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一章
61話
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翌朝。
ウェンディとヴァン、そしてナミアはヒュフーストの邸玄関に集まっていた。
三人の傍には、拘束されたままのフォスターとエルローディアが猿轡をされたまま、もぞもぞと床を蠢いている。
「ほんっとうに信じられません! 人として終わっていますわ、お嬢様!」
フォスターとエルローディアがこんな状態になっている事を、ナミアに説明したウェンディとヴァン。
二人の話を聞いたナミアは、ぷりぷりと怒り心頭な様子で、フォスターとエルローディアの悪行を罵っていた。
「こんなのっ、こんなの犯罪です! ヴァン様、王都に戻ったら、騎士隊に報告して突き出してしまいましょう!」
「ああ、そのつもりだよナミア。フォスター隊長の蛮行は、決して許されるものではない」
「でも、ヴァンも酷い目に遭ったわ。エルローディアの方が私は許せない」
「俺は……、男だし。単純な腕力では令嬢のエルローディア様にどうにかされる事はないよ。……だけど、許せないのはフォスター隊長だ。女性に対して……しかも、俺の大事な人に対してこんな事……っ、到底許せる訳がない」
ウェンディとヴァンの言葉と怒気に恐れ慄いたフォスターとエルローディアは必死に許しを乞おうとしたが、声を出せない二人はくぐもった声しか出せていない。
そこに、玄関にやってくる足音が聞こえた。
「みな、早いな。もう準備は出来たのか?」
「ヒュフースト様、おはようございます」
「昨夜はお騒がせしてしまい、すみませんヒュフースト様。あれからしっかり睡眠は取れましたか?」
ウェンディとヴァン、二人に謝罪をされたヒュフーストは、満足そうに口元を綻ばせる。
「ああ、心配ない。しっかり眠ったさ。さて、準備が出来たなら王都に戻るぞ」
「分かりました、よろしくお願いしますヒュフースト様」
「うむ。ウェンディとヴァン、私と手を」
すっと差し出されたヒュフーストの手に、二人は同時に己の手を重ねた。
「転移先はヴァンの家だな? 二人とも、その邸をしっかりと思い浮かべてくれ」
「分かりました」
「問題ないです」
「よし、では転移する」
ヒュフーストがそう告げるなり、ウェンディ達の周りにぱっと光が柱のように出現する。
その光の柱は、ウェンディ達を丸く囲っていて。
光の柱が徐々に明るくなり、目を開けていられない程の光量を放つ。
そして、その光が収まった時には、その場には誰の姿もなくなっていた──。
◇
一瞬で、周囲の光景が変わる。
ウェンディ達が転移したのは、ヴァンのハーツラビュル伯爵邸の正面玄関の目の前だった。
「──凄い凄い! ヴァンの伯爵邸の前だわ!」
「凄い……本当に転移が……こんな魔法が実在するなんて……」
二人が驚く様子に、ヒュフーストはどこか得意気にふん、と鼻を鳴らしている。
だが、同じように邸前に転移し、邸の様子を伺っていたナミアが一番に異変に気が付いた。
「お嬢様……、ヴァン様っ、お邸の様子が変です! すぐに中に入りましょう!」
ナミアの慌てた声に、ウェンディとヴァンはお互い顔を見合わせて、すぐに駆け出した。
「ヒュフースト様! 邸内を確認してきます! ナミアと一緒に待っていてください!」
「ナミア! 危険かもしれないからそこで待っていて!」
二人同時に駆け出す後ろ姿を心配そうに見送っていたナミアだったが、ゆったりとした足取りで歩き出すヒュフーストにぎょっとした。
「ヒュフースト様、お待ちください! 危険かもしれず──」
「誰が私に危害を加えられると思っているんだ? 私より能力の高い賢者がいたら、ぜひ見てみたいものだ」
「た、確かに……それはそう、ですね……?」
ヒュフーストの言う事は尤もだ。
この国の誰が、ヒュフーストに危害を加える事が出来ると言うのか──。
絶対的な自信を持って歩いて行くヒュフーストに、ナミアも彼の後に続いた。
もちろん、拘束されたフォスターとエルローディアも、何やらヒュフーストの魔法で地面を引き摺られ、着いて来させられていた。
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