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プロローグ
それは突然に…
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とある私立大学の構内にあるカフェテリア…
この大学に通う絵梨はランチを食べ終わった後ものんびりとコーヒーを楽しんでいた。
先ほどまで同じコースの友人たちも一緒にいたが、午後は選択科目なので講義がある者は講義室に、講義がない者はショッピングに行ってしまって絵梨だけが取り残された形になった。
仲間はずれにされているわけではなく、ショッピングのグループに誘われたのだが、現在欲しい物がなかった絵梨が断ったのだ。
「絵梨~一緒に行こうよ~」
「私も欲しい物があるわけじゃないよ」
「そ~そ~、ウィンドーショッピング。時間つぶしよ」
そう言ってかなり強引に誘われた。
「読みたい本があるの、また今度ね」
断る絵梨に
「その気になったら連絡して~」
まだ誘うか、と絵梨は思うが友人たちは心配しているのだ。
絵梨が一軒家でほぼ一人暮らしな事に。
絵梨の父親はこの大学に客員教授として在籍している。
その事で人間関係がどうにかなるのは嫌だったので、昨年の受験の際、ほかの大学を受験するつもりだった絵梨だが、学園長から思いっきり説得された。
「そんな教育はしていない」
幼稚舎から大学院まで一貫教育…
事実上、飛び級制度のようなものまであるこの学園は帰国子女にも人気だ。
高等部まで絵梨も通っていて大学の課程まで進んでいたので、教授達も惜しいから慰留してくれと学園長に進言したとのことだった。
「その方が安心だろう?」
考古学者である父は海外の遺跡発掘などにすぐ出かけてしまう。
義務教育課程はすぐに修了してしまった絵梨は、中等部まではその父について海外生活も長かったので幸いいじめなどにはあっていない。
おせっかいだが、善良…
ここの学生はそんな人たちが多い。
だが、個性的で日本人としては珍しい。
それを知っている在日外国人も多いが、問題は起こらない。
講義は外国語科目以外は日本語である。
先ほど絵梨にかまっていたのもそんな善良な学生だ。
選択講義が何科目も一緒ないわゆる同級生というものだろうが、ここでは年齢も様々なので絵梨が最年少である。
その事が一人暮らし状態の絵梨を心配するという行動に出ているのだ。
こんなに構われるくらいなら寮にでも入ったほうが気楽ではあるが、住む人がいなくなると自宅が荒れてしまう。
亡き母が残した自宅はこじんまりとした洋館で絵梨は大好きなのだ。
一人にも既に慣れてしまって周りが心配するほどでもないのだ。
この一人暮らしもほぼ日常…
今日は時間があるので一杯作り置きおかずでも作ろう…
絵梨がそう思って席を立った時だった。
日常が非日常に変わった。
「絵梨ちゃん!」
「ここに…居たんだ…良かった…まだ学内で…」
走ってきて息を切らして絵梨に声をかけたのは父親の研究室の助手の一人だ。
「どうかしたの?」
「学園長室へ…詳しくは学園長から…」
何かが起きたらしい。
おそらくは海外赴任中の父のことだろうがその慌てぶりはただ事でないようだ。
彼自身の口からは何も言えないようで、とりあえずは学園長室に行くしかないと絵梨は思った。
「絵梨ちゃん…」
学園長室に入ると顔色のあまり良くない学園長が声を掛けてくる。
「落ち着いて聞いてほしい」
明らかに落ち着いていないのは学園長の方だと絵梨には思われた。
学園長は子どもの時から家ぐるみの付き合いで父の昔からの友人ではあるが、公私混同は良くないと学内でファーストネームで呼ばれたことは今までなかったのだ。
取り敢えず学園長にすすめられるまま席に着く。
「今日中にマスコミ報道があるとは思うが、当事者である君に一番に話しておかなければならない」
そんな学園長の様子に絵梨は自分が落ち着くために大きく数度深呼吸した。
「マスコミ報道より先に…という事は…テロ…ではなく事故ですか?」
即時報道されないという事はそういう事だ。
海外というだけでテロに巻き込まれる可能性が高くなった時点で、絵梨は父に帰国させられた。
考古学調査現場など事故や強盗などの危険もある場所であるのは言うまでもない。
覚悟はあるが、それだけで現実感は薄い。
「落盤事故に調査団が巻き込まれた…現在捜索中で…安否はわからん」
「父はまだ見つかっていないのですね」
学園長はうなづいて、現地への渡航手続きなどを説明してくれた。
大型スーツケースを前にぼんやりと座り込む。
