俺この 番外編 / 天定&永海

RiO

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呪樹に囚われた従者/その夜の話

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永海が天定の命を受けて、今回の依頼主である娘の父を探しに出た日の夜の話。




「ちっ…。」

少しでも動きを止めると四肢や胴体に巻きつこうとしてくるそれを阻止しつつ、なんとか声の正体だけでも知れればと永海は応戦を続けた。

"貴方から、美味しそうな匂いがする。"

時折聞こえて来る誰かの声。
おそらく心理を乱す作戦だったのだろう。

"貴方の精気、暗くて…歪んでいて…あぁ、1人だけ心を許している人がいるのね?"

言葉に永海の動きが止まってしまった。
その隙に蔓が体に絡みつくが、ハッと我に帰る永海が切り離す。

"その気持ちを許せる人、そんなに特別なのね。その人の精気を吸い尽くしたら、貴方はどんな絶望を見せてくれるのかしら?"

永海の目の色が変わった。





「天定に手を出したら、俺が許さねぇからな…。」





誰よりも大切な天定に手を出そうとするなら、得体は知れないがここで敵を仕留めるのみである。
最初は月明かりが出ていたこともあり、ギリギリの状況に追い込まれてしまっても応戦ができた。
しかし流れてきた雲に月が隠れてしまったことで、次第に不利な流れになってくる。
そんな中でも怯むことなく天定へ手を出す前に仕留めようとした永海であったが、その表情に少しずつ疲労の色を見せ始めたのは、空の向こうが明るくなってきた頃であった。
動きも反応も鈍くなり、左腕に蔓が絡まり、そして…。

力尽きて動けなくなった永海の体に次々と蔓が巻きつき、彼は軽々と持ち上げられる。
足が地面から離れると、一筋の汗が頬から伝い落ちた。

"ふふふ。貴方って本当に、美味しそうね"

いつの間にか蔓ではなく、触手に四肢を拘束されていた。
幹が左右に大きく割けていく様子を見た時、永海は言葉を失い絶望する。

樹に呑み込まれるとすぐに幹は閉ざされ、永海は外の世界と遮断されてしまった。
口にねじ込まれた触手が放つ、変な味がした液を飲まされる。
拘束された体を弄ばれ、死なない程度に精気を奪われ続けた。
自死も考えたが、その度に天定との様々な思い出がよみがえり、懸命に辱めに独りで耐え続ける。



早く天定に報告しなくては。



頭では分かっていても、体が言うことを聞いてくれない。
寧ろ、時が経過するにつれて力の入りにくい体になってしまった。
もう単独ではここから脱出できないと判断した永海は、意識だけは保とうと抗い続けた。

天定なら、きっと助けに来てくれると信じていたから。





その結果が、「これ」である。
できる限りの言葉で経緯を伝えた永海の隠された目元から、また一筋の涙が落ちた。

「…………そう、だったのか。」

普段の彼は、辛い胸の内を言葉にしない。
いつも笑ってふざけて誤魔化してしまうから、天定でさえも気づかない時がある。

手ぬぐいを桶に引っ掛け、片手を永海の背に回し、もう片手を反対側の脇へと回す。
永海からしたらいきなり天定が抱きついてきたように感じて驚いたし、天定が密着してくることで寝着が肌に擦れてまた体が勝手に反応してしまった。
思わず眉間にシワがよる。
永海を持ち上げた天定は片脚を上体の下に入れてバランスを保ちつつ、彼の体を起こす。
支えを失うとまた倒れてしまう永海は咄嗟に天定にしがみつき、必死にバランスを取ろうとした。
前から脇に回す天定の手が永海の頭部へと位置が変わり、短いくせっ毛に指を絡めながら自分の方へ引き寄せる。

「あ、あま……さだ……?」

抱きしめられているこの状況に、珍しく永海は困惑してしまった。
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