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呪樹に囚われた従者
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「助けてくれぇぇえ!!」
とある目的を持った二人が旅の道中に広野を移動していると、男の切羽詰まった声が聞こえてきた。
反射的に声がした方を見ると、そこには地中から出現した植物の蔓のような物に襲われている男が一人、遠くに見える。
永海が瞬時に距離を詰め、鎖鎌でうねる蔓を斬り刻んだ。と同時に、男の左腕と両脚に巻き付いてたそれらも斬る。
斬撃が効いたのか、もしくは驚いたのか、蔓は永海に狙いを変えて襲いかかる。
体格に似合わずしなやかな動きで交わしつつ瞬時に複数の蔓を斬り刻むと、蔓は地中に潜っていき、やがて静かになった。
ボコボコに穴の残った地表が、なんとも不気味である。
油断をついてまた襲ってくるかもしれないと考え、永海は周囲の警戒を怠らなかった。
「永海、無事か!?」
時間差で追いついた天定に声をかけられると、永海はいつもの様子でヘラヘラと笑った。
「おう。なんか地面から変な葉っぱが伸びていてさ、こいつに絡まってたんだ。」
実際に蔓には葉など生えておらず、そもそも本当に蔓だったのか疑問も残る。というのも、うねるそれを近くで見た時にあまりにも表面がつるつるしていたからである。例えるならまさしくミミズである。
でも意思を持つ何かには違いなく、二人はその場にうずくまり体を震わせている男の安全を最優先とした。
永海に引き続き周囲の警戒を任せ、天定は蹲る男の背に右手を乗せて声をかける。
「大丈夫か?どこか怪我はしていないか?」
「あ…あ………。あんたらは……?」
少しだけ顔を上げた男は、初対面の二人に怯えていた。
先程まで襲われていたから無理もないのだろう、「おっさん、礼は?」と隣で冷たい視線を向ける永海を静止し、天定は背中を摩りながら続ける。
「私は天定、旅をしている者だ。こちらは永海。貴方を助けた、私の従者だ。」
男は二人を順番にゆっくりと何度も見た後、ようやく状況を飲み込めたのか震えつつも上体を起こすとその場に胡座をかく姿勢で座った。
「た、助かりました。ありがとうございます…。」
落ち着いたように見えるが、まだ若干声も震えているよう。
無理はさせたくないがこのまま男を一人置いて先に行く事は出来ず、天定は男に質問をした。
話を整理するとこの男は商人で、ここから最寄りの街に住んでいると言う。
今馬車で離れた別の街へ採れた野菜や果物を運んでいたという。
だが例の蔓に突然襲われてしまい馬車も荷物も地中に引きずられ、男は恐怖にパニックを起こしてしまって無我夢中で逃げ回ったらしい。
しかし蔓に捕まってしまったところ、永海に助けられて生き延びた…と男は話す。
「お侍様、忍び様、助けてくださりありがとうございました!」
二人の姿を見て侍と忍者と認識できるほど落ち着きを取り戻せた男は、後ろを振り返った。
「見ての通り、私は馬車も積荷も全部失いました…。今は見ての通り何もございませんが、街へ戻ればお二人にお礼ができます。お願いします、助けていただいたお礼をさせてください!」
胡座からいつの間にか正座へ座り直していた商人は、地に手をついて深々と頭を下げた。
今回商人を助けたのは従者の方なので、天定は永海を見る。
「どうする?お前にお礼をしたいと言っているが。」
「そうだなー。たまには布団で寝てぇな~とは思うけど…。」
他にもたまには美味しい肉料理を食べたい、綺麗な姉ちゃんを見たい等次から次へと思いついたことから希望を言う従者。
途中天定に「わがままを言うな」と言われるが、永海は大きく口を開けて笑うばかり。
「じゃあさ、金くれよ金!旅の資金にすれば良いんじゃね?」
「…………。」
実は少し前の話だが、盗賊から大事な物を取り返してほしいと依頼を受けたことがある。
無事に取り返し、依頼者へ渡したところまでは良かった。
だが依頼主が「永海を欲しい」と言い出すから怒ってしまった天定は、報酬を受け取らないまま出てきてしまったのであった。
その一件に関しては永海も特に何も思っていなかったのだが、現に今、旅の資金は確かに底をついてしまっている為に天定は言葉に詰まってしまう。
「そう言うことでしたら!街に戻ればご希望の分だけお支払いします!では私の店までお越しください!さぁさ、街はこちらの方角です!」
商人は「任せてください」と言わんばかりの勢いで、二人を街まで案内した。
