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第十四章
ジャージの男
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「私はテン。助けてくれてありがとう。」
そこは使われなくなったトンネルの中で廃材を組み上げ、大勢の人が自分の住処を陣取って暮らしていた。
「あぁ。別に大した事じゃないさ。」
(兄貴が脇をパタパタさせてる・・
照れてるんだ。)
「アブヤマ。何だその目は。」
「痛い痛い!何でもないっすよっ!」
リッキーがアブヤマの長い髪の毛を掴んでは左右に振った。
「クスクスクス。面白い人達ですね・・・イッ」
テンの唇は真っ黒に腫れ上がっていた。
「大丈夫か?だけど、やったのはお前のボスなんだろう?何があったんだよ。」
「・・えぇ。ピルクルさんは街の英雄です。記憶も希望もないこの世界に、人間が人間らしく機械に頼らず生きる喜びを教えてくれました。私も自分が何者か分からず街を彷徨っていたところをピルクルさんに拾ってもらいました。そしてこのテンという名前もつけて貰って、まるで父親の様に慕っていました。」
「その父親がなんで」
「私がピルクルさんの元で働き始めて数ヶ月経ったある日、新しい仕事があると呼び出されたんです。そこでピルクルさんは私にこれを売ってこいと渡してきました。」
そう言うとテンはカバンの中から一つの青く光る瓶を取り出した。
「おぉ!それはお前マベラスじゃねーか!」
「おぉーー!テンちゃんこれいくらで売ってるんだ?」
リッキーとアブヤマはその瓶を見るや否やテンから瓶を取り上げ食い入る様に眺めた。
「10000ピルです。」
リッキーはアブヤマを見るが、アブヤマは自分の財布を見ながら首を振った。
「それで・・お前これからどうするつもりだよ。」
「私もそれは分かりません。ただもう・・こんな生活は耐えられません。ピルクルさんは未来を恨んでいます。ピルクルさんやこの街の人達の過去の記憶を奪ったのは未来だと。だから自分の手で過去を作る、人間が機械に支配される前の過去を自分の手で作り上げると言っていました。表向きは街の英雄ですが、その資金源になっているのはこの覚醒剤なんです。私はそれを売る売人。売れない時はこうやって殴られ・・もう・・」
テンは肩を振るわせ泣いた。
「・・・おいテン。お前そのピルクルって奴に俺達を会わせろ。」
「え・・でもあなた達は追われるんですよ?」
「追ってくる奴はコイツがなんとかするさ。ピルクルって奴はとにかくそのマベラスを売り捌く奴を欲しがってるんだろ?」
「ちょっ!兄貴!俺だけにズル」
アブヤマがリッキーの肩に手を掛ける瞬間、その手をかわしリッキーはアブヤマの髪の毛を掴み左右に振りながら続ける。
「お前今いくつ持ってる。」
テンはカバンを広げてリッキーに見せた。
その中身を見たリッキーとアブヤマは目をパチパチさせ硬直した。
「お、おい。その量・・ま、まぁ俺に任せとけ。とにかくそれを俺によこしな。俺が売り捌いて明日またここに来る。そしてその金を持ってピルクルに会わせろ。俺が話をつけてやる。そうすればお前も足を洗って好きなように暮らせるだろ。」
そう言うと2人は、テンからカバンを受け取りその場を去った。
「ねぇ兄貴。あれ嘘でしょ?それ売り捌くとか。」
「ん?嘘じゃねぇよ。これ売り捌けばしばらくは遊んで暮らせるだろ。」
「いやそーじゃねーっすよ。・・・あのテンって子・・・殺されますよ?」
「知らねーな。おいアブヤマ。俺達はここで生きていくんだよな?今までもこれからもだ。誰かが道を間違えて、「そっちは間違いですよーこっちが正解ですよー」なんて無責任な事を言って、そいつがそのせいで死んでお前はその責任を取れるのか?」
リッキーは立ち止まり道端でくるまり今にも死にそうな老人を指差して言った。
