作者の自己満恋愛小説

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暑い。

扇風機の風で吹き上がる濡れた少し長い髪。

エアコンを付けよう。

そうしよう。

リモコンを探しても見つからない。

その前に一時間前に無くしたスマホを見つける。

「こんなところにあったのか」

 スマホ画面を開く。

 通知無し。

 用は無い。スマホを閉じてリモコンを探す。

 その前に……。

 キッチンに行って麦茶を飲む。

 家の麦茶は薄い。

 とても。とても薄い。

「水にすればよかった」

 パックが破れたのだろうか茶葉が口に入って気持ちが悪い。

 水にすればこんな思いもしなくて済んだ。

 その後水を飲んだ後、トイレに行った。

 お腹が痛い。

 すごく。すごく痛い。

 トイレから出た後、またスマホを見る。通知無し。

「いつになったら来るだろう」

 ロックを外してみても無い。

 非通知にしていたグループラインが動いていた。

『花火大会行こうぜ!』

 イケイケ系。

 正直面倒くさい。

 クラスにいる友人はそんな奴に関わる奴じゃない。そんなこと知っている。

 高校二年になればハッキリ物事が言える。

 何もかも。

 私はそうだろうか。

 本当にそれが言えるだろうか。

 好きな男の子を花火大会に誘って呆然と返信を待っている私が……。

 物事が言えるなら『返信してくれ~(スタンプ)』とかそういうことが出来るのではないだろうか。

 ダメな方に育った。

 嫌なことも良かったことも全て包み隠してしまう人間に。

 社会にいくら通用する人間性だとしても私が私を嫌ってしまう。

 イケイケ系でもいい。

 とにかく今の私を消し去りたい。

 中途半端で少し社会適用者になってしまった高校二年の私「一葉 結愛(いとつは ゆあ)」を。

 明日か。

 まだかな。

 いつかな。

 いつまで待てばこの気持ちも私の性格も消せるのかな?

 まだだ。

 まだだ。

 三十秒間隔で更新している私に私が気味悪く感じる。

 気持ちが悪い。

 この気持ちに名前を付けよう。

 これは。

 これは。

 恋心だ。

 しかも初恋だ。

 初めてがいっぱいある初恋。

 恋だ。

 恋。

 人生の記録に綴っておこう。

 八月初旬。

 私は、恋を煩わしている。

 と。

 ……………

 次の日。

 八月に一回ある登校日。

 私は、学校へと向かう。

 電車に揺られながら行く。

 朝は混んでいる。

 所謂、満員電車。

 でも、見方を変えればこれもまた面白く感じる。

 私のように制服な人。

 スーツの人。

 ジャージを着ている人。

 お洒落な服を着た人。

 色んな人がいる。

 そして、色んな人が違う行動をとる。

 スマホを見ていても、それぞれが違うものを見ている。

 ニュースかもしれない。

 動画かもしれない。

 ゲームかもしれない。

 顔に合わせて私の考えを当てはめていく。

 この人にはこれが似合う。

 などと。

 これが、通学の暇つぶし。

 誰もやっていない。

 それがいい。

 私が私だと確信できる。

 周りに流されて、行動したり、言動するんじゃない。

 私が私をもって私の思う通りに進む。

 それが重要。

 それも全て君が教えてくれた。

 だから、私は好きになったんだ。

 頬が熱い。

 胸が熱い。

 私は胸元で手を握る。

 恋は辛い。

 まだ初めてだけど初めてが辛い。

 それを楽しんでいる。

 楽しい。楽しい。楽しい。

 今日の君がどんなことをするのか。どんなことを話すか。どんなことで関われるか。

 楽しみだ。

 

 八月初旬の通学時間。

 恋は、通学時間を楽しくさせた。


………………


 少し長い電車も終わり、歩いて学校へ向かう。

 通りがかった掲示板を見る。

『花火大会のお知らせ』

 私は君と行きたい。

 告白。

 とかする気はない。

 君と一緒にいたい。それだけ。

 考えれば胸が熱くなる。

 全てが妄想。

 誘ったとしても返信が無ければ妄想で終わり。

 でも妄想が楽しくさせた。

 もっと。もっと。

 私を……。

 学校に着く。

 席に座る。

 数回のチャイムが鳴ると、昼休み。

 君のもとに行こうか。

 どうしようか。

 そもそも、そんな勇気どこにある?

