「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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一章

44話

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 犯人が捕らえられていると言う隊舎にやって来たウェンディとヴァンは、隊舎の荒れ果てた姿に目を丸くした。

 隊舎の中からは、未だに戦闘音が聞こえてきている。
 ヴァンは隊員を叱責した。

「フォスター隊長が捕まらないのなら、どうして騎士隊を纏める副団長や団長に助けを求めなかったんだ!」
「そ、それがっ、フォスター隊長に必ず自分を呼べ、と言われておりまして……っ、我々騎士隊を纏める団長や副団長には絶対に助けを求めるな、と……!」
「あの人は自分の見栄を優先したのか!? 愚かな事を……! 隊員の多くが傷を負っては隊が成り立たない! ウェンディ、君は離れた場所で待機を──」
「私も一緒に行くわ! 魔力も、魔法の力も戻ったもの! きっと、ヴァンの助けになると思う!」

 ウェンディはそれだけを言うと、止めるヴァンの声を無視して隊舎に向かって駆けて行く。

「ウェンディ……っ! ああ、くそっ! 言い出したら聞かないんだよな……っ」
「ハ、ハーツラビュル卿、あちらの美女、大丈夫でしょうか!?」
「ウェンディなら大丈夫だ。ウェンディの魔法の能力は俺より遥かに上だからな」

 ヴァンも、ウェンディを追いかけ隊舎に向かって駆け出した。
 その後ろ姿を見ながら、隊員は「えっ」と間抜けな声を出してしまう。

「あ、あんなに美人で可憐な人がハーツラビュル卿より強い……? そ、そんな馬鹿な……」

 嘘だろう、と呟きつつ、隊員もウェンディとヴァンの後を追って、隊舎へと向かった。




 ウェンディ達が居なくなった事を確認したフォスターは、こっそりと建物の影から出てくる。

「ウェンディ様が、あの男より強い……? 嘘だろう? 魔法の腕が素晴らしかったのは、子供の頃の話で……」

 フォスターは、痛む体を無視し、魔法を発動してみた。
 以前より明らかに魔法発動までの時間も、威力も落ちている事に気づいたのは、ヴァンの伯爵家でヴァンと対峙した時。

「爆ぜろ」

 やはり、フォスターの声に呼応して魔法が発動したが、明らかに発動までのタイムラグと、威力は目に見えて落ちている。

「どうしてだ……何故、俺の力が落ちている……。それなのに、どうしてウェンディ様の力が上がっている、など……」

 確かに、専属護衛騎士契約の恩恵はある。
 契約の恩恵により、互いの能力は底上げされる。

 だが、これでは──。

「これでは、ウェンディ様と契約する前に戻ってしまったようなものだ……。どうして……契約後も、俺は魔法の鍛錬を続けたと言うのに。どうして契約前の力しか出せない!?」

 フォスターは、自分の両手を見下ろし「どうなっているんだ!」と叫ぶ。

 だが、隊舎の近くに人が集まり始めている。
 暴れている犯人の騒ぎが大きくなってきているのだ。
 王都民が何事だ、と不安そうに集まってくる姿を見て、フォスターは彼らに向かって振り向いた。

「騒がせてしまい、申し訳ない。犯人はすぐに大人しくさせるから安心してくれ!」

 フォスターの言葉に、集まった民達はほっとしたような顔をする。
 そして、そこかしこから「あれはフォスター隊長では」や「国随一の騎士が対応してくれるなら安心だ」などと声が聞こえてくる。

 フォスターは痛みを顔に出さぬように気をつけながら余裕そうな笑みを浮かべ、ゆっくりと隊舎に向かって行った。


 群衆の向こう側では、隊舎での騒ぎを聞き付け、野次馬に来た貴族達や、物陰に隠れて騒ぎを見守るエルローディアの姿もあった。



「離せ! 離さねぇなら全員殺すぞ!」

 隊舎の中に足を踏み入れたウェンディは、数人の隊員に押さえ付けられても尚抵抗し、暴れる犯人の姿を見つけた。

「ウェンディ……! 一人で先に進まないでくれ、相手は極悪人だぞ!?」
「ご、ごめんなさいヴァン……。でも、何だかあの犯人……」

 ウェンディは、暴れる犯人の姿を見て、痛々しそうに顔を歪めた。
 隊員に拘束され、攻撃魔法を当てられ、犯人の体はボロボロだ。

 だが、ウェンディはそれ以上に犯人が何かに苦しんでいるように見えて、足を一歩踏み出した。

「──ウェンディ、近づくな! 俺が捕縛する」
「待って、待ってヴァン! あの人、何だか何かに苦しんでいるように見えるの」
「苦しむ……? そりゃあ、隊員達の攻撃魔法を食らってるし、体が痛むのは当然だと……」
「違うの! ヴァン、あの人を完全に拘束できるかな? 痛みの元を聞いてみないと……」
「痛みの、元……? 抵抗出来ないように拘束は、出来ると思うが……」

 ウェンディの言葉に、ヴァンは不思議そうにしつつ、それでもその提案を断るつもりはない。

 ヴァンは自分を呼びに来た隊員にウェンディを頼むと告げ、暴れる犯人に近付いていく。
 ヴァンの足音に気付いたのだろう。
 犯人は勢い良く振り向くと、ヴァンに向かって攻撃魔法を繰り出そうとした。

「──燃えろ!!」
「凍れ」

 ヴァンに向かって、炎の攻撃魔法が放たれたが、ヴァンは落ち着いた様子でそれを一瞬で凍らせ、無効化する。

「──っ!?」

 暴れていた犯人は、明らかに今までの隊員よりも遥かに力の持つヴァンを見て、顔を真っ青にした。
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