【完結】ダンジョンマスターは魔王の夢を見る〜ダンジョンマスターが最強のダンジョンを作るまで〜

及川ゴン之助

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第三章 強欲のダンジョン

第26話 お望みとあらば

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 そういえば、第二層にはボスを召喚スポーンさせていない。何故かと言うとボスモンスターがリザードマンとオークの均衡を保っている状況を一変させてしまうかもしれないからだ。

 代わりに第三層への入口は滝で隠したりしたが、まあリザードマンとオークの勢力が広がって第二層を埋め尽くすぐらいになれば第一層よりは脅威になるだろうから問題は無い。

「私が、模擬戦を?」
「ああ。俺たちに稽古をつけて欲しいんだ」
「ふむ。……そうですね」

 軍帽キチッと被り直して、ガブリエルは頷いた。

「お望みとあらば、いくらでも」





 ◆ ◆ ◆



「スケ方様にアレス様。どうぞ、お二方同時に」

 とりあえず観戦。がんばれー。

「ルールは死ななければ問題無し。スキルも全然オッケー。いいな?」

 それぞれ返事をする。ガブリエル対スケ方&アレスだ。

「『一閃式・飛魚』」

 空中に剣で弧を描きながら、敵へ一瞬で近づくスケ方。
 一閃、と名前がついているだけあり高速でガブリエルへ肉薄する。

「僭越ながら、あまりに遅い」

 だが完全に見切っているのか、つまらなそうな顔をしながらそう言って避ける。

「アレス様は少々気配を殺すというのが苦手なようで」

 スケ方が攻撃を仕掛けている間にガブリエルの後ろを取っていたアレスだが、手の甲で軽く弾かれただけで吹き飛んでノックアウト。

 あの巨体のアレスが、一瞬で吹き飛ぶ。恐ろしいな。

「一つ提案を。私がスキルを使用すれば私の敗北、という条件はいかがでしょうか」

 スケ方が骨を鳴らして、俺に確認を取ってくる。まあ別にいいんじゃない。

「では、そのように」

 とはいえ、一撃当たったらエンドで、しかも素早さを誇るスケ方の『一閃式』が鈍いとのお言葉。

 結果は明白だ。

 スラちゃんをヒョイと拾って、完全に気絶しているアレスへ近づく。

治癒ヒールを頼む」
「『治癒ヒール』」

 いいよー、と頷いたのか体を少しへこませてスキルを発動させたスラちゃん。

「『創造クリエイトただの水』」

 そしてアレスの体力が回復したところで水をぶっかける。起きろー。

『ム』
「へいへい、かもーん。レッツゴーファイト」
『うむ』

 目が覚めた瞬間起き上がって、周りを見たアレスは状況を理解してくれたらしい。

「スラちゃんはガブリエルにぶっ飛ばされたやつを治療する係な」

 本当は三対一で行きたかったが、それをするにはあまりに悠長がすぎた。
 スケ方がガブリエルに負けた。ここまで粘ってくれたことに感謝しなければ。

「この程度の戦力で魔王など」

 少し嘲笑混じりで、最後まで言い切らずそこでやめる。煽りスキル高い。

「落ち着いていくぞ」
『ああ』

 とにかく俺はアレスをサポート。剣を抜いて、ガブリエルへ走る。
 首さえ飛ばさなければ問題は無いだろう。

「『瞬殺拳』」
「ふっ、私に速さで挑むというのですか」

 アレスが高速で拳を振るったが、それでも遅いらしい。
 俺の最初の考えは、アレスの攻撃後の隙を俺が補うというもの。だけど、ダメだ。

 ガブリエルが早すぎて、知覚した瞬間にはそれは手遅れ、一歩遅い。

 なら、自分の感覚を信じて動くしかない。

「小癪、ですね」

 足を狙う。正面にガブリエルの足の影が見えたなら、すぐに真反対を切りかかるのだ。

 そうすると、相手のリズムを崩せる。

「『破岩拳』」
「『一閃式・栄光』」
「む……」

 まずは俺たちの動きを見極めるつもりだったのか攻勢には出てこなかったガブリエルだが、それは悠長。

 再生して戻ってきたスケ方の増援だ。

「『登り鯉』……!」

 今までずっと足を狙ってきた。なら、ここで不意をつく『登り鯉』。

 ――だが。

「それをお待ちしておりました」

 ニヤリと笑ったガブリエルに、俺の剣の軌道が変えられる。
 そしてその剣の方向は、アレス。

「アレス! 俺だ!」

 焦りの中発したよく分からない指示。だが、アレスは意図を汲んでくれた。

「『風拳』」

 俺の剣へ一拳する。

 それで剣の軌道がずれて直撃は避けたが、致命的な空白。

 ――ここまでか?