「い、いや。でもリッキーさんのやってる事は騙してるじゃないっすか!」
「あのなアブヤマ。」
アブヤマの長い髪を掴み左右に振りながらリッキーが言う。
「ここにいる奴らも、俺も、お前も、全員過去に何かをしでかしたんだ。その代償がこれだ。このジジイの様に死にたいか?俺はごめんだね。こんな死に方。お前があの子を救いたいって言うなら好きにすれば良い。俺はとりあえずこれで好きに暮らすさ。」
そう言うとカバンの中からマベラスを取り出しタバコを浸しては吸い出した。
「ぐっ・・あの子がどうなっても良いって言うんですね?」
「くどいなぁ。お前アイツに惚れたのか?」
アブヤマは顔を赤らめた。
「兄貴・・・兄貴には感謝してます。でも俺はあの子を救いたい。放ってはおけないっす!」
そしてアブヤマは走って何処かへ消えた。
「馬鹿なやつだ。まぁ良いさ。これでコイツも独り占めって奴だな。クックック」
・・・・数時間後・・・・
「おいテンちゃん。起きろテンちゃん。」
「・・ん・・ど、どうしたんですか?」
眠っていたテンをアブヤマが起こす。
「今すぐここを出よう。説明は後だ。」
「え?でも明日ここで・・」
「いいから!」
アブヤマはテン手を取り住処を出た。
「おっとテン。何処行くんだよ。」
アブヤマとテンが出てきたところを待ち構える様に紺色のジャージ姿の男が立ちはだかった。
「あ・・あなたはバーボさん・・何であなたがここに」
「何でってお前も分かってるだろ?お前は用無しなんだよ。お前の持ってるアレを回収しにきたんだよ。あとお前の始末もな。ん?お前は誰だ?・・・お前まさかシズドン・・・」
「シズドン?何を言ってる。この子は俺が守る。お前がこの子に危害を加えるってんなら俺が相手だ!」
アブヤマはテンの前に立ち身構えた。
「アブヤマさん・・・」
「アブヤマ?・・・クックック。お前ここじゃアブヤマなんだなぁ。面白い。実に面白い。まさかこんなに早くお前らに会えるとはな!」
そう言うと男は、アブヤマに殴りかかった。
そこは使われなくなったトンネルの中で廃材を組み上げ、大勢の人が自分の住処を陣取って暮らしていた。
「あぁ。別に大した事じゃないさ。」
(兄貴が脇をパタパタさせてる・・
照れてるんだ。)
「アブヤマ。何だその目は。」
「痛い痛い!何でもないっすよっ!」
リッキーがアブヤマの長い髪の毛を掴んでは左右に振った。
「クスクスクス。面白い人達ですね・・・イッ」
テンの唇は真っ黒に腫れ上がっていた。
「大丈夫か?だけど、やったのはお前のボスなんだろう?何があったんだよ。」
「・・えぇ。ピルクルさんは街の英雄です。記憶も希望もないこの世界に、人間が人間らしく機械に頼らず生きる喜びを教えてくれました。私も自分が何者か分からず街を彷徨っていたところをピルクルさんに拾ってもらいました。そしてこのテンという名前もつけて貰って、まるで父親の様に慕っていました。」
「その父親がなんで」
「私がピルクルさんの元で働き始めて数ヶ月経ったある日、新しい仕事があると呼び出されたんです。そこでピルクルさんは私にこれを売ってこいと渡してきました。」
そう言うとテンはカバンの中から一つの青く光る瓶を取り出した。
「おぉ!それはお前マベラスじゃねーか!」
「おぉーー!テンちゃんこれいくらで売ってるんだ?」
リッキーとアブヤマはその瓶を見るや否やテンから瓶を取り上げ食い入る様に眺めた。
「10000ピルです。」
リッキーはアブヤマを見るが、アブヤマは自分の財布を見ながら首を振った。
「それで・・お前これからどうするつもりだよ。」
「私もそれは分かりません。ただもう・・こんな生活は耐えられません。ピルクルさんは未来を恨んでいます。ピルクルさんやこの街の人達の過去の記憶を奪ったのは未来だと。だから自分の手で過去を作る、人間が機械に支配される前の過去を自分の手で作り上げると言っていました。表向きは街の英雄ですが、その資金源になっているのはこの覚醒剤なんです。私はそれを売る売人。売れない時はこうやって殴られ・・もう・・」
