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再会
毎年花束を受け取りに来る人。
しおりを挟む兄が亡くなった。やっぱりか、と思った。
見舞いには行かなかった。行かないのも、兄の為だと思った。
いつしかぱったりと連絡は途絶え、現状を把握出来ない日々が続いた。身内は妹だけだと病院には伝えたそうで、亡くなった日は〇〇だけが兄の傍にいたという。
これも、〇〇を混乱させない為。
兄の信頼を、無駄にしたくなかったから。
せっかく築き上げた関係を、最期を迎えようとしている兄に、
崩れる様子を見せたくなかった。
兄もきっと、それを恐れていた。
月日は巡り、迎えた、母の命日。
心のどこかで兄を求め、花屋へ向かった。やはり、兄はいなかった。そこにいたのは、小さくて白くて黒い髪がよく似合う女の子だった。
今まで顔を合わせたのは兄だけだったので、間近で見るのは、あの時が初めてだった。涙を溜める癖は、兄そっくりだった。
何度話を整理しようが、事実は変わらない。それを受け入れるのか、拒むのか、理解できないのか、したくないのか。
妹は養子に出されていて、高校進学と共に里親の元を離れた。良い方達だったようで、少なからず、人の温かみは知っている。
綺麗になった目の前の人は、妹だと思えなかった。みるみる内に涙は容量を満たし、頬を濡らしていった。拭おうと手を伸ばしたが、避けられるのではないかと、ゆっくりと膝の上に戻した。
「お兄ちゃんは、どんな人でしたか…?父は、母は、どんな人でしたか…っ?」
今日はゆっくり話をしよう。
泣いてもいい、拒んでもいい、受け入れられなくてもいい、理解できなくてもいい。
ただ、僕達を巡り会わせてくれた両親を、恨んでほしくはない。
『兄さんは、父さんに似て、不器用で逞しい人だった。母さんに似て、優しくて強い人だった。』
『父さんは、決して万全な状態ではなかったけれど、母さんを支えてくれたし、僕達を守ってくれた。母さんは、病弱だったけれど、ずっと僕達を抱き締めてくれた。細い腕で、毎晩抱き締めてくれた。君を、〇〇ちゃんを身篭っていた時だって、僕達を、〇〇ちゃんを、包み込んでくれたよ。』
明けない夜は無い。星が見えなくとも、月が欠けていようと。
瞳を閉じて、ただ、じっとしていれば、必ず誰しも朝を迎える。
カーテンの隙間から零れる光に照らされた彼女は、笑いながら言った。
「私にも、家族が、“いた”んですね…」
『“いた”んじゃないよ、今も“いる”よ。ここに。』
振り払われることなく重ねた両手は、指先が冷えていた。
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