると、みんなが寄って来て質問攻めにされた。
「北大路さん、あの女の子、どうなりましたか?」
「カレシさんと仲直り出来たんですか?」
「また焼肉食いに行くのか? 焼肉屋に?
なんなら俺も一緒について行くぜ?」
「私、ご飯作ってあげましょうか?」
「マサル君の仕事なら、東大の同級生に紹介してもらいますよ」
「俺はジジイだからカルビよりハラミがいいぞ」
「私で役に立つことがあればいつでも言って下さいね?」
北大路はやさしく微笑んだ。
「みなさん、ありがとうございます。
みなさんのチカラを貸していただくことになるかもしれません、その時はどうかよろしくお願いします」
北大路は深々と頭を下げた。
「いつでも言って下さいね? 私たちはあの子たちにしあわせになって欲しいんです」
「ありがとうございます。俺もあの子たちが大好きなんです。
よく人は「今の若いヤツは」とか言いますが、私はそうは思わない。
アイツらはわからないんです、知らないんです、やっていいことと悪いことの区別が出来ないんです。
それはちゃんと親から、教師から、大人たちから教わって来なかったからなんです。
言葉遣いも社会の仕組みもわかっちゃいない。アイツらはスポンジと同じなんです。どんどん吸収出来るんです。だからいいこと、しあわせになることを教えてやりたいんです」
「そうね、私たちは人生の先輩として、若い人たちに伝える義務があるわよね?」
「その通りです、他人から笑われようと否定されようと、自分が今まで生きて来て、学んだことやそれをして失敗したことを伝えなければなりません。
それがこれからの俺の任侠道だと思っています」
「私たちは人生の先輩ですからね?」
「センマイ刺しでやる、『真露』も美味いぜ」
「私たちは口で教えるだけではなく、背中で語ることも大切ですからね?
行動で教えないと、若者の手本になるように」
「その通りだと思います。それじゃあ庭の草毟りをして来ますので」
「俺も手伝うよ」
「みんなでやりましょうか? 私たちみんなで」
恋愛センターのみんなは汗だくになって草毟りをしていた。
するとそこに明美とマサルがやって来た。
マサルと明美も一緒に草毟りを手伝い始めた。
「兄貴、俺も手伝うよ」
「川村も手伝う!」
「兄貴じゃねえ、親父と呼べ。お前は俺の息子だ」
「川村も、川村も」
「明美、お前は俺をパパと呼べ。今日からお前は俺のかわいい娘だ」
「親父」
「・・・パパ」
ふたりとも照れながらもうれしそうだった。
源次郎さんが言った。
「そうなると私たちは叔父さんと叔母さんになりますかな? 私たちは北大路さんと兄弟なのでね?」
「明美とマサル、おめえたちはかわいい姪っ子と甥っ子だ、腹が減ったらいつでも来いよ、 『すき家』と『かつや』、それから『幸楽苑』ならいつでも奢ってやっからよ」
「はい! あ、ありがとうございます! すごくうれしいっす!」
「川村も、川村もうれしいです・・・。ううううう」
「さあ手を動かそうぜ、日が暮れちまう」
みんな汗を流して草毟りを続けた。
草毟りを終えて、みんなで寛いでいると、マサルが言った。
「ああ、気持ちいいー。好きなひとたちとみんなで汗を流して作業をするって疲れるより爽快な気分になるもんなんだなあ」
「そうだ、みんなでみんなのために働く。これが仕事というものだ」
「俺、今、仕事を探しているんだ」
「それなら私の大蔵省時代の仲間に紹介してもらいましょうか?」
「ありがとう源次郎叔父さん。でも俺、自分で探してみたいんです。自分のチカラで」
「困ったらいつでも来いよ、俺たちは家族なんだからよお」
「はい、うれしいです、俺たち、家族なんですね?」
「そうよ、困ったらいつでも私たちを頼りなさい、家族なんだから」
マサルも明美も泣いていた。
美紀が麦茶とふ菓子を持ってやって来た。
「さあみなさん、水分補給して下さいねー。熱中症にならないようにね?」
「何だふ菓子かよー」
「棟梁、入れ歯だからお煎餅はダメでしょう?」
「舐めてるとそのうちやわらかくなるもんだぜ」
「あはははは」
みんなが楽しそうに笑った。
「北大路さん、あの女の子、どうなりましたか?」
「カレシさんと仲直り出来たんですか?」
「また焼肉食いに行くのか? 焼肉屋に?
