箸で地球はすくえない

ねこよう

文字の大きさ
19 / 26

キツネの話 5章

しおりを挟む
 営業職は忙しい。
 
 だから私達二人の初デートは、初めて会った日から三カ月が経った、
ちょうどクリスマスが近い頃だった。
 彼が観たいという映画を一緒に観に行った。
 有名な俳優や監督が出ない作品で、「ちょっとマニアックな映画ですけど
すみません」と彼は最初に謝った。
 ドキュメンタリー風な画像で、一人の売れない画家の苦悩や葛藤や人間関係を
描く作品だった。正直言って暗闇の中であくびを噛み殺すのに必死だったけど、
終わって食事に行くと、彼はその作品の監督が今までどんな作品を作って、
今回はどんな部分に挑戦したのかを熱っぽく語った。
 私は、うんうん。とか、へーそうなんだ。とか相槌を打ちながら、この人は
ちょっとマニアックな一面もあるんだ。とまた手塚恭一という男に対して
興味を強くしていった。
 「そう言えば、もうすぐクリスマスですね。」
 彼は軽い口調で聞いてきたけど、私はその質問に重さを感じた。
 「クリスマス、どう過ごされているんですか?」
 あ、クリスマスですか? そうですねぇ~、女友達と一緒に食事したりとか、
ですね。でも最近は私の周りの友達、彼氏が出来たりしてるから、結構ヒマ
なんですよね~。
 嘘ばっかりだ。
 毎年、ネットワークの中のあっちこっちでパーティーがあって、気が向いた
パーティーに参加したりしている。もう、デコっぱち嘘だ。
 「そうですか。僕も、去年はクリスマスなのに独りで映画観てたりしてます」
 そうなんですか~。と笑って頷きながら、頭の中で呟いていた。
 それもう知ってる。ウサギに聞いたから。

 そうやって一カ月に二回ほどのペースでデートを重ね、私と手塚恭一は
付き合う事になった。
 私が26で手塚が30の時だ。
 もちろん、私が大きなネットワークを持っている事も、キツネと呼ばれている
事も、犯罪スレスレと言うかバレたら丸ごと犯罪みたいな情報を売買している事も秘密だった。
 
 
 「僕はさ――」と、ある日のデートの途中で寄った喫茶店で、手塚は
語り出した。
 静かなクラシックが流れている、しっとりとした落ち着きのある店だった。
 
 「自分自身への評価は、他人に任す事にしているんだ。ホラ、がんばりました。
  とか、全力でやりました。ってのは、所詮自分への甘い評価じゃない? 
  だから僕は僕自身への評価は他人に聞くの。例えば、この店の中で、
  全然知らない人にでも僕は聞けるよ。あそこでコーヒーを飲んでいる
  年輩の男の人に‘‘僕の事どう思いますか?‘‘とか‘‘僕が悪い人間だと思いますか‘‘
  って。そうすればその人は僕を見て思った通りの評価をしてくれるんだろう
  からね。それが、他者の目から見た、正しい僕の評価なんだよ」
 
 自分への評価を誰かに預けられるなんて、なんて潔いんだろう。
 私は感慨にふけった。
 私は、そんな他人に評価してくださいなんて言えない。
 チビね。とか、空っぽね。とか言われるかもしれないと思うと、とても
怖いからだ。
 

 付き合って一年が経つ頃、私達の年齢からすると、どうしても結婚というものが
見え隠れしてくる。
 彼なりに一生懸命考えてくれたプロポーズに驚かされたふりをして、お互いが
相手の親への挨拶に行った。
 私の父は、手塚をとても気に入ってくれた。
 「こんないい青年がお前と結婚してくれるなんてな。」
 お祝いだと開けたワインで顔を真っ赤にして、喜んでくれた。
 手塚のお母さんは、特に厳しそうな雰囲気も無く「恭二をよろしくね」と
にこやかに迎えてくれた。
 「今どき、嫁だ姑だっていうのは流行らないわよ。私達は勝手にやるから、
  あなた達はあなた達で勝手にやんなさい」とも言われた。
 何の障害も無い結婚。これ以上何を求めるのだろうか。これこそ、運命が私に
味方してくれたって事なんじゃないだろうか。
 そうか。薄い膜の張った中で生きてきた私は、一生懸命ネットワークを作ったり
仕事を頑張ったりしてきた。そうやってがんばってきた私を、神様は手塚と
出会わせて普通の人間にさせてくれたんだ。
 まるで、「ピノキオ」の最後に、木で作ったはずのピノキオが女神さまの力で
普通の男の子になったみたいに――。

