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しおりを挟むテオドロンが乗り込んだ馬車はその後、街の飲食店を何件か回り、その飲食店の内一つ、カフェでは誰かと待ち合わせをしているらしく、ジルが遠くから見守る中でテオドロンは学園の生徒らしい貴族女性とそのカフェで落ち合い、恋人同士のようにテーブルの上でお互いの手の指を絡めて笑顔で会話をしている。
(これ以上近付くとテオドロン様に気付かれる可能性があるな……)
風下に居るため、多少会話は聞こえて来るが声を落として話しているのか内容まではしっかりと拾えない。
テオドロンがカフェに着く前に回った飲食店は、公爵家が事業の中で融資している飲食店ばかりだった。
その為、ジルはテオドロンが家の仕事をしているのか、と思っていた所に現れたのがあそこの女性である。
相手の女性の後ろ側に居る為、ジルは女性の顔を見る事が出来ない。
あまり視線を向けてテオドロンに勘付かれても事だ。
何を話しているのか、内容はとても気になるが、ジルが座っている場所からは聞き取る事が出来ない為諦める事にする。
(休日に、ウルミリアお嬢様以外の女性と街で親密にしている、と言う事が分かれば充分だな……。それに、休日と言う事もあり街中には人が多い……。また学園内でテオドロン様の醜聞が噂になるだろう……)
ジルがそう考えていると、テオドロンとその女性がカフェのテーブルから立ち上がった。
ジルはその姿を視界に捉えながらそのまま二人の背中を視線で追う。
二人はカフェのテーブルから離れた場所で少し言葉を交わすと、再度お互いの指を絡ませてから離れて行った。
「──……大分離れたな」
ジルは、二人から大分距離が出来た所で席を立つとそのままテオドロンの尾行を続ける。
今日、テオドロンを尾行けただけでも二人の女性と親密そうな様子で会っていた。
その事から、テオドロンと今日の女性達は昨日今日の間柄ではないのだろう。
もしかしたら、ラシェル・ミクシオンと同時期か若しくはそれ以上前からの間柄なのかもしれない。
「これは想像以上だな……まさか、休日の度にこのような事をしていたのか……?だが、それだったら旦那様が既に知っている筈……」
侯爵家が既にテオドロンの身辺は探っていた筈だ。
それなのに、何故あの旦那様が何も言わないのか。
「いや、行動はしたが握り潰されたのか……?旦那様を握り潰す事が出来るのは──」
いくら公爵家であっても、ラフィティシア侯爵家の事を完全に抑える事は無理な筈。
実際、ウルミリアの父親は父親として、そしてラフィティシア侯爵家として何度かテオドロンの態度や婚約の解消について諌めたり、話を持って行っている筈だ。
だが、未だにその件は何も動きは無い。
「旦那様が沈黙せざるを得ない相手なんて、一つしかない──……」
ジルはその考えに至った瞬間、何かとてつもない面倒事にラフィティシア侯爵家は巻き込まれているのではないか、と背筋がゾッとした。
早くウルミリアの元に戻って、他愛もない話しで笑い合いたい。
テオドロンの事なんて捨て置いて侯爵家に戻りたい。
だが、ジルはウルミリアに頼まれてしまった。
テオドロンの行動を調べて欲しい、と言われればジルは断る事が出来ない。
ウルミリアに頼られれば何がなんでもウルミリアの役に立つ情報を得ないといけない。
それが、自分を助けてくれたウルミリアへ恩を返す事になる。
ウルミリアの優しさに助けられたジルはウルミリアの役に立つ事だけが自分の存在理由だ。
「ウルミリアお嬢様は何が何でも守らなければいけないな……」
最悪、侯爵家がどうなろうと。
最優先事項はウルミリアだ。もしウルミリアが傷付く事があるのであれば、侯爵からの命令も最悪の場合は後回しにしなければいけない。
もう、二度とウルミリアを先日のように目の前で倒れさせるものか、とジルは固く自分の中で誓うとテオドロンの後をしっかりと追った。
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