なんなら俺も一緒について行くぜ?」
「私、ご飯作ってあげましょうか?」
「マサル君の仕事なら、東大の同級生に紹介してもらいますよ」
「俺はジジイだからカルビよりハラミがいいぞ」
「私で役に立つことがあればいつでも言って下さいね?」
北大路はやさしく微笑んだ。
「みなさん、ありがとうございます。
みなさんのチカラを貸していただくことになるかもしれません、その時はどうかよろしくお願いします」
北大路は深々と頭を下げた。
「いつでも言って下さいね? 私たちはあの子たちにしあわせになって欲しいんです」
「ありがとうございます。俺もあの子たちが大好きなんです。
よく人は「今の若いヤツは」とか言いますが、私はそうは思わない。
アイツらはわからないんです、知らないんです、やっていいことと悪いことの区別が出来ないんです。
それはちゃんと親から、教師から、大人たちから教わって来なかったからなんです。
言葉遣いも社会の仕組みもわかっちゃいない。アイツらはスポンジと同じなんです。どんどん吸収出来るんです。だからいいこと、しあわせになることを教えてやりたいんです」
「そうね、私たちは人生の先輩として、若い人たちに伝える義務があるわよね?」
「その通りです、他人から笑われようと否定されようと、自分が今まで生きて来て、学んだことやそれをして失敗したことを伝えなければなりません。
それがこれからの俺の任侠道だと思っています」
「私たちは人生の先輩ですからね?」
「センマイ刺しでやる、『真露』も美味いぜ」
「私たちは口で教えるだけではなく、背中で語ることも大切ですからね?
行動で教えないと、若者の手本になるように」
「その通りだと思います。それじゃあ庭の草毟りをして来ますので」
「俺も手伝うよ」
「みんなでやりましょうか? 私たちみんなで」
恋愛センターのみんなは汗だくになって草毟りをしていた。
するとそこに明美とマサルがやって来た。
マサルと明美も一緒に草毟りを手伝い始めた。
「兄貴、俺も手伝うよ」
「川村も手伝う!」
「兄貴じゃねえ、親父と呼べ。お前は俺の息子だ」
「川村も、川村も」
「明美、お前は俺をパパと呼べ。今日からお前は俺のかわいい娘だ」
「親父」
「・・・パパ」
ふたりとも照れながらもうれしそうだった。
源次郎さんが言った。
「そうなると私たちは叔父さんと叔母さんになりますかな? 私たちは北大路さんと兄弟なのでね?」
「明美とマサル、おめえたちはかわいい姪っ子と甥っ子だ、腹が減ったらいつでも来いよ、 『すき家』と『かつや』、それから『幸楽苑』ならいつでも奢ってやっからよ」
「はい! あ、ありがとうございます! すごくうれしいっす!」
「川村も、川村もうれしいです・・・。ううううう」
「さあ手を動かそうぜ、日が暮れちまう」
みんな汗を流して草毟りを続けた。
草毟りを終えて、みんなで寛いでいると、マサルが言った。
「ああ、気持ちいいー。好きなひとたちとみんなで汗を流して作業をするって疲れるより爽快な気分になるもんなんだなあ」
「そうだ、みんなでみんなのために働く。これが仕事というものだ」
「俺、今、仕事を探しているんだ」
「それなら私の大蔵省時代の仲間に紹介してもらいましょうか?」
「ありがとう源次郎叔父さん。でも俺、自分で探してみたいんです。自分のチカラで」
「困ったらいつでも来いよ、俺たちは家族なんだからよお」
「はい、うれしいです、俺たち、家族なんですね?」
「そうよ、困ったらいつでも私たちを頼りなさい、家族なんだから」
マサルも明美も泣いていた。
美紀が麦茶とふ菓子を持ってやって来た。
「さあみなさん、水分補給して下さいねー。熱中症にならないようにね?」
「何だふ菓子かよー」
「棟梁、入れ歯だからお煎餅はダメでしょう?」
「舐めてるとそのうちやわらかくなるもんだぜ」
「あはははは」
みんなが楽しそうに笑った。
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