テンは肩を振るわせ泣いた。
「・・・おいテン。お前そのピルクルって奴に俺達を会わせろ。」
「え・・でもあなた達は追われるんですよ?」
「追ってくる奴はコイツがなんとかするさ。ピルクルって奴はとにかくそのマベラスを売り捌く奴を欲しがってるんだろ?」
「ちょっ!兄貴!俺だけにズル」
アブヤマがリッキーの肩に手を掛ける瞬間、その手をかわしリッキーはアブヤマの髪の毛を掴み左右に振りながら続ける。
「お前今いくつ持ってる。」
テンはカバンを広げてリッキーに見せた。
その中身を見たリッキーとアブヤマは目をパチパチさせ硬直した。
「お、おい。その量・・ま、まぁ俺に任せとけ。とにかくそれを俺によこしな。俺が売り捌いて明日またここに来る。そしてその金を持ってピルクルに会わせろ。俺が話をつけてやる。そうすればお前も足を洗って好きなように暮らせるだろ。」
そう言うと2人は、テンからカバンを受け取りその場を去った。
「ねぇ兄貴。あれ嘘でしょ?それ売り捌くとか。」
「ん?嘘じゃねぇよ。これ売り捌けばしばらくは遊んで暮らせるだろ。」
「いやそーじゃねーっすよ。・・・あのテンって子・・・殺されますよ?」
「知らねーな。おいアブヤマ。俺達はここで生きていくんだよな?今までもこれからもだ。誰かが道を間違えて、「そっちは間違いですよーこっちが正解ですよー」なんて無責任な事を言って、そいつがそのせいで死んでお前はその責任を取れるのか?」
リッキーは立ち止まり道端でくるまり今にも死にそうな老人を指差して言った。
「い、いや。でもリッキーさんのやってる事は騙してるじゃないっすか!」
「あのなアブヤマ。」
アブヤマの長い髪を掴み左右に振りながらリッキーが言う。
「ここにいる奴らも、俺も、お前も、全員過去に何かをしでかしたんだ。その代償がこれだ。このジジイの様に死にたいか?俺はごめんだね。こんな死に方。お前があの子を救いたいって言うなら好きにすれば良い。俺はとりあえずこれで好きに暮らすさ。」
そう言うとカバンの中からマベラスを取り出しタバコを浸しては吸い出した。
「ぐっ・・あの子がどうなっても良いって言うんですね?」
「くどいなぁ。お前アイツに惚れたのか?」
アブヤマは顔を赤らめた。
「兄貴・・・兄貴には感謝してます。でも俺はあの子を救いたい。放ってはおけないっす!」
そしてアブヤマは走って何処かへ消えた。
「馬鹿なやつだ。まぁ良いさ。これでコイツも独り占めって奴だな。クックック」
・・・・数時間後・・・・
「おいテンちゃん。起きろテンちゃん。」
「・・ん・・ど、どうしたんですか?」
眠っていたテンをアブヤマが起こす。
「今すぐここを出よう。説明は後だ。」
「え?でも明日ここで・・」
「いいから!」
アブヤマはテン手を取り住処を出た。
「おっとテン。何処行くんだよ。」
アブヤマとテンが出てきたところを待ち構える様に紺色のジャージ姿の男が立ちはだかった。
「あ・・あなたはバーボさん・・何であなたがここに」
「何でってお前も分かってるだろ?お前は用無しなんだよ。お前の持ってるアレを回収しにきたんだよ。あとお前の始末もな。ん?お前は誰だ?・・・お前まさかシズドン・・・」
「シズドン?何を言ってる。この子は俺が守る。お前がこの子に危害を加えるってんなら俺が相手だ!」
アブヤマはテンの前に立ち身構えた。
「アブヤマさん・・・」
「アブヤマ?・・・クックック。お前ここじゃアブヤマなんだなぁ。面白い。実に面白い。まさかこんなに早くお前らに会えるとはな!」
そう言うと男は、アブヤマに殴りかかった。
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