冷泉堂大学剣道部改め剣道サークル

Karasumaru

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赤備え

S

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私は立ち上がると、再び中段に構えた。すると北村雄平が待っていたかのように飛び込んできた。嵐のように激しい面打ちだった。北村の竹刀が私の面を直撃した。

会場が沈黙に包まれた。

三人いる審判の一人が有効打を認めた。主審はもう一人の審判の判断を待つ。二人目の審判は有効打を認めなかった。主審が二本の旗を右手で真上に上げた。この仕草は「合議」を意味する。つまり今の面打ちが有効かどうかの審議だ。

三人の審判が時折ジェスチャーを交えