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しおりを挟む何故、リオルドが学園生達を叱責したのだろう。
その感情が表情に出ていたようで、その当時の事を思い出したのか、興奮から僅かに頬を染めたティファが事細かにリスティアナ、コリーナ、アイリーンへと語ってくれた。
「その……っ、その学園生達は余りにも下品な噂話をされていたのですわ。ありもしない事をさも事実かのような口振りで、面白可笑しくお話する様はとても……、我が国の貴族とは思えぬ程……その、酷い噂話でしたので……詳細は省きますわね」
「ええ、大体は想像が着きますわ」
気遣い、言葉を濁すティファにリスティアナは苦笑し、コリーナは怒りを顕にし、アイリーンはこの国の貴族達の下品さに羞恥を覚えている。
「ありがとうございます……、リスティアナ嬢。それで、その、そのような噂話を喜んで話している学園生達の言葉に耐えきれなくなりまして、私が席を立ったと同時に先程の! スノーケア卿が近くまでいらっしゃってて……! あの美貌で、冷たい眼差しと口調でその噂話をしていた学園生達に口を開いたのです……!」
うっとり、と視線を細めてそう言葉を放つティファに、リスティアナ達は興味をそそられる。
いったい、あの人がどんな言葉を発したのか。
下品な噂話をしていた学園生達を叱責した、その当時のリオルドの気持ちはどんな気持ちだったのだろうか、とリスティアナは何故か考えてしまい、無意識に考えてしまっていた感情をそっと頭を振って頭の中から追いやる。
ティファは両手を胸の前で組んだまま、夢現のような心地で、リオルドの言葉を口にした。
「──自国の王族と誇り高きメイブルム侯爵家のご令嬢、お二人の下世話な噂話を嬉々として語るとは……この国の貴族の精神も地に落ちた物だ、と……! がっかりした、と! そう仰ってその場にいた学園生達の口を閉じさせたのです……!」
「──まぁ……」
「あくまでも、スノーケア卿はリスティアナ個人を庇うのでは無く、貴族としての矜恃を持て、と仰ったのね。配慮深さを感じられるわね」
コリーナが感心したようにそう言葉を零す。
コリーナの言葉に、リスティアナも同意して微笑みを浮かべると頷く。
タナトス領のスノーケア辺境伯の子息が、リスティアナ個人を庇うような言葉を口にすれば要らぬ噂話を再び呼び込んでしまう可能性がある。
その事を危惧し、配慮してこの国の貴族として恥ずかしい真似をするな、と愚かな貴族の子息と令嬢に対して注意をすると言う、面倒な事をしてくれたのだ。
見知らぬ振りだって出来る筈であったと言うのに、それを良しとせず、貴族としての振る舞いとしてどうなのだ、と学園生達を叱責してくれたらしい。
「リスティアナ嬢は、スノーケア卿とお顔見知りでしたのですね!?」
その当時の事を思い出したのか、興奮気味にそう言葉を紡ぐティファにリスティアナは「いえ……」と小さく言葉を紡ぐ。
「スノーケア卿とは、あまりお話する機会がありませんでしたので……親しくは無いのですが……」
リスティアナがそう言うと、ティファは更に興奮したように顔を赤らめて唇を開いた。
「それでは、スノーケア卿はリスティアナ嬢と親しくないにも関わらず、この国の貴族として、貴族としての在り方を説いたのですわ……! 流石、タナトス領を守る騎士を志して居られるお方ですわね……! それに先程も、リスティアナ嬢が倒れてしまわぬよう、素早く反応されてリスティアナ嬢をお助けするなんて……! 私、あの場で先程の光景を目にして一枚の絵画を見ているような心地でしたわ!」
きゃあきゃあと楽しげに話すティファに、リスティアナはつい苦笑してしまう。
だが、ティファの言葉にコリーナもアイリーンも同意するように頷いた。
「確かに、リスティアナが倒れてしまわないように即座に反応していたスノーケア卿は素晴らしかったわ」
「ええ、ええ……! 絵になる二人、とはまさにこの事かと思いましたもの」
「──もう、アイリーン嬢は兎も角……コリーナ、貴女からかい半分でしょう?」
リスティアナが瞳を細めてそう告げると、コリーナは悪びれせず「あら、バレてしまったわ」と楽しげに笑った。
ティファはふう、と息を着くと今まで興奮して話してしまったからか喉が渇いてしまったのだろう。
一口グラスの中に入っていた水を飲み込むと喉を潤してから再び唇を開いた。
「──あの日は、一先ずそれで品の無い噂話は収まったのですが……また本日、殿下がナタリア嬢をお送りされていらっしゃったので……」
「ええ、そうね。私と殿下の婚約が解消された事も広まっているから……再び嫌な噂話が広まるでしょうね」
そこでリスティアナは一度言葉を区切ると、アイリーンとティファ二人に視線を向けて唇を開いた。
「──これから、もしかしたら私の立場が悪くなる可能性があるの……。だからお二人とは暫く離れて学園生活を送らせて貰う形になるかもしれないのです」
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