若返りの日々

内藤 晃一

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日経平均株価はどこまで下がったら買うべきか 6/26(月) 7:32配信

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日経平均株価はどこまで下がったら買うべきか
6/26(月) 7:32配信

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東洋経済オンライン

急激に上昇してきた日本株。ようやく少し安い価格で買えるときが来たのだろうか(東京・原宿、写真:ブルームバーグ)

 今年の上半期の相場がそろそろ終わろうとしている。日本株は代表的な指標である日経平均株価の終値が3万2781円と2日連続で下げたものの、外国人投資家の買い攻勢によって、下がりにくい相場が続いていることには変わりがない。

■4月以降「3回目の押し目」がやって来た

 この3カ月を振り返ってみると、急激な上昇の中で、日経平均の押し目といえば、4月5~6日の814円、6月7~8日の865円、そして今回の6月22~23日の793円下げの3回だけだ(ただし、今回が2日間で止まるかどうかはわからない)。

筆者の前回の記事「日経平均の当面のヤマ場は6月16日にやって来る」(6月12日配信)では、押し目のメドとして①強い相場では25日移動平均線のプラス1%、②平均的な相場では25日移動平均線まで、③本格的調整が入る場合は75日移動平均線まで、という3つの基準を挙げた。

 現在のところ、上述した4月から6月までの3回の押し目とも、最も高い①の押し目水準(25日移動平均のプラス1%)にすらタッチしていない(23日現在ではプラス1.98%)。ということは、今回の押し目は、迷わず「良い買い場」として対処すべきだろうか。

 ただ、今回は先物水準(シカゴ日経平均先物3万2635円)などを考えると、4月以降で初めての「3営業日連続安」の可能性がある。さらに、筆者に言わせれば「前2回とは違うという雰囲気」が漂っている。

 それは、ここまで下値を支えている外国人投資家の動向だ。6月の最新の実績を見ると、財務省ベースでは5351億円(11~17日)、東証ベースでも6414億円の買い越し(12~16日)となっている。ともに12週連続の買い越しだ。

■上値が重かった3万3000円台、強気派急増で逆に警戒感

 だが、買い越し額は両者とも前週より低下しており、大証の先物においては売り越しとなっている。確かに日経平均は「大きく下がらない相場」と言われている。だが、6月13日に3万3000円台に乗せてからは、13日を含めて立ち合い日数が8日間となった22日も3万3000円台で足踏みしたことで、上値が重くなっている状態を示していた。

 また、現段階での今年の高値である16日の3万3706円は前年比29.18%の上昇率となっており、出始めた高値警戒感に押されているとも言えた。しかも、平成バブル崩壊後である1990年の歴史的な戻り高値をきっちり越したことで、投資家の間には「これで2023年内に過去最高値の3万8915円を抜く」という強気意見も急に多くなっていた。これは逆に相場の警戒シグナルとも考えられ、「強気一貫」の筆者としても嫌な感じを受けていた。



 悪材料を挙げれば切りがないが、強気相場の裏で中国経済は思ったよりも元気がない状況が続いている。またアメリカでも、最近は7月のFOMC(連邦公開市場委員会)だけでなく、場合によっては9月の利上げの可能性も高まっていた。

 実際、「中央銀行ウィーク(12~16日)」における世界の中銀の金融政策会合の結果はどうだったか。今後のアメリカの利上げ継続が明らかになり、ほかの主要国の結果は日本を除いて「利上げ連発」だった。これは世界経済の失速を招きかねず、最近は別格の動きをしていた日本株にも影を落とすと考えられていた。

 そんな中で、日経平均がテクニカル面で当面の重要なフシとされていたザラ場安値である3万3089円(6月20日)を切ったとなれば、一斉に利益確定売りが出ても決しておかしくない。23日に一時下げが加速、3万2500円台まで急落したのはそうした下げだった。

 また、一部の噂にすぎないが、兜町では「次回の日本銀行の金融政策決定会合(7月20~21日)ではYCC(長短金利操作)の修正がありそうだ。しかも、現状の許容上限は0.5%から一気に1%になりそうだ」といった話を聞く。就任前後からの動向を追っていればわかるように、慎重な植田和男総裁がそんな乱暴なことをするはずもない。実際、10年物の国債利回りが0.36%程度と0.5%を下回っているときに、その必然性もない。

 さらに「安定的に物価上昇率2%を目指す」というのが今の政府・日銀の金科玉条だが、その大方針こそ変わらないものの、「2%の目標表現が2%超に変わる」などという夏の怪談ばなしのような噂まで出ている。まさに日経平均の急上昇が止まって、上値が重くなってきたタイミングであり、こうした売り仕掛け材料はこれからも出てきそうだ。

 では、今後の相場をどう考えればいいだろうか。先物に大量の売りが出たことで、日経平均は6月13日から維持していた3万3000円を割れた。だが、今回の下落はファンド筋などによる「先物の売り仕掛け」と思われる。



 つまり、配当権利落ち日(29日)が近づいたことで、買い建てていた先物を、配当が現実化するときに解消する動き、またはその売りを見越した形での売りだ。「外国人投資家が従来の買いスタンス変えてきた」と決めつけることは早計ではないか。

 しかもこうした行動は、ファンドが権利確定日をまたぐときに毎回繰り返す類いのものだ。また、先物から考えると売り要因となるが、現物側で考えると2023年3月期決算企業の配当金総額は過去最高の14兆円と推定されている。この半分以上が今回支払われることを考えると、先物の売りなど問題なく吸収されることになるとみる。

■当面の「買いの基準」はいくらか

 下落の分析の話が長くなったが、当面の日経平均はどうなるか。仮に26日の価格を23日と同じとして計算すると、上述の3つの基準に照らせば①25日移動平均線プラス1%なら3万2535円前後、②の25日移動平均線なら3万2213円前後となるが、②まで下がらずに12~13日に開いたマド(3万2638円~3万2517円)までで止まる可能性も十分ある。

 もし、ここを突破されて本格的調整が入った場合は、③の75日移動平均線の2万9690円前後を買い場と考えるだけだ。この3万円割れの水準まで下がらなくても、今年の「サマーラリー(夏の株高)」が不発で「夏枯れ相場」が訪れたとしても、買い方投資家には強い武器がある。

 つまり、好配当利回りでかつ低PBR(株価純資産倍率)である銘柄を、余裕を持って保有して、乗り切ればいいだけだ。「30年の眠りから覚めた今回の相場は、1年や2年では終わらない」との考えは変わらない。

 さて、最後に今週の材料だが、週間予定表を見渡して目につくのがIPO(新規株式公開)の多さだ。毎日途切れず11社となっている。そのほか、27日の日本の1~3月期資金循環統計は筆者が重要視している指標だ。

 同日はアメリカの5月耐久財受注や、4月FHFA(連邦住宅金融庁)住宅価格指数などの住宅関連指数、さらには6月コンファレンスボードの消費者信頼感指数と、同国の景気指数が盛りだくさんだ。

 また29日の同国の1~3月期GDP確報値や、30日の中国6月製造業・非製造業PMI(購買担当者景気指数)、アメリカ5月個人所得・個人消費支出(PCE)が重要だ。とくにPCEは、「今後のデータ次第」との発言を繰り返すジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長がどう判断するか、要注目である。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)







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