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復讐ノート
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とある渓流にかかる橋は自殺スポットとして有名だった。
その近くに今では廃線となったバスの待合所がある。雨をしのげる程度の簡易的な小屋で、そこには一つの机が。その上には一冊のノートが置かれている。
ノートは橋から身を投げる人たちの最後の言葉が書かれている。
家族や友人への感謝や、自分を自殺に追い込んだ相手への恨みの言葉がノートに書かれていた。そのノートのことを自殺者の交流ノート、遺言ノート……様々な呼び方があるが、復讐ノートと呼ばれることが多かった。
復讐ノートと呼ばれるには理由がある。
ある夏。深夜に大学生たちが肝試しにこの橋へとやって来た。その内の一人は素行が悪く、大学に入ってからは多少大人しくなったものの、高校生まではよく補導されていたそうだ。
レンタカーで橋の近くの車を停められる場所まで行くと、その男が先陣を切る形で懐中電灯で先を照らして橋に向かう。
「おい! 幽霊でてこいっ! ビビってんのか!」などと言いながら橋を渡っていく。だが、橋を一往復したが何も起きない。拍子抜けだと文句を言いながら大学生たちは帰ろうとした。
すると男はバス停の小屋に気付く。ノートの存在を知っていたので、最後にそこだけ覗いて帰ることにした。
小屋を覗いてノートを見つけて開いてみる。そこには確かに自殺者と思われる人の言葉が書かれていたが、多くは肝試しに訪れた人たちの言葉が書かれていて、あまり不気味には感じなかった。
大学生たちはノートに何か俺たちも書いていくかと笑い合っていたが、あの男だけは笑うことなく、ジッとノートを見ていた。そして「おい、早く帰るぞ」と言い出して、車へと走り出す。
男の様子に驚きながらも、その後を追いかけて全員が車に乗った。ただ、おかしなことに先に車に乗ったはずの男がいなかった。懐中電灯で照らしながら車へと走って行って先に乗り込んでいたはずだ。いったいどこに男は行ったのかと、もう一度車の外に出て男の名前を呼ぶ。だが、男の声は返ってくることはなかった。
自分たちで周囲を探してみたが、何処にも男はいなかった。仕方ないので男がいなくなってしまったことを警察に連絡した。そして橋の下で男が亡くなっているのが見つかった。
どうやら男は橋の上から落ちたようだ。それも自分から身を投げたわけではなく、誰かに落とされたと警察は当初考えた。というのも男の手首には誰かが強く握ったと思われる手形があったのだ。そして男の爪の間には他人の皮膚と血液が付着していた。落とされそうになったところを抵抗して引っ掻いたのだろうと思われた。
そこで一緒にいた大学生たちを調べたが、誰も引っ掻かれた跡はなく、爪の間の皮膚や血は彼らのものではなかった。その後の捜査でわかったのだが、爪の間に挟まっていたものは、この橋で身を投げたと思われる行方不明者のものだと判明した。
沈んでいた死体にたまたま接触して爪の間に入り込んだ可能性はある。だが、そうなると手形は誰のものなのか。もしや死体が男を落としたんじゃないかと考える人もいた。そしてそれが真実だと思う人がいた。
それには理由がある。あのバス停の小屋に置かれていたノート。その中の一ページに今回亡くなった男に対する恨み、そしていつか復讐をしてやるという言葉が書かれていたのだ。書いたのは高校時代に男にイジメられ、精神を病んでしまった人物。そして男の爪の間に挟まっていて血肉の持ち主でもある。
警察では手首についていた手形に関しては今回の件には関係ないものとし、ノートに書かれていた昔イジメていた相手の言葉に罪悪感を覚えて、突発的に身を投げたと判断した。
ただ、男のことをよく知る人はそれで罪悪感を覚えるような人間ではないと言い、ノートに書かれていたイジメていた相手の復讐心に殺されたと思うのだった。
そうしてそのノートは、復讐ノートと呼ばれるようになった。
