「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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一章

60話

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「──ひっ」
「どうして、俺の名前ではなく、あの男の名前など……ウェンディ様が思っている相手は俺でしょう? すみません、ウェンディ様のお気持ちを裏切るような真似をして……だけど、俺はもう目が覚めました。俺が本当に好きなのは、愛しているのはウェンディ様だけです」

 つらつらと気味の悪い事を言い続けるフォスターに、ウェンディの鳥肌が止まらない。

 ウェンディは、フォスターを睨み付けながらきっぱりと言い切った。

「目が覚めたのは、私の方だわ。幼い頃から盲目的にあなたを慕っていたけど……わ」
「──っ、その言葉は……っ」
「どいて、フォスター。じゃないと、怪我をするわよ」
「はっ! ウェンディ様が俺に怪我をさせる!? ご自分の貞操を心配した方がいい! きっと今頃はヴァン・ハーツラビュルもエルローディア様とよろしくやっていますよ!」
「──何ですって!?」

 にたり、と嫌な笑みを浮かべたフォスターにウェンディは怒りで目の前が真っ赤に染まる。

「警告はしたわよ、フォスター! ──吹き飛ばせ!!」
「──ぎゃっ!!」

 怒りに満ちたウェンディの大きな声が部屋に響いた瞬間、ごうっと突風がフォスターを吹き飛ばす。

 反対側の壁に吹き飛ばされたフォスターは、強かに背中を打ち付け、そのままどさりと床に落下した。

 怒りでごうごうと目の前が真っ赤に染まる感覚のまま、ウェンディはベッドから降りてフォスターに向かって手のひらを突き出す。

「もう許せないわ。──拘束しろ、絶対に逃げ出せないように!!」
「ウ、ウェンディ様! ──ぎゃっ!!」

 ウェンディの声に呼応し、しゅるしゅると蔦がフォスターの体を縛り、声を発せないように口元まで蔦が覆う。
 全身を植物の蔦で覆われたフォスターは、もぞもぞと芋虫のように動くが、ウェンディはすぐに踵を返す。

「ヴァンを助けなきゃ……!」

 フォスターが言った事が本当なのであれば、今頃ヴァンはエルローディアに襲われているかもしれない。
 紳士的なヴァンは、エルローディアに手こずる可能性がある。

 ウェンディが走り出そうとした瞬間──。

「ウェンディ! 無事か!?」
「ヴァン!」

 扉を物凄い勢いで開けたヴァンが、部屋に駆け込んで来た。
 ウェンディも扉に向かって走ろうとしていたため、すぐ目の前にヴァンがやってきて。
 そして、その勢いのまま真正面からウェンディはヴァンに抱きしめられた。

「あいつっ、あいつはウェンディ!? フォスター隊長が来たんだろう!? 何もされていないか!?」
「だ、大丈夫よヴァン。フォスターならもう拘束して、あそこに」
「──あれが、フォスター隊長?」

 ウェンディが指差す方向に顔を向けたヴァンは、呆気にとられたようにぽかん、と口を開ける。

 フォスターは息が出来るくらいの隙間を開けた状態で、植物の蔦に体をぐるぐる巻きにされて床に転がされている。

「あの魔法は……ヒュフースト様が発動していた……? 真似をしたのか?」
「え、ええ。頭がカッとして……あまりよく覚えていないのだけど、ヒュフースト様の魔法のように、植物の蔦は拘束に便利そうだったから」
「そうか……流石ウェンディだな。昔から魔法の能力が高かった。それに、怪我も無さそうで安心したよ」

 ほっとしたようなヴァンの様子に、ウェンディははっとした。
 そうだ、フォスターが言っていたが、ヴァンの部屋にはエルローディアが潜り込んだのではなかったのだろうか。

「ヴァン! あなたも大丈夫!? フォスターが言っていたわ、あなたの部屋にエルローディアが向かったって言ってたわ!」
「ははっ、ウェンディ。俺の職業を忘れた? 騎士だから人の気配には敏感なんだ。部屋に入ってきた瞬間に目が覚めたよ。目的が何か分からなくて寝た振りをしたんだが……。あんな姑息で、下品な真似を……」

 ヴァンはその時の事を思い出したのだろう。
 不快感を顕に、言葉を続けた。

「エルローディア嬢を拘束して、尋問してウェンディの所にはフォスター隊長が行っている事が分かった。エルローディア嬢を気絶させてすぐに来たんだが……凄い音が聞こえたから心配した。ウェンディの魔法だったんだな」
「そ、そうなの……。あっ! どうしよう、大きな音を立ててしまったから、ナミアとヒュフースト様が起きてしまっているかも!」

 すぐに謝りに行かなきゃ! とウェンディがヴァンの手を取り、振り返った瞬間。

「ナミアと言うメイドなら、ぐっすり眠っているぞ。眠らせた」

 ウェンディの部屋の扉に、すらりとした長身の影がある。
 その人物は、ヒュフーストで。

「お、お騒がせして申し訳ございませんヒュフースト様!」

 ウェンディとヴァンは慌ててヒュフーストに駆け寄った。
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