「何がいるんだっけ…」
海外渡航用の荷物を作ることなど慣れていたはずなのに…
結局、荷物をどう詰めたかわからぬまま絵梨は機上の人となっていた。
この大学に通う絵梨はランチを食べ終わった後ものんびりとコーヒーを楽しんでいた。
先ほどまで同じコースの友人たちも一緒にいたが、午後は選択科目なので講義がある者は講義室に、講義がない者はショッピングに行ってしまって絵梨だけが取り残された形になった。
仲間はずれにされているわけではなく、ショッピングのグループに誘われたのだが、現在欲しい物がなかった絵梨が断ったのだ。
「絵梨~一緒に行こうよ~」
「私も欲しい物があるわけじゃないよ」
「そ~そ~、ウィンドーショッピング。時間つぶしよ」
そう言ってかなり強引に誘われた。
「読みたい本があるの、また今度ね」
断る絵梨に
「その気になったら連絡して~」
まだ誘うか、と絵梨は思うが友人たちは心配しているのだ。
絵梨が一軒家でほぼ一人暮らしな事に。
絵梨の父親はこの大学に客員教授として在籍している。
その事で人間関係がどうにかなるのは嫌だったので、昨年の受験の際、ほかの大学を受験するつもりだった絵梨だが、学園長から思いっきり説得された。
「そんな教育はしていない」
幼稚舎から大学院まで一貫教育…
事実上、飛び級制度のようなものまであるこの学園は帰国子女にも人気だ。
高等部まで絵梨も通っていて大学の課程まで進んでいたので、教授達も惜しいから慰留してくれと学園長に進言したとのことだった。
「その方が安心だろう?」
考古学者である父は海外の遺跡発掘などにすぐ出かけてしまう。
義務教育課程はすぐに修了してしまった絵梨は、中等部まではその父について海外生活も長かったので幸いいじめなどにはあっていない。
おせっかいだが、善良…
ここの学生はそんな人たちが多い。
だが、個性的で日本人としては珍しい。
それを知っている在日外国人も多いが、問題は起こらない。
講義は外国語科目以外は日本語である。
先ほど絵梨にかまっていたのもそんな善良な学生だ。
選択講義が何科目も一緒ないわゆる同級生というものだろうが、ここでは年齢も様々なので絵梨が最年少である。
その事が一人暮らし状態の絵梨を心配するという行動に出ているのだ。
こんなに構われるくらいなら寮にでも入ったほうが気楽ではあるが、住む人がいなくなると自宅が荒れてしまう。
亡き母が残した自宅はこじんまりとした洋館で絵梨は大好きなのだ。
一人にも既に慣れてしまって周りが心配するほどでもないのだ。
この一人暮らしもほぼ日常…
今日は時間があるので一杯作り置きおかずでも作ろう…
絵梨がそう思って席を立った時だった。
日常が非日常に変わった。
「絵梨ちゃん!」
「ここに…居たんだ…良かった…まだ学内で…」
走ってきて息を切らして絵梨に声をかけたのは父親の研究室の助手の一人だ。
「どうかしたの?」
「学園長室へ…詳しくは学園長から…」
何かが起きたらしい。
おそらくは海外赴任中の父のことだろうがその慌てぶりはただ事でないようだ。
彼自身の口からは何も言えないようで、とりあえずは学園長室に行くしかないと絵梨は思った。
「絵梨ちゃん…」
学園長室に入ると顔色のあまり良くない学園長が声を掛けてくる。
「落ち着いて聞いてほしい」
明らかに落ち着いていないのは学園長の方だと絵梨には思われた。
学園長は子どもの時から家ぐるみの付き合いで父の昔からの友人ではあるが、公私混同は良くないと学内でファーストネームで呼ばれたことは今までなかったのだ。
取り敢えず学園長にすすめられるまま席に着く。
「今日中にマスコミ報道があるとは思うが、当事者である君に一番に話しておかなければならない」
そんな学園長の様子に絵梨は自分が落ち着くために大きく数度深呼吸した。
「マスコミ報道より先に…という事は…テロ…ではなく事故ですか?」
即時報道されないという事はそういう事だ。
海外というだけでテロに巻き込まれる可能性が高くなった時点で、絵梨は父に帰国させられた。
考古学調査現場など事故や強盗などの危険もある場所であるのは言うまでもない。
覚悟はあるが、それだけで現実感は薄い。
「落盤事故に調査団が巻き込まれた…現在捜索中で…安否はわからん」
「父はまだ見つかっていないのですね」
学園長はうなづいて、現地への渡航手続きなどを説明してくれた。
大型スーツケースを前にぼんやりと座り込む。
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