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短編集
義兄からの言葉
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「いいか善。大事なのは"相手を安心させること”だ。」
「はい、義兄さん。」
天定がたまたま近くを通りかかった時である。
どこからか義兄弟2人の声が聞こえてきた。
従者の口から引っかかる言葉が出たので、天定は思わず足を止めてしまった。
善、すまん。
「俺の経験上、相手を優しく抱きしめ続けるだけでも効果は絶大だ。でも力を入れすぎたらだめだぞ?
できるだけ優し~く、でも力強~くがポイントだ。」
「義兄さん、それって矛盾していませんか?」
「確かに矛盾している。だがな、力強くっていうのは抱かれる側の話だ。」
「抱かれる側…。」
いかにも抱いた経験がある風に言っているが、実際には永海も”抱かれた側”である。
「善、よく開け。全員、誰にでも絶対に”初めて"がある。初めての場合、ほぼ100%の人間が緊張する
し不安を感じるといっても過言ではない。」
確かに永海自身も、言動が二転三転して天定を困惑させた。
「抱く側もそうだがそれ以上に緊張と不安を感じるのが、抱かれる側だ。俺も経験者だからわかるが…見ているこっちも切なくなったなぁ~。」
正直に抱かれた側の経験談を話すのかと思ったが、さすが永海。
そこは抱かれた側から見た抱いた側、つまり私になったつもりで話をしているようだ。
実際に誰一人抱いた経験がないから、当然と言えば当然か。
「あの…義兄さん。俺、その、えぇと…。俺、そういうの本当に分からないから、不安なんです。」
「わかる!俺もそうだったぞ!」
抱かれた側が何を言ってるんだか。
天定は鼻で笑いそうになったが、耐えた。
「俺、華と手すら握れないし…意識すればするほど、華を直視できないというか。」
なるほど。
緊してはいたが、どうやら善は華へ想いを寄せているようだ。
善と華か。
なんとも応援したくなる二人である。
…永海がアドバイスを送る立場というのが解せないが。
「俺、こんなに誰かを好きになったの…初めてだから…。」
昔の耳まで赤くなっている様子が目に浮かぶ。
「わっはっはっはっはっはっは!!いや一青春っていいなぁ!!」
バシバシと、おそらく永海が善の背中を叩いているだろう鈍い音が聞こえる。
永海。善の骨を折るなよな。
「まぁ…焼てなくて良いんじゃねぇか?」
永海の声のトーンが下がり、一気に雰囲気が変わる。
この場にいるメンバーの中で彼の急な変化に一番戸惑うのは、きっと善だろう。
「そんなに華を想ってんなら、お前の気持ちで包み込んでやんな。」
俺がそうされたように…と続いた永海の言楽は、善には触こえなかった。
「さーて!そろそろ戻るか!腹減ったーーー!」
枝から枝へ跳躍しながらこの場から離れていく永海を追いかけるように、善も後から続く。
お前の気持ちで包み込んでやんな。
俺がそうされたように。
その言葉を発したのがいつもの悪ふざけが好きな彼でなく、滅多に見せないもう一つの一面な彼だった。
永海は、俺に包み込まれて、そんなに救われたのか?
本人に直接聞いたところではぐらかされるのは目に見えている。
だから本人には聞かないが、自分のした行いが彼を教えているのなら良かったと思う。
「…まったく。」
永海が自分を探し出す前に、皆のいるところへ戻ろうと歩き出した天定の表情はどこか穏やかだった。
「はい、義兄さん。」
天定がたまたま近くを通りかかった時である。
どこからか義兄弟2人の声が聞こえてきた。
従者の口から引っかかる言葉が出たので、天定は思わず足を止めてしまった。
善、すまん。
「俺の経験上、相手を優しく抱きしめ続けるだけでも効果は絶大だ。でも力を入れすぎたらだめだぞ?
できるだけ優し~く、でも力強~くがポイントだ。」
「義兄さん、それって矛盾していませんか?」
「確かに矛盾している。だがな、力強くっていうのは抱かれる側の話だ。」
「抱かれる側…。」
いかにも抱いた経験がある風に言っているが、実際には永海も”抱かれた側”である。
「善、よく開け。全員、誰にでも絶対に”初めて"がある。初めての場合、ほぼ100%の人間が緊張する
し不安を感じるといっても過言ではない。」
確かに永海自身も、言動が二転三転して天定を困惑させた。
「抱く側もそうだがそれ以上に緊張と不安を感じるのが、抱かれる側だ。俺も経験者だからわかるが…見ているこっちも切なくなったなぁ~。」
正直に抱かれた側の経験談を話すのかと思ったが、さすが永海。
そこは抱かれた側から見た抱いた側、つまり私になったつもりで話をしているようだ。
実際に誰一人抱いた経験がないから、当然と言えば当然か。
「あの…義兄さん。俺、その、えぇと…。俺、そういうの本当に分からないから、不安なんです。」
「わかる!俺もそうだったぞ!」
抱かれた側が何を言ってるんだか。
天定は鼻で笑いそうになったが、耐えた。
「俺、華と手すら握れないし…意識すればするほど、華を直視できないというか。」
なるほど。
緊してはいたが、どうやら善は華へ想いを寄せているようだ。
善と華か。
なんとも応援したくなる二人である。
…永海がアドバイスを送る立場というのが解せないが。
「俺、こんなに誰かを好きになったの…初めてだから…。」
昔の耳まで赤くなっている様子が目に浮かぶ。
「わっはっはっはっはっはっは!!いや一青春っていいなぁ!!」
バシバシと、おそらく永海が善の背中を叩いているだろう鈍い音が聞こえる。
永海。善の骨を折るなよな。
「まぁ…焼てなくて良いんじゃねぇか?」
永海の声のトーンが下がり、一気に雰囲気が変わる。
この場にいるメンバーの中で彼の急な変化に一番戸惑うのは、きっと善だろう。
「そんなに華を想ってんなら、お前の気持ちで包み込んでやんな。」
俺がそうされたように…と続いた永海の言楽は、善には触こえなかった。
「さーて!そろそろ戻るか!腹減ったーーー!」
枝から枝へ跳躍しながらこの場から離れていく永海を追いかけるように、善も後から続く。
お前の気持ちで包み込んでやんな。
俺がそうされたように。
その言葉を発したのがいつもの悪ふざけが好きな彼でなく、滅多に見せないもう一つの一面な彼だった。
永海は、俺に包み込まれて、そんなに救われたのか?
本人に直接聞いたところではぐらかされるのは目に見えている。
だから本人には聞かないが、自分のした行いが彼を教えているのなら良かったと思う。
「…まったく。」
永海が自分を探し出す前に、皆のいるところへ戻ろうと歩き出した天定の表情はどこか穏やかだった。
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