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しおりを挟む次から次へと明らかになる情報に、本当にヴィルジールは何も調べもせず、どうにかなるだろうと楽観的に考えていたと言う事が傍目からも察してしまえる程で、リスティアナは自国の王太子であるヴィルジールがここまで愚かであったとは、と瞳を伏せる。
それはリオルドも同じらしく、リオルドも額に手を当てて天を仰いでいる姿が視界に入ってしまい、リスティアナは自分達が大人になった時にこの国を導いて行く人物がヴィルジールである事に一抹の不安を覚える。
(けれど……ウルム国の王女殿下が殿下とご成婚されるのであれば……大丈夫ね……)
リスティアナとリオルドは何処か互いに仲間意識が芽生えたようにお互い視線を交わすと励まし合うように強く頷き合った。
「──さて、タナトス領の件もありますし……バルハルムド殿、何処かで落ち着いてお話を致しましょう。……此度の件について、落とし所を決めなければなりませんでしょう?」
ゆったりと周囲を見回したティシアがそう提案すると、バルハルムドは「うむ」と小さく言葉を返し、リスティアナやリオルドにちらりと視線を向けた。
「そのようにした方が、良さそうだな……。部屋を用意させよう。元凶であるナタリア・マロー嬢、ヴィルジール、そしてオルファ・メイブルム卿は共に。……リオルド・スノーケア卿、タナトス領については後ほど声を掛けるのでその際に来てくれ」
「──かしこまりました」
「リスティアナ・メイブルム嬢も、此度の一件に無関係では無い。タナトス領に関しては侯爵が対応中だ。タナトス領の件に関しての話をする際に改めてリオルド・スノーケア卿と共に呼ぶので共に来てくれ」
「仰せのままに」
バルハルムドはテキパキと周囲に指示を出すと、ウルム国から来たティシアと、使節団の代表を務めたオルファ、そしてヴィルジールとナタリアを伴い、会場のフロアを横切って行く。
ちらり、とリスティアナに視線を向けたオルファが「また後で」と言うように唇を開き、リスティアナに向かって手を振ると、そのままバルハルムドの後を追って背を向けた。
ちらちら、と未だにリスティアナへと視線を向けるヴィルジールに、リスティアナは視線を外すと近くに居たリオルドへと話し掛ける。
「──スノーケア卿。どうやら我々も後ほど陛下よりお声が掛かるようですが……何処かでお声が掛かるまで待ちましょうか?」
「そう、ですね……。このままこの場に居ると声を掛けられてしまいそうです」
リスティアナの言葉に、リオルドは苦笑を浮かべると、じりじりと距離を詰めて来る周囲の学園生達を振り切るように衛兵に声を掛けた──。
衛兵に、パーティー会場にある客間で待機しているので、陛下より声が掛かった際には教えて欲しいと言う旨を伝え、リスティアナとリオルドは客間へと一旦場所を変えていた。
あの場所で、ナタリアの愚かさ、そしてどうやら王家はナタリアをとうに見切っていた、と言う事を察した学園生達や、学園生の家族達がリスティアナやリオルドに接触しよう、とじりじりと近付いて来ていた。
だからこそ、そのような煩わしさから遠ざかる為に客間に移動して来た二人だったが、移動する為にフロアから出て行く時も纏わり付く視線の多さに辟易としていた。
どさり、とソファに力無く腰を下ろしたリオルドが、疲れたような表情でリスティアナに視線を向けた。
「……リスティアナ嬢は、全て承知の事だったのですか……?」
リオルドの拗ねたような声音に、リスティアナはきょと、と瞳を瞬かせると苦笑する。
「全て、ではございませんわ……。ナタリア嬢が妊娠を偽っていた事も知りませんでしたし……。私は、ウルム国の王女殿下が我が国の王太子である殿下と縁を結びに来るらしい、と言う事くらいしか……」
「リスティアナ嬢も他は全くの初耳だったのですね……それなのにお顔に出さず表情を崩さない様は流石です」
「あら、ありがとうございます。でも……次々と語られる事実にとっても動揺していたんですのよ?」
困ったように笑顔を浮かべ、肩を竦めるリスティアナに、リオルドが笑顔を返した時。
リスティアナとリオルドが休む部屋の扉の向こうがバタバタと慌ただしくなった。
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