俺この 番外編 / 天定&永海

RiO

文字の大きさ
12 / 49
呪樹に囚われた従者

4

しおりを挟む
永海の目的は、商人がこの時間にどこで何をしているのかを知ること。
それを天定に報告して、主から娘に伝えて、彼女が安堵してくれれば一番の理想。

永海が影を感じてやって来たのは、街外れに隣接している森の中。
正直なところ森と林の違いがいまいち良くわかっていない永海だが、ある時に天定に聞いてみたら「自然にできたものが森で、人の手で植えられたものが林だ」と教えてくれたが…やっぱり分からないものは分からない。

「おっさん、マジで何してんだよ…。」

例えばデートに来た男女だったら、生い茂る葉の隙間から差し込む月明かりを見て綺麗だとか幻想的だとか言うのかも知れない。
だが自分は仕事できている。
こんな時間にこんな場所で、何をすることがあると言うのだろうか。
枝から枝へ軽やかに飛び移り、時には身を隠しながら辺りを見渡す。
影を感じた場所の近くから探すと、やっと見つけた。

「ーーーーーみーっけ。」

さてさて見物を…と思い、枝に座る。
商人の男は一本の木に向かって立っているだけ。
これだけ雑音がない場所でも声が全く聞こえてこないのは、余程の小声なのかそもそも話していないのか。
さすがの永海もおかしいと体勢を変えようとしたところ、どこからか声が聞こえて来た。

"貴方、あの時にその者を助けた人…よね。"

永海は咄嗟に後ろを振り返るが、そこには誰もいない。

"私を探しているのかしら?無駄よ。貴方に私は探し出せない。"

また別の方向を見るが人影はおらず、それから鎖鎌を手に取り四方へ顔を向けるが人の気配はしない。

"嬉しいわ。まさか貴方の方から来てくれるなんて。"

それでも声が聞こえて来る。
どこだ、一体どこからーーーー。

"そんなに私がどこにいるのか気になるのかしら?私は…ここよ。"

永海の左足首に、地から伸びた蔓が巻きついた。

左足首を締め付けられる感覚に、永海はピンときた。
鎖鎌で蔓を斬り、その後も無数に迫るそれらを斬り刻みながら間合いを取るべく下がる。
が、自分が下がった分だけ蔓が迫って来る為に中々距離を空けられない。
前後方や左右だけでなく上や下からも蔓が迫り来るものだから、一瞬も隙を見せられない。
影伝いによる瞬間移動でこの場から離脱する方法もあるのだが、移動先の影を考える余裕が無い。

「ちっ…。」

少しでも動きを止めると四肢や胴体に巻きつこうとしてくる。
それを阻止しつつ、なんとか声の正体だけでも知れればと永海は応戦を続けた。

"貴方から、美味しそうな匂いがする。"

時折聞こえて来る誰かの声。
心理を乱す作戦なのだろうが、過去にまつわる内容でなければ精神面を保てる。

"貴方の生気、暗くて…歪んでいて…あぁ、1人だけ心を許している人がいるのね?"

言葉に永海の動きが止まる。
その隙に蔓が体に絡みつく。
ハッと我に帰る永海が切り離す。

"その気持ちを許せる人、そんなに特別なのね。その人の精気を吸い尽くしたら、貴方はどんな絶望を見せてくれるのかしら?"

永海の目の色が変わった。

「天定に手を出したら、俺が許さねぇからな…。」
"ふふふ…貴方のその強気な表情、もっと楽しみたいわ。"








ここから、永海の長い戦いが始まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

処理中です...