 
 「――それでさ、私達も呼ばれるんだよね? 結婚式。」
  三人で会ったファミレスでオウムがニヤついて聞くと、
 「私出たくない」ウサギがボソッと喋った。
 「なんで? 出ようよウサギも。それでさ、テーブルには‘‘お仕事の同僚‘‘って
  札を置いてもらうの。代表してスピーチは私がやるわ。『新婦様からは様々な
  情報を流して頂きました。警察の動きとか、中国人グループの溜まり場。
  半グレ組織の内部事情など。おっと忘れてはいけませんが、わたくしが
  ターゲットを罠にハメてお金をかすめ盗った時などは、並々ならぬ
  ご活躍をされまして――』」
  オウムはおかしくてたまらないようにクククと笑った。
 「呼ぶわけないでしょう? あんた達なんて。」
 ちょっと冷たいトーンで言い放つと、オウムは「そりゃそうよね」と意外と
スッと引っ込んだ。
 「んで、仕事は続けるの?」
 ウサギは無表情に聞いてきた。結婚よりも自分の仕事の情報源がどうなるかが
気になるみたいだ。
 「続けるけど、受注の量はだいぶ減らすわ。こっちの仕事やってるのは
  秘密だし、あんまりこっちが忙しすぎちゃうと、旦那に浮気してるんじゃないか
  とか疑われちゃうから」
 オーオーもう旦那ときましたか。と茶化しにきた後「でもさ、なんか困った事とか
あったら、本当に私かウサギに言いなさいよ」
 そう続けたオウムの表情は妙に真剣だった。

 
 式を終えて、3LDKマンションでの新婚生活が始まった。
 二人とも仕事はそのまま続けているから、共働き世帯。ということになる。
 手塚は、家事を全くできない男。というわけでは無くて、掃除洗濯から料理まで
一通りの家事は出来るので、共同生活特有の「私ばかり家事やって」という不満は
私には無かった。
 逆に「軽く掃除機かけておいたよ」「洗面所磨いておいたよ」と先だって言われる
事も何度もあった。
 キツネの仕事は、内緒でもう一つのキツネ用携帯電話を持っていたので、
それで主に営業の仕事中の合間を縫ってやっていた。
 そっちの裏仕事は独身の時の1/3くらいの量に抑えたから、今は完全に副業だ。
このまま二人の間に子供が産まれて、1/3の仕事が1/4とか1/5になって、
そのうち裏の世界からはフェードアウトするのかなぁ。みたいな事をぼんやりと
考えたりしながら、新婚の日々を過ごしていた。
 

 結婚して半年が経った頃、今度の週末の休みの日に、自分の職場の同僚を
家によんでみんなで食事をしたい。と手塚から提案があった。
 さあ困った。正直言えばそんなめんどくさい事やりたくない。けど、旦那はもう
食事会をやって当然な顔をしている。
 なので無理に笑顔を作って引き受けた。
 ところで、私は料理がたぶん、天才的に下手なのだ。て言うか、どうやったら
美味しい料理が作れるのかが皆目分からない。普段はお互いが仕事で帰りが
遅いから、作ってある総菜を買ってきて一緒に食べて、休日の夜は外食をしたり
していたから、料理自体が日常的にやっている事ではないのだ。
 
 同僚の人が来る一週間前から、仕事が終わって帰ってホッとしたい深夜に、
ネットで‘‘簡単にできるおもてなし手料理‘‘を検索して、どうにか作れそうな
料理を調べてピックアップしていったけど、もうその作業自体が苦痛でしか
なかった。
 