永海はルンルンとついて行くが、天定は「本当に良いのだろうか…」と複雑な表情で二人を後ろからついて歩いた。
とある目的を持った二人が旅の道中に広野を移動していると、男の切羽詰まった声が聞こえてきた。
反射的に声がした方を見ると、そこには地中から出現した植物の蔓のような物に襲われている男が一人、遠くに見える。
永海が瞬時に距離を詰め、鎖鎌でうねる蔓を斬り刻んだ。と同時に、男の左腕と両脚に巻き付いてたそれらも斬る。
斬撃が効いたのか、もしくは驚いたのか、蔓は永海に狙いを変えて襲いかかる。
体格に似合わずしなやかな動きで交わしつつ瞬時に複数の蔓を斬り刻むと、蔓は地中に潜っていき、やがて静かになった。
ボコボコに穴の残った地表が、なんとも不気味である。
油断をついてまた襲ってくるかもしれないと考え、永海は周囲の警戒を怠らなかった。
「永海、無事か!?」
時間差で追いついた天定に声をかけられると、永海はいつもの様子でヘラヘラと笑った。
「おう。なんか地面から変な葉っぱが伸びていてさ、こいつに絡まってたんだ。」
実際に蔓には葉など生えておらず、そもそも本当に蔓だったのか疑問も残る。というのも、うねるそれを近くで見た時にあまりにも表面がつるつるしていたからである。例えるならまさしくミミズである。
でも意思を持つ何かには違いなく、二人はその場にうずくまり体を震わせている男の安全を最優先とした。
永海に引き続き周囲の警戒を任せ、天定は蹲る男の背に右手を乗せて声をかける。
「大丈夫か?どこか怪我はしていないか?」
「あ…あ………。あんたらは……?」
少しだけ顔を上げた男は、初対面の二人に怯えていた。
先程まで襲われていたから無理もないのだろう、「おっさん、礼は?」と隣で冷たい視線を向ける永海を静止し、天定は背中を摩りながら続ける。
「私は天定、旅をしている者だ。こちらは永海。貴方を助けた、私の従者だ。」
男は二人を順番にゆっくりと何度も見た後、ようやく状況を飲み込めたのか震えつつも上体を起こすとその場に胡座をかく姿勢で座った。
「た、助かりました。ありがとうございます…。」
落ち着いたように見えるが、まだ若干声も震えているよう。
無理はさせたくないがこのまま男を一人置いて先に行く事は出来ず、天定は男に質問をした。
話を整理するとこの男は商人で、ここから最寄りの街に住んでいると言う。
今馬車で離れた別の街へ採れた野菜や果物を運んでいたという。
だが例の蔓に突然襲われてしまい馬車も荷物も地中に引きずられ、男は恐怖にパニックを起こしてしまって無我夢中で逃げ回ったらしい。
しかし蔓に捕まってしまったところ、永海に助けられて生き延びた…と男は話す。
「お侍様、忍び様、助けてくださりありがとうございました!」
二人の姿を見て侍と忍者と認識できるほど落ち着きを取り戻せた男は、後ろを振り返った。
「見ての通り、私は馬車も積荷も全部失いました…。今は見ての通り何もございませんが、街へ戻ればお二人にお礼ができます。お願いします、助けていただいたお礼をさせてください!」
胡座からいつの間にか正座へ座り直していた商人は、地に手をついて深々と頭を下げた。
今回商人を助けたのは従者の方なので、天定は永海を見る。
「どうする?お前にお礼をしたいと言っているが。」
「そうだなー。たまには布団で寝てぇな~とは思うけど…。」
他にもたまには美味しい肉料理を食べたい、綺麗な姉ちゃんを見たい等次から次へと思いついたことから希望を言う従者。
途中天定に「わがままを言うな」と言われるが、永海は大きく口を開けて笑うばかり。
「じゃあさ、金くれよ金!旅の資金にすれば良いんじゃね?」
「…………。」
実は少し前の話だが、盗賊から大事な物を取り返してほしいと依頼を受けたことがある。
無事に取り返し、依頼者へ渡したところまでは良かった。
だが依頼主が「永海を欲しい」と言い出すから怒ってしまった天定は、報酬を受け取らないまま出てきてしまったのであった。
その一件に関しては永海も特に何も思っていなかったのだが、現に今、旅の資金は確かに底をついてしまっている為に天定は言葉に詰まってしまう。
「そう言うことでしたら!街に戻ればご希望の分だけお支払いします!では私の店までお越しください!さぁさ、街はこちらの方角です!」
商人は「任せてください」と言わんばかりの勢いで、二人を街まで案内した。
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