僕は神様

channa0502

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第十三章

デスコード

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・・・・10年後・・・・

「リッキーそいつはロンだな」

「あぁ?!お前ら組んでるだろ!やってられるかよ!!」

「おいリッキー。毎回毎回同じ事言ってんじゃねーよ。大人しく払うもん払って出ていきな。」

昔の時代に使われていた「眼鏡」をして少し小太りの男が麻雀に負けて喧嘩をしている。

この街では、こんな風景は日常茶飯事だ。

「アブヤマ代わりに払っとけ。後で払う。」

「いやリッキーさんいつもそうやって返してくれないじゃないすかぁ。」

「うるせー!文句あんのかこの野郎!」

痩せこけた顔に髪を腰まで伸ばしている男がアブヤマ。

彼は施設から出て今までずっとリッキーと共に家のない生活を共にして来た。

「ぜってー払ってくれねーんだ・・ブツブツ・・」

「何ブツブツ言ってんだアブヤマ!誰のおかげでここまでメシ食って来れたと思ってるんだ。あぁ?!」

リッキーはアブヤマが出した財布を取り上げ自分の負け分を雀卓に叩きつける。

「もう一度だ。今度こそお前ら全財産置いてきな」

腕まくりをして椅子に勢い良く腰掛けた。

アブヤマがこっそりとリッキーのそばに行きささやく。

「兄貴ぃ。ヤバいっすよ。今度負けたら俺も持ち金ねぇーっすよ?」

「黙って見てろ。おい火」

「はいはい。もう知らねぇっす・・」

呆れ顔でリッキーのタバコに火をつける。

アブヤマはリッキーの後ろでウロウロしては、たまに財布を確認する。

「いやこれでどうだ!!!」

「そいつは通らねーよ。ロン」

「ぐっ・・・」

貧乏ゆすりが徐々に大きくなって雀卓がガタガタと揺れ始めた。

一歩。また一歩とアブヤマは後退りする。

「・・・ガタガタうるせぇええ!!」

そう怒鳴ると懐に隠していたナイフを取り出し対戦相手に向ける。

「お、おいリッキー。いい加減にしろよ!ガタガタ言わしてるのはお前だろうがぁ。俺たち別に何もしてねーぜ。」

一緒に麻雀をしていた相手も困った様子でお互い顔を見合わせている。

「う・・うるせぇ。払えば良いんだろ払えば。これで今回はいいだろ。取っとけよクソが」

リッキーはポケットから青い液体の入った小さな瓶をテーブルの上に置く。

「兄貴ぃ・・・・」

「行くぞアブヤマ。また稼ぎゃ良いんだろ。」

そう言うと2人は、その場をフラフラと去った。

「あいつだいぶヤバい事になってるな。」

「あぁ・・酷いもんだ。あいつも長くねぇだろなぁ。」

殺人や強盗など大きな犯罪を犯した受刑者は、刑期を終えトーラーから出ると、一度施設で最低限の生活が出来る様になるまで回復を待つ。

それはトーラーの中で視覚や嗅覚などの五感を現実世界の何倍もの時間を奪われていた為に光や匂いなど極度に敏感になっているからだ。

しかし、五感を取り戻しても絶対に取り戻す事が出来ないものもあった。

それは、「過去の記憶」

長年感覚を奪われた受刑者は決まって過去の記憶を失う。

自分が眠っているのか起きているのか、それとも死んでいるのかさえ分からない世界では「過去の記憶」を忘れるだけの十分な理由に値した。

そして施設を出ると送り込まれる街。

「デスコード」

この2人も5年前、施設から出てこの街に来たのだった。

「ピルクルさん。・・明日・・明日必ず持って来ますから今日はこれで勘弁して」

ドォフッ

男は女性の腹を殴ると、前屈みになった髪を掴み膝で顔面を蹴り上げた。

女性は鼻と口から血を噴き出し仰向けに倒れた。

「あぁー君。マサヤ君だっけ?この子もう使えないから捨てるなり何なり好きにして良いからね。」