「『雲霧の闇ダークネス・ミスト』」

 俺では無い。しかし、俺から発動されたそれは、辺りを暗闇にした。

 駆ける。この瞬間を逃しては行けない。

「魔力の流れが掴めなかった……?」

 ガブリエルの声が聞こえた。そして俺がこの暗黒の霧から脱出した時、ガブリエルも同時に出てきた。

「隠し持っていた最後の牙、ということでしょうか。私は戦闘が得意な悪魔ではないので、あそこで奇襲をされたら少々手こずっていたと思いますが……終わりにいたしましょう」

 ああ、なるほど。俺のピアスだ。ライフ・スカル。

 ドクロ君がやってくれた。

 その霧は気配を感じにくくさせる効果でもあるのか、ガブリエルは気づかない。

「殺す気でいけ」

 親指と中指を擦り合わせて鳴らす。

「……ッ!」
「ガブリエルさん、油断は程々にしておけよ?」

 その合図と同時にスケ方とアレスが闇から飛び出した。
 さすがに身の危険を感じたのか、顔をしかめて回避の行動をとるガブリエル。
 だが、それだけでは終わらせない。

「『闇の蔓ダーク・ハント』」

 足にツタを絡ませる。
 個人的には最高に気の利いた魔法を使ったつもりだったが、絡みつこうとした時には既に消え去っていた。

 魔法への干渉だろうか。

「作戦自体はすばらしいかと。しかし、肝心の詰めが甘い」

 ガブリエルは徐々に自分のリズムへと二人を誘っていく。だが、俺とてただただ鑑賞しているわけではない。

 いつの間にか落としてしまっていた剣を拾う。

「行くぜー……」

 スケ方とアレスの演舞は完成していない。互いに互いを補い合うが、まだ足りないのだ。

 だが、ここに俺が入ることでそれは完全に完璧な剣劇が完成する。

「『決裂・烈火の戟』」

 スケ方とアレスのコンボの後に生まれる本当に一瞬の硬直。

 どうにもここで終わらせようとしていたらしいガブリエルだが、俺が割り込んでくるのを見た瞬間笑みを浮かべて一旦引く。

「ご主人様も参加するというのならば、話は別です……!」

 少し崩れている敬語を聞きながら、俺はいつものように最適化された世界に入り込む。

 ――だが。

 いつもの、心地いい全能感が全くない。確かめるためにガブリエルに切りかかると、いつもと同じ速度だ。

 ……なるほど、もうこの程度では満足できない体になってしまったらしい。

 アーサーといいグリフといい、この世界には強者が多すぎる。この程度の技で満足をしていたら、到底叶わないというものだ。

 首を狙って、一撃。

「『魔人顕現・死神の鎌』」

 多分、無意識だったんだろう。
 俺は本気で殺りに行ってたし、防衛本能のようなもの。

 ガブリエルも出した後に気づいたのか、渋い顔をしている。

 そして顕現した死神の鎌は、俺の剣を弾き、スケ方を真っ二つにして、アレスを吹き飛ばした。

 でも、止まらない。ここで勝っても気持ちよくない。

 ガブリエルに抱きつく。

「……なっ」

 ちょっと動揺。いいね、イける。

 そしてそのまま渾身の力を込めて首にかぶりつこうとして、ガブリエルにぶっ飛ばされた。

「……私の負けです。……それと、少し、驚きました」

 頬をポリポリとかいているガブリエルを見て、なんか勝った気がしないのは俺だけだろうか。





 ◆ ◆ ◆



「何を探しているのかな」
「手紙を」
「手紙?」
「ええ。知人に送ろうと思いまして」

 アレスたちが暮らしているゴブリンの巣でどうにも怪しい動きをしていたガブリエルに話しかけると、そんな返事が返ってきた。

 手紙、手紙。

 悪魔の手紙か……

「ちなみにどこへ?」
「……モンテテール・アドリアンへ」
「ふぅん」

 少し考えて、とりあえず創造クリエイト

「いいよ」

 とりあえず、警戒はしていない風を装う。
 さて、どう出るか。
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