俺この 番外編 / 天定&永海

RiO

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呪樹に囚われた従者/その夜の話

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天定と永海が街の人に運ばれた、その日の夜。
永海は高熱が続いており、医師が一晩中つきっきりで診ていた。
奥方も、娘も、お手伝いさんたちも出来る限り協力をしてくれた。

天定は何も出来ず、廊下から襖の向こうで苦しんでいるだろう永海を心配することしができなかった。





「永海、入るぞ。」

次の日の夜、天定は永海の様子を見に来た。
夕方の帰り際に医師から直接聞いた話だが、今もなお全身熱を帯びていて呼吸も荒い状況であると言う。
運び込まれた際に永海の全身に付着していた粘液の所為ではないかと考えているが、このような状況の患者は医師にとっても初めての経験らしい。
夜通し診ていたこともあり、医師本人の休息も兼ねて一度帰る運びとなった。
痛みなど苦痛を訴えてきたら鎮静剤を飲ませるようにと伝えた後に必要分の薬を渡される。

「容態が急変したら、すぐに連絡をするように。」

そう言い残し、医師は建物を後にした。
医師が去ってからは、天定が永海を見ることにした。
これは天定本人の願いであると奥方に申し出て、聞き入れて欲しいと頭を下げた。

結果、聞き入れてくれて今に至る。
天定の手には店の者が用意してくれた水が張った桶と手ぬぐいがあり、襖越しに一声かけてからゆっくりと中の様子を伺い、入る。

永海も自分がそうされたように、布団の中で仰向けに横になっていた。

「……っ…れ……だ…?」

熱を帯びた赤い顔に伏せられた目、薄く開く唇に浅く早い呼吸、苦しそうに寄せる眉、途切れ途切れの掠れた声の永海に、天定は足音を立てず静かに傍に近づき、座る。
桶を畳に置き、手ぬぐいを水に浸して硬く絞ると汗ばむ永海の額や頬に軽く当てる。
体温と水温の差によるものなのか、手ぬぐいを当てる際にビクッと彼の体が反応した。

「永海。俺だ、天定だ。」
「…あま……。」
「無理に話そうとしないでいい。今は安静にすべきだ。」

天定が来てくれたことを知り、永海の表情から強ばりが抜けたが、苦しく感じていることには変わりはない。
手ぬぐいが温くなれば、また水に浸して強く絞る。
そして、また顔に当てる。
何度か繰り返すと、改めて冷たくしたそれを小さく折り畳んで額に乗せた。
かつて、母が自分にそうしてくれたように。

お互い一言も話さず、静かな時間が流れる。
強いて言うならば、永海の呼吸音が聞こえるくらい。
天定は腕を組み、永海を見つめる。
永海に対して申し訳ない気持ちもあるが、今は天定が自分を責める気持ちの方が大きい。
亡くなった男が言っていた。

男の行方を探しに行かせた、あの日の夜。
あの夜から永海は1人で戦い、力尽きた。
それからずっとあの樹に囚われていたのだろう。
ずっと状態だったのかと思うと、心が痛む。

「永海、ごめんな…。」

独り言のつもりだったが本人に聞こえたらしく、元々細い目を開けて主を見上げた。

「なに…謝ってんだ…よ…。」

呼吸に合わせて途切れ途切れに話しかけてくる彼と目が合ってしまうと、天定は視線を逸らしてしまった。

「何がって、お前も分かってるんだろ?」

自分も一緒に探しに出ていれば、きっと永海は今もーーー。

「はぁ…?わかんねぇ、よ……俺が、ヘマをした…それだけ、だ……。」

ずっと見上げているのも辛いのか、永海は目を伏せた。
意識もハッキリとし、途切れ途切れながらも話せるまでになったが、全身の熱が一向に下がらず、そして、疼く。
実は医師の診察を受けていた時も、医師に触れられる度に過敏に反応をしてしまっていた。

「なぁ、天定……。俺、さ……また、お前と、旅、出来るのかな……。」
「な、何を言い出すんだ。当たり前だろう?」
「なら……。」

永海が肘をついて、体を小刻みに震わせながらも上体をほんの少しだけ起こす。
本当はもっと起こしたいのだろう、肘や腕に力が込められているのがわかる。
…が、支えきれずに仰向けの姿勢に戻ってしまった。

「永海、無理をしては駄目だ。今は安静に…。」
「俺の、体は…!」

天定が永海額から落ちた手ぬぐいを拾ったり布団を掛け直してやろうとすると、突然永海が叫んだ。
驚いて顔を見ると、永海は右腕で目元を隠していた。

「俺の体…変なんだ……。ずっと、ずっと…ちょっと触られた、だけで、勝手に…反応しちまう……。」

医師や天定が永海に触れる度に、皮膚に伝わる感覚が刺激に変わってしまい、それが永海を苦しめていた。
時間が経っても治るところかより過敏になってしまっていると、永海は出来る限りの言葉で天定に伝えた。
呪樹から受けた辱めにより毒でも注入されたのかと思うと、急に恐ろしく感じてしまう。
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