今では復讐してやりたい相手の実名が多く書かれている。そして時々その名前が書かれた人物が、橋の下を流れる渓流で死体となって見つかるらしい。
その近くに今では廃線となったバスの待合所がある。雨をしのげる程度の簡易的な小屋で、そこには一つの机が。その上には一冊のノートが置かれている。
ノートは橋から身を投げる人たちの最後の言葉が書かれている。
家族や友人への感謝や、自分を自殺に追い込んだ相手への恨みの言葉がノートに書かれていた。そのノートのことを自殺者の交流ノート、遺言ノート……様々な呼び方があるが、復讐ノートと呼ばれることが多かった。
復讐ノートと呼ばれるには理由がある。
ある夏。深夜に大学生たちが肝試しにこの橋へとやって来た。その内の一人は素行が悪く、大学に入ってからは多少大人しくなったものの、高校生まではよく補導されていたそうだ。
レンタカーで橋の近くの車を停められる場所まで行くと、その男が先陣を切る形で懐中電灯で先を照らして橋に向かう。
「おい! 幽霊でてこいっ! ビビってんのか!」などと言いながら橋を渡っていく。だが、橋を一往復したが何も起きない。拍子抜けだと文句を言いながら大学生たちは帰ろうとした。
すると男はバス停の小屋に気付く。ノートの存在を知っていたので、最後にそこだけ覗いて帰ることにした。
小屋を覗いてノートを見つけて開いてみる。そこには確かに自殺者と思われる人の言葉が書かれていたが、多くは肝試しに訪れた人たちの言葉が書かれていて、あまり不気味には感じなかった。
大学生たちはノートに何か俺たちも書いていくかと笑い合っていたが、あの男だけは笑うことなく、ジッとノートを見ていた。そして「おい、早く帰るぞ」と言い出して、車へと走り出す。
男の様子に驚きながらも、その後を追いかけて全員が車に乗った。ただ、おかしなことに先に車に乗ったはずの男がいなかった。懐中電灯で照らしながら車へと走って行って先に乗り込んでいたはずだ。いったいどこに男は行ったのかと、もう一度車の外に出て男の名前を呼ぶ。だが、男の声は返ってくることはなかった。
自分たちで周囲を探してみたが、何処にも男はいなかった。仕方ないので男がいなくなってしまったことを警察に連絡した。そして橋の下で男が亡くなっているのが見つかった。
どうやら男は橋の上から落ちたようだ。それも自分から身を投げたわけではなく、誰かに落とされたと警察は当初考えた。というのも男の手首には誰かが強く握ったと思われる手形があったのだ。そして男の爪の間には他人の皮膚と血液が付着していた。落とされそうになったところを抵抗して引っ掻いたのだろうと思われた。
そこで一緒にいた大学生たちを調べたが、誰も引っ掻かれた跡はなく、爪の間の皮膚や血は彼らのものではなかった。その後の捜査でわかったのだが、爪の間に挟まっていたものは、この橋で身を投げたと思われる行方不明者のものだと判明した。
沈んでいた死体にたまたま接触して爪の間に入り込んだ可能性はある。だが、そうなると手形は誰のものなのか。もしや死体が男を落としたんじゃないかと考える人もいた。そしてそれが真実だと思う人がいた。
それには理由がある。あのバス停の小屋に置かれていたノート。その中の一ページに今回亡くなった男に対する恨み、そしていつか復讐をしてやるという言葉が書かれていたのだ。書いたのは高校時代に男にイジメられ、精神を病んでしまった人物。そして男の爪の間に挟まっていて血肉の持ち主でもある。
警察では手首についていた手形に関しては今回の件には関係ないものとし、ノートに書かれていた昔イジメていた相手の言葉に罪悪感を覚えて、突発的に身を投げたと判断した。
ただ、男のことをよく知る人はそれで罪悪感を覚えるような人間ではないと言い、ノートに書かれていたイジメていた相手の復讐心に殺されたと思うのだった。
そうしてそのノートは、復讐ノートと呼ばれるようになった。
今では復讐してやりたい相手の実名が多く書かれている。そして時々その名前が書かれた人物が、橋の下を流れる渓流で死体となって見つかるらしい。
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