 ない。ない。

 君のクラスに友人がいる。

 次の時間の教科書を忘れたと言って借りにいこう。

 君に会うのが楽しみだ。

 数十メートルの移動も長く感じた。

 友人を呼ぶ。

「教科書貸してくれない?」

「いいよ」

 快く受け入れてくれる。

「ありがとう」

 チラッと君を見る。

 今日も元気に友達と話している。

 何の話をしているだろうか。

 そんな妄想が頭を埋め尽くす。

 友人は私の気持ちを知っている。

 私が君のことが好きだと。

 それに対して、私は何も思っていない。

 何も感じない。

 午後一時の昼休み

 私が好きな君を見て君が好きだと改めて確認した。

………………

 放課後。

 私は貸してもらった教科書を返しに行った。

「ありがとう。助かった」

「大丈夫だよ。今日もカッコよかったよ」

 茶化して私に伝える。

 少し恥ずかしかった。

 気持ちが共有されているみたいで。

 でも、新鮮でもあった。

 数少ない友人。

 それがとても。

 友人が微かに笑った。

 後ろを振り向くと友人の彼氏がいた。

「夏祭りの話だよね。今行くから待ってて」

「おう。俺のクラスで待ってるから」

 少し見た目がチャラい。

 でも友人はこれに惚れたらしい。

 好みは違うものだ。

 人の自由だ。だから、私の気持ちが友人にばれた時友人は私を揶揄することなんてしなかった。

 すごくいい子でいい友人だ。

 高校生活を彩ってくれている。

「ありがとう」

 心で積もった感情が爆発した。

 でも、その声は小さい。誰にも聞こえていない。

 聞こえているのは私だけ。

 花火大会か。

 友人は、彼氏と行くんだ。

 私も頑張らなければ。

 自分自身を矜持しろ。

 後悔はしたくない。

 絶対に。

 友人が私の背中を押した。

「がんばれ。応援してるよ。じゃあ、また明日ね」

「ありがとう。頑張る」

 頬が熱い。

 鼓動が早くなる。

 心臓が……心臓が。

 扉を二回ノックする。

 教室には一人しかいない。

 帰宅の準備をしている。君しか。

 緊張する。

 呼吸が乱れる。

 恋ってこんな感じなんだ。

「あ……あの。少し私と話してくれませんか?」

 冷厳とした表情で眉を顰めた。

「どうした?」

 声も容姿も私にはカッコいい。

 いや、そうじゃなくて。

私だけにもカッコいいって言ってる人はいるんだけど!

興奮した。

 拳を握る。

「明日の花火大会行きませんか?」

 熱い。

 とにかく熱い。

 全てが。

 時が止まっている。

 私にはそう感じる。

「ダメですか?」

 返答が遅い。

 恥ずかしくて目も合わせられない。

 私が好きなこと絶対にバレた。

 恥ずかしい。

 早く逃げたい。

「ごめん。先客がいるんだ。申し訳ない。せっかく、誘ってくれたのに」

 動き出した。

 鼓動も遅くなった。

 涼しい。

 いや、寒い。

 からっぽ。

 何も感じない。

 私がいけなかった?

 明日だもん。

 遅いよ。

 全く。

 本当にバカだ。

 でも、スマホで断ってくれたって。

 なんで。

 なんで。

 なんで………。

 涙は出さない。

 見っとも無い姿は見せない。

 それは鉄則。

 私の中で決めた。

「でも、私スマホでも伝えたんだよ……?」

「ごめん。来てるのは分かってたんだけど。少しあって返信できなかった」

 私は振られた。

 振られた。

 振られたんだ。

 恋は儚く終わる。

 突然。

 俄然と。

 急に。

 忽然と。

 唐突に。

「ごめんなさい。私遅かったですね。失礼しました」

 開いたままだった扉を閉めて廊下を走って自分の教室に戻ってバックを取った後に外へ行った。

 帰り道の記憶なんて忘れた。

 そんなことはどうでもいい。



 八月初旬の放課後

 私は私を失った。


……………


 朝だ。

 花火大会を行うという合図の花火があがる。

 うるさい音が心を刺激した。

 ふと思う。

「私、一人で行こうかな」

 花火が嫌いなわけじゃない。

 昔に一人で行ったこともある。

 だから、一人で行ける。

 どんな気持ちであっても。

「どんだけ、孟浪なんだ………」

 思わず笑った。

 泣きながら。

 そうだ。

 浴衣も着ていこう。

 こんな自分がイタイ人間だとしても。

 花火大会の日の朝。

 唐突に私は花火大会に行くこととなった。


………………


 人混み。

 人混みだ。

カップルの人混みだ。

 花火が始まる。

 あと、数分。

 周りを見渡す。

 すると、君がいた。

 君が。

 声をかけよう。

 何でもいい。

 声をかけよう。

 カウントダウンが始まる。

 そんなことは気に留めず君の隣に行く。

 君に会うために。

 気持ち悪いかな。

 そんなことどうでもいい。

 私の初恋を終わらせたくない。

 近くに来る。

 誰かの手が見える。

 女の手。

 私じゃない誰か。

 打ちあがった。

 それと共に、私は君を見る。

 全景を。

 隣にいるのは私より少し背の低い女。

 腕を組んでいる。

 私はやっぱり振られた。



 そして、



 花が開いた。

 盛大な音が遅れて聞こえる。


 小さい花も続々と開く。

 
 周りは全員花を見ている。

 でも、私は君を見ていた。

 女とキスしている君を。私は見ていた。                 



 〈終〉
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