脇に立っていた男がニヤつきながらもう1人の男に声をかける。

「おい。おい。あのーなんだっけ・・・まぁ良いや。お前腕持て。俺は足を持つ。」

そう言うとマサヤと名前を忘れられた鼻の長い男は、グッタリして動かない女性の手足を持ち、闇に消えて行った。

「困ったものですねぇ。あんな簡単な仕事も出来ない様じゃ。」

このピルクルと言う男は数年前からここデスコードのボス的存在だ。

彼も元は犯罪を犯しトーラーによって記憶を失いこの街に送り込まれた。

ただ他の誰かとも彼には違うものがあった。

酒や薬物に埋もれるように廃人になって行く犯罪者をいつしかまとめるようになった。

そして定期的に集会を開き壇上に立っては演説をした。


人間とは何か。

地球に生きる人間とは何なのか。

地球は人間の「物」ではない。

人間の都合の良い様に作り上げた未来の結果、地球はどうなった。

俺には聞こえる。

地球の悲鳴や怒りが。

文明の進化によって失われていく過去。

人工的に作った自然や食料。

人工的に助けられる命。

全知全能の神とはもはや「人間」。

いや、人間は「神」になろうとする「悪魔」だ。

アイツ達は未来を作り上げ過去を消し去る悪魔だ。

それでは俺達は何だ。

この街には過去も、未来も無い。

死を受け入れ今を生きる俺達は何だ。

見ろこの自然を。

見ろこの食料を。

これはアイツ達が作った偽物なんかじゃ無い。

地球がくれたここにある物全てが「生命」だ。

アイツ達はもう生命を必要としない悪魔だ。

もう一度聞く。

この街に暮らす俺達は何だ。

俺達こそが「人間」だ!

その演説を聞き集まってくる者達は、次々に増えていき、いつしか街のボスと呼ばれる様になっていた。

「ぐっへっへ。ジュルリ。うまそうな女だな。・・・えっと、なんだっけな・・まぁいい。」

「おい。お前らその女どうする気だ。見たところ気を失ってる様だが。」

マサヤと鼻の長い男に声をかけたのは、寝床を探して街を彷徨いていたリッキーとアブヤマの2人だった。

「へっへ。その古臭い眼鏡に金髪の2人組。噂は聞いてるぜ。お前らちょっと前からこの辺彷徨いてるらしいな。オマケにギャンブルじゃ負けっぱなしのヤク漬けコンビだろ。お前らに関係ねーんだよ!消えろザコが!!」

マサヤはそう言うと女を連れて行こうとする。

「・・おい。え?」

マサヤが振り向くと女を持っているはずの長い鼻の男の鼻がグニャリと折れ曲がり倒れていた。

そして視線を上げると同時に目の前に稲妻が落ちた様な衝撃と共にマサヤは気を失った。

「やり過ぎっすよリッキーさん。」

「先に動いたのはお前だろアブヤマ。」

「しかしこの女、よく見りゃ良い女っすねぇー」

2人が眺めていると、気を失っていた女性が目を覚ました。

「い・・いやぁあああ!!!!」

女は暴れ出しアブヤマの股間を蹴り上げる。

「いやいや!シィー!シィー!俺達は何もしねーよ!お前が襲われそうになってるのを助けたんだぞ!」

慌ててリッキーがアブヤマの腰を摩りながらアゴで周りを見ろと合図する。

「あ・・・」

「あ・・・じゃねぇーっすよ・・・イデデデ」

股間を蹴り上げられたアブヤマが顔を青ざめさせながら言った。

「ごめんなさい・・・でもあなた達こんな事して大丈夫なんですか?」

「ん?知らん。アイツらが気に食わない。ただそれだけの理由だ。まぁ良かったじゃねーか。アブヤマ行くぞ立て。」

「うぅーイデデ。じゃあ姉ちゃん気をつけな。」

「ちょ・・ちょっと待って下さい!助けて貰って何ですけど・・この男達はピルクルさんの手下なんです。私もそのピルクルさんの下で働いていて・・とにかく!ここに居ては危険です。私について来て下さい。」
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