 食事会の当日、私は旦那よりかなり早い時間に起きて、キッチンに置いたiPadで
料理手順を見ながら、必死に作業していった。
 あー、辛い。からい。じゃなくて、つらい。だ。
 なんで最初に炒めたものを皿に出して、また違う食材を炒めないといけないの。
「火が通ったら」なんて、火が通ったかどうか分からないよ。慎重にやりすぎると
焦げ付くし。塩を一振り入れすぎるだけで塩っぱくなって、それを薄めようと
水を入れると今度は薄くなりすぎる。
 結局、五時間かけて料理五品にスープを作る予定だったのが、お客様に出せる
レベルの料理はナス味噌炒めとだいぶ多めに出来てしまったスープだけだった。
 あと二時間で同僚の皆さんは来てしまう。
 たぶん、これはマズイ。
 もうこうなったら最後の手段だ。私は電話した。オウムに。
 眠そうな声のオウムに、簡潔に今の状況を説明する。
 「あんた、なんでもっと早く言わないのよ!」
 「だから、なんとかなると思ったのよ。それについては本当に悪かった。
  だからさ、助けてよ。お願い」
 「・・・・ちょっと待って。ウサギに手を貸してもらうから。」
 それから、オウムとウサギが何をどうしたのかは分からないけど、一時間後に
オウムから指定された近所のコンビニに行くと、見知らぬ若い男が、両手に
ビニール袋をたくさん持って待っていた。
 「あんた、キツネ?」男はぶっきらぼうに聞いてきた。
 こんな所で身分を明かすのは気が進まなかったけど、この状況は仕方がない。
首を縦に動かした。
 「じゃ・・・これ」
 男は、こっちの事などお構いなしに、ビニール袋を次々と渡してきて、
「うんじゃ」とトットとコンビニから出て行ってしまった。
 見た目はそんなに悪い感じじゃない。けどどこかに暗い影を持ったヤツだった。
 帰ってから、出来るだけいいお皿に料理を盛り付けていると、インターフォンが
鳴って、手塚が「まあ狭いけど」と謙遜を喋りながら若い男女と玄関から入ってきた。
 
 
 三時間が経った後、私は誰もいなくなったテーブルの残った料理をタッパーに
詰めたりグラスや皿を洗ったりしていた。
 手塚は職場の人を近くの駅まで送りに行っている。
 疲れた。私はとても精神的に疲れている。
 愛想笑いをしながら職場のよく分からない話に調子を合わせ、ビールを注いだり
料理を出したりする。顧客に気を使う接待みたいなお酒の席は営業だから何度も
経験がある。でも自分の家で、よく知らない旦那の後輩の女性の目線を気に
しながら、『良い奥さん』をやり続けているのは本当に疲れた。
 何度、「あーもうやってらんない!」と叫び、自分の気を許せる人に電話して
「今すぐ飲みに行ける?」と聞きたくなったか分からない。
 ガチャ、と音がして手塚が帰ってきたので、「お帰り。皆さんどうだった?」と
片付け作業をしながら聞いてみたら、「ああ」とだけ答えすぐにソファでテレビを
点け始めた。
 「ああ」は機嫌の悪い時のサインだ。
 どうしたんだろう? 何かあったんだろうか?
 「ねえ? どうしたの? 何かあった?」
 「・・・・別に。」
 もう唇が少しへの字に曲がっている。これは絶対何かあったか。
 「ねえ? 職場の方たちに何か言われたの? なんで怒ってるの?」
 返事は無い。
 「ねえったら! 私、料理とか結構一生懸命やったんだよ。なのに、終わって
  お疲れ様とかありがとうとか無しに、そんな不機嫌になってんの
  おかしくない?」
 朝からガマンしていた分こっちも少々感情的な言い方になってしまった。
 すると、手塚はすごい目つきでこっちを睨んできてから
 「あのさ、俺言わなかったっけ? がんばったとかそういうのはイイから、
  結果が全て。評価が全て。って。言ったよね? 今日さ、君ががんばって
  みんなに気遣ってくれたのは十分分かるよ。分かっているけど、なんで
  山田がお花見の話をしてる時、つまんなそうな顔してたの?」
 一瞬、何を言われたか分からなかった。花見の話? 
 ああ、山田って男後輩が、お花見で酔っ払って恥かいたって話か。
確かにつまらなかった。
 「あと、佐川さんが彼氏の話をしている時も退屈そうだった。
  ああいう時って、普通の出来てる奥さんは、‘‘でもいい彼氏ですよね‘‘とかって
  フォローを言ったりするんじゃないの?」
 いやいや、それはバイク大好きでえばりん坊だという彼氏が良い人に
思えなかったから。
 「それとさ、ビールが切れて、冷えたの冷蔵庫から出すタイミング遅いよね? 
  女の子達が取りに行こうとしてた。ああいうの、普通の奥さんなら、
  もっと早く出すよね?」
 それからも、皆の話への相槌がヘタだったとか、旦那さんは家ではどうなんですか
と聞かれての答えた内容とか、こまごまとしたことのダメ出しは続いた。
 そして必ず、一つ一つの最後には「普通の奥さんはそうじゃない」と付け加え
られていた。
 
 私は、とにかく旦那の機嫌が早く良くなるように、ごめんなさい。を繰り返した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...