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窓の外を何の気なしに見詰めて居たクォンツは、山中に魔法を発動した時のような光がぱっと輝いたのを視界に入れてその場に立ち上がった。
「──クォンツ、?」
「どうしました?」
突然立ち上がったクォンツに、同じテーブルについていたクォンツの父親とウィルが不思議そうに瞳を丸めて声を掛ける。
「……山中、で……誰かが魔法を使用した、と思います……」
「それは本当か?」
「もしや、お二人が襲われた魔物と言う存在でしょうか?」
クォンツに続き、父親とウィルも窓際へと歩いて来て同じように窓から外を見詰めるが、クォンツが行っていたような魔法の光と言う物は見えない。
あれから。
ウィルが、アイーシャの父親である可能性がある事をクォンツは自分の父親へと話していた。
どうすれば良いのか、記憶を失っているウィル本人に娘が居ると言う事を知らせた方が良いのだろうか、と悩んだクォンツは父親に相談していたのだが、父親の答えは「否」であった。
十年間、独りで妻の墓守を続け、この地でひっそりと暮らしていたウィルに全てを話す事は酷だろう、と言うのが父親の考えだった。
無理に真実を話して聞かせ、その結果記憶が戻ればまだ良いが、記憶も戻らず精神的に負荷を掛けるだけの結果になる事を懸念していた。
クォンツの怪我も、大分快方に向かっている。
父親に関しては既に怪我は完治しているようで、後はクォンツの怪我の治りを待って、この場所を後にする予定だ。
長く滞在するでも無く、一時的に助けられこの家に置いて貰っているだけ。
それを考えると、無理に話して精神的に不安定になってしまったらこの家を離れる事に不安が残る。寧ろ、この家を離れると言う選択を取れなくなる可能性がある。
その為に、クォンツの父親は一度王都に戻り、医師の意見を聞いてから再びこの地を訪れようと言う考えだった。
「──もし、あの魔物が再びあの場所で暴れていて……。もし万が一誰かが襲われていたら……」
「それは助けてやらんとなぁ」
ぽつり、と呟いたクォンツの言葉に父親が至極当然と言うように言葉を返す。
「……父上もそう思います?」
「ああ。もし、俺達の国の領民が襲われていたら大変だ。……場所が遠い為、急いで向かってももしかしたら、と言う可能性はあるがあのような魔物を放置しておけんだろう」
「──ええ。今は父上もいらっしゃいますし……処理しに行きますか?」
クォンツの言葉に、父親がこくりと頷くと近くの壁に立て掛けていたクォンツが扱う長剣よりも一回り大きい剣を手に取る。
「ああ、処理しよう。毒霧にだけは気を付けるようにな」
「分かりました。──ウィル殿」
クォンツも父親の言葉に頷き、自分の長剣を手に取ると腰の剣帯に固定してウィルに視線を向ける。
すると、ウィルもいそいそと外出の準備をし出していて、クォンツと父親がぎょっと目を開く。
「ウィ、ウィル殿……? 何をして……」
クォンツの父親の言葉に、ウィルはぱっと顔を上げると自信満々の顔で二人に向かって唇を開いた。
「私も、お二人程ではないと思いますが、魔法は使えます。あの場所で魔物が出ているなら、こちらにも来てしまう可能性がありますから……! 魔物はしっかりと討伐しましょう! ご一緒しますよ!」
ウィルは、自分の胸をとん、と叩き自信満々にそう言葉を告げると躊躇う二人を置いて必要最低限、外出の準備を整えると玄関の扉に向かって足を踏み出した。
クォンツと、アイーシャが数週間振りに顔を合わせるのももう少し。
そして、アイーシャとその父、ウィルバートが十年ぶりに顔を合わせる事になるまであと少しとなった。
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