「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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一章

4話

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 コンコン、と扉をノックする。

「お待たせしてしまい、申し訳ございません。ウェンディです」
「ああ、呼んでいたんだったな。入れ」
「失礼します」

 中から、素っ気ない父の声が聞こえ、ウェンディはそっとドアノブに手を伸ばし、扉を開けた。

 ガチャリ、と音を立てて扉が開き、廊下から室内を見たウェンディは、そっと目を伏せた。


 室内には、自分の父親であるホプリエル侯爵と、その横には妻であり、母親の侯爵夫人。
 そして、何故かウェンディと専属護衛騎士の魔法契約を結んだフォスターが、隣にエルローディアを座らせてソファに並んで座っていた。

 そこは、エルローディアの場所は、本来であればウェンディが座る場所だ。
 だが、ウェンディが姿を現したと言うのに室内の誰もエルローディアを咎めるような事はしない。

 それどころか、部屋の入口で突っ立っているウェンディに怪訝な顔をして、侯爵が「早く座れ」とばかりに顎をしゃくった。

 ウェンディはフォスターとエルローディアの姿を視界に入れぬよう、ぽてぽてと歩き、彼らとは少し離れたソファに一人で腰を下ろした。
 すぐにウェンディの前に温かい紅茶が入ったカップが置かれて、使用人はすぐに部屋から退出した。

 室内に、使用人が居なくなってから、侯爵が重々しく口を開いた。

「十日後、四年に一度の祭典がある。そこで、ウェンディとフォスターには魔法演術を行ってもらうが……分かっているな?」
「──はい、お父様」
「私は、問題ございません侯爵」

 ウェンディとフォスターが同時に侯爵に言葉を返す。
 だが、フォスターの声は僅かに嘲りのような物が含まれていて。
 ウェンディはちらり、とフォスターを見やると、フォスターは不遜な態度で、まるで小馬鹿にするようにウェンディを見返していた。

「私は四年前より魔力も魔法の腕も上がっております。……ですが、ウェンディ様は大丈夫なのですかね? 明らかに四年前よりも魔力も魔法の腕も落ちています」
「……ホプリエル侯爵家として、正統な血筋のウェンディと、その専属護衛騎士のフォスターしかこの大役は務められん。ウェンディの兄は今、仕事で国外に赴いているし、エルローディアは我が家の正統な血筋では無い。ウェンディとフォスター、お前達しかいないのだから、恥を晒さぬようにしっかりとやり遂げなさい」

 恥を晒さぬよう──。
 そう話した侯爵の視線は、ぴったりとウェンディに定まっていた。

 侯爵も分かっているのだ。
 ウェンディの魔力も、魔法の腕も、年々、年月が経つにつれて落ちていっている事に。
 だが、今のホプリエル侯爵家に祭典で魔法演術を行える人物は、ウェンディとフォスターしかいない事は。

「ウェンディ。お前は今日からフォスターと共にしっかりと魔法演術の鍛錬をしなさい。訓練場を使い、朝から晩までしっかりと励め」
「かしこまりました、お父様」
「承知しました、侯爵」

 フォスターは胸に手を当て、余裕気に頷いて見せた。
 だが、ウェンディは。
 たらり、と背中に汗が伝うのを感じて、静かに目を閉じたのだった。


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