「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

文字の大きさ
37 / 84
一章

37話

しおりを挟む


 ウェンディの叫び声が聞こえたのだろう。

「──ウェンディ!!」

 遠くからヴァンの叫び声が聞こえ、けたたましい足音が近づいてくる。

「どうしたウェンディ! 無事か!?」
「ヴ、ヴァン……っ」

 ヴァンは、部屋に駆け込むなりびしょ濡れになったウェンディの姿に目を見開く。
 そして、室内が水浸しになっている事を確認すると、慌てて魔法を発動した。

「──風よ!」

 室内を乾かそうと、発動した風魔法。
 魔力の調整も完璧なはずのヴァンの魔法は、だがしかし物凄い突風となって室内を荒れ狂う。

「な、何だこれは!?」
「ひええっ」
「──っ、ウェンディ! こっちに!」

 自分が発動した魔法の威力に驚愕したヴァンだったが、風に煽られ悲鳴を上げているウェンディに気が付くと、慌ててウェンディを抱きしめる。

 二人とも、自分が発動した魔法の威力に唖然としてしまっていて。

 大慌てでこちらに向かってくる複数の足音には気が付かなかった──。


◇◆◇


「何故だ、何故だ何故だ……っ!!」

 フォスターは、怒り狂い近くにあった椅子を蹴飛ばした。

「何度やっても、エルローディア様と専属護衛騎士契約が結べない!!」

 契約に失敗する度に、エルローディアや侯爵からは失意の目を向けられ、責められる。
 フォスターは、もう何度目になるかも分からない契約の失敗に、床に座り込んだ。
 契約の拒絶なのだろうか。
 体中は激しい痛みを伴っている。

 フォスターと同じく、体の痛みに呻きながら床に這いつくばっていたエルローディアが、侯爵に体を支えてもらいながらゆらり、と立ち上がった。

「──フォスター。あなた、一体どういうつもりなの……? 何度、私を拒むのよ……っ、このままあなたと契約出来ないままじゃあ、私は貴族達のいい笑い者よ!」
「しっ、しかしエルローディア様っ、私には拒む気持ちなどっ」

 フォスターが言葉を全て言い終える前に、侯爵が苛立ちを顕にした視線を向ける。
 そして、遮るように叫んだ。

「言い訳は結構だ、フォスター!! これ以上エルローディアに惨い仕打ちをしたら分かっているだろうな!? お前を実家の商会に突き返す!」
「こっ、侯爵……! お待ちください、本当に私は──っ」
「うるさい! 卑しい商人の血筋のくせに! 私の娘をこれ以上傷付けるようであれば、お前を我が家の騎士から解雇する! 騎士隊にも戻れると思うなよ!」
「あんまりです、侯爵!!」

 フォスターの訴えなど気にも止めず、侯爵はエルローディアを支えながら鍛錬場から出て行ってしまった。

 二人の背中を唖然と見つめていたフォスターだったが、ふつふつと怒りが込み上げてくる。

「卑しい、商人の血筋、だと……? 子供の頃、俺を助け、雇ってくれたのはあなたじゃないか、侯爵……っ」

 そして、フォスターはウェンディの優しさと愛らしさに惹かれ、彼女の役に立ちたい。彼女をずっと傍で守りたい、と思うようになった。
 たまたまフォスターには魔法と剣の才能があり、そのまま鍛錬をして、侯爵家所属の騎士になれたのだ。
 そうして、騎士隊にも入隊して。
 その後、ウェンディと想いが通じ合って──。

 そこまで考え、思い出したフォスターはゆらり、と立ち上がる。

「……そうだ、ウェンディ様。ウェンディ様と俺は、契約出来たんだから……全部エルローディア様がいけないんだ」

 鍛錬場の出口に向かって一歩一歩、しっかりとした足取りで歩く。

「ウェンディ様なら、ウェンディ様ならきっと俺を見捨て、ない。俺を愛しているのだから……。ウェンディ様は、どこだ? どこに行った……」

 そして、フォスターは思い出す。
 ウェンディがこの侯爵家から追い出される時。

「──ヴァン・ハーツラビュル! お前か!」

 高熱に倒れたウェンディを攫ったのは、自分の騎士隊に所属しているヴァンだ。
 それを思い出したフォスターの目的は、ただ一つ。

「やっぱり、俺にはウェンディ様しかいないんだな……ふっ、ふふっ、仕方ない。俺が直々に迎えに行ってやる!」

 もしかしたらウェンディは、迎えに来た自分を見て感動に咽び泣くかもしれない。
 ウェンディがどうしても、と泣くなら。
 仕方がないから結婚だってしてやっても良い。
 あんな幼い子供のようなウェンディを、女としては見れないが、エルローディアとの関係は続ければいいのだ。

 そう、心の中で考えたフォスターは名案だとばかりに高笑いをする。

「ああ、こうすれば良い。そうだ、ウェンディ様だって俺と結婚できるなら、喜ぶはず……!」

 フォスターは自分勝手な事を考えながら、ウェンディを攫ったヴァンに会いに行く事にした。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

義兄のために私ができること

しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。 しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。 入り婿である義兄はどこまで知っている? 姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。 伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚

里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」  なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。  アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。

【完結】広間でドレスを脱ぎ捨てた公爵令嬢は優しい香りに包まれる【短編】

青波鳩子
恋愛
シャーリー・フォークナー公爵令嬢は、この国の第一王子であり婚約者であるゼブロン・メルレアンに呼び出されていた。 婚約破棄は皆の総意だと言われたシャーリーは、ゼブロンの友人たちの総意では受け入れられないと、王宮で働く者たちの意見を集めて欲しいと言う。 そんなことを言いだすシャーリーを小馬鹿にするゼブロンと取り巻きの生徒会役員たち。 それで納得してくれるのならと卒業パーティ会場から王宮へ向かう。 ゼブロンは自分が住まう王宮で集めた意見が自分と食い違っていることに茫然とする。 *別サイトにアップ済みで、加筆改稿しています。 *約2万字の短編です。 *完結しています。 *11月8日22時に1、2、3話、11月9日10時に4、5、最終話を投稿します。

侯爵家を守るのは・・・

透明
恋愛
姑に似ているという理由で母親に虐げられる侯爵令嬢クラリス。 母親似の妹エルシーは両親に愛されすべてを奪っていく。 最愛の人まで妹に奪われそうになるが助けてくれたのは・・・

『悪役令嬢』は始めません!

月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。 突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。 と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。 アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。 ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。 そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。 アデリシアはレンの提案に飛び付いた。 そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。 そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが―― ※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ
恋愛
 エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。  社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。

初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。予約投稿済みです。

処理中です...