【完結】冷酷廃妃の誇り-プライド- 〜魔が差した、一時の気の迷いだった。その言葉で全てを失った私は復讐を誓う〜

高瀬船

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「──公爵、?」
「それは一体どう言う事だ、キシュート」

 クリスタの戸惑いが含まれた声と、眉を顰め追求するようなギルフィードの言葉。
 キシュートは一度笑顔を浮かべて誤魔化すと、落下して壊れ、破片が周囲に散らばったシャンデリアに視線を向けた。
 そしてその後クリスタにちらりと視線をやり、キシュートの意図を汲んだクリスタは衛兵に指示を出した。

「直ぐに片付けなさい!」

 クリスタの良く通る凛と透き通った声に、衛兵達は短く返事を発し、ぱたぱたと使用人達と共にフロアに落下したシャンデリアを片付け始める。

 そしてクリスタは周囲をぐるり、と見回した後、「続きを楽しんで」とだけ言い残し、壇上に戻って行く。
 その場に一人残ったバズワン伯爵だけは何故か悔しそうに顔を歪めていたが、クリスタはその姿を一瞥しただけでバズワンに声を掛ける事無く背を向けた。

 その後をキシュートが続き、最後にギルフィードが続く。

「──……」

 ギルフィードは周囲に視線を巡らせた後、最後にバズワンを見て目を細めたが特に何かを発する事無く、そのままクリスタの後を追った。





 王宮の庭園。

 あれからクリスタとギルフィード、キシュートは三人で夜会会場から離れ、会場外の庭園に移動した。

 ざわざわとクリスタに向けられる多くの貴族達の胡乱な目。
 ソニアが口にした言葉を全部嘘、だとは信じられないのだろう。
 そんな不躾な視線を注がれ、クリスタは嫌気が差して場所を移した。

 そして、場所を移動したクリスタにギルフィードとキシュートは着いて来ていたのだが。


 庭園の椅子に腰掛けたクリスタはじとっとした目で二人を見やった。

「……貴方達、二人とも私と一緒に外に出て来てどうするのよ……。私は大丈夫だから中に戻って」

 テーブルに肘を付いたクリスタが二人を追い払うように手を振るが、二人は笑みを浮かべたまま自分達もテーブルに着く。
 どうやらクリスタの言葉に従うつもりはないようで。

 首元のクラヴァットを緩めたギルフィードが肩を竦めてクリスタに言葉を返す。

「だって、あの場に居る必要が無いし……。それに俺はクリスタ様に会いに来たような物だから……」

 会場内に居た時よりも随分砕けた態度で話すクリスタとギルフィードに、キシュートは苦笑する。

「そうだ、クリスタ。あのような茶番劇に最後まで付き合う必要は無いし、陛下と寵姫が出て行った後、クリスタも帰ってしまえば良かったのに」
「だけれど、キシュート兄さん……。私はこの夜会の主催よ……? 陛下も退出してしまって、私まで先に戻ってしまったら貴族達に軽んじられるわ」

 クリスタもキシュートに砕けた調子で言葉を返す。
 二人ははとこで、そしてクリスタとギルフィードははとこのキシュートを通じて幼少期に仲良くなり、幼い頃は良く一緒に遊んでいた仲だ。

 そのため、他の貴族の目が無い時は昔のようにお互い砕けた態度で言葉を交わす。
 その時だけは王妃や臣下、隣国の王族では無くてただの仲の良い友人同士のように話す。

 国内にキシュートが滞在する期間は長くない。
 そして、ギルフィードも滅多にディザメイア国に来ない。
 そのため、このように三人で顔を合わせるのは数年振りになるのだが、いざ顔を合わせてみれば自然と以前のように振る舞う事が出来る。

 ここ最近、この国で様々な視線に晒されて来たクリスタは二人の前で肩の力を抜ける事に感謝はしたが、公爵として夜会に参加した方がいいのではないか、とキシュートに遠回しに告げたのだが一蹴された。

「それよりもキシュート。さっき会場で言っていた事って……? 陛下の寵姫が何とかって言っていたけど……」
「──ああ。厄介そうな女性だ、と言った事か?」

 ギルフィードの言葉にあっさりとキシュートが頷く。

 クリスタもその言葉が気になってはいた。
 そのため、クリスタもギルフィードと同じくキシュートに視線を向けて口を噤み、キシュートの言葉の続きを待つ姿勢を取った。

「まあ、言葉の意味そのままではあるのだが……。人心掌握に長けているように思える。小国とは言え、一国の王族ではある。幼い頃から人の信用を得る方法は学んでいただろう。タナ国は軍事力では無く、情報で生き抜いて来たのだからな……」
「ふーん……。口が達者、って言う意味? だけど、それだけじゃないような気がするんだけど」
「──え、どう言う事……?」

 キシュートの言葉にギルフィードが意味深な言葉を返す。
 確かに人心掌握術に長けていたとしても、これだけの短期間で国王であるヒドゥリオンがあれ程骨抜きになるだろうか。
 そして、国内の貴族達の多くがソニアの味方をするだろうか。

 何か、変な力でも働いているのか、とクリスタがその思考に思い至った時。

 キシュートが懐から一冊の古びた本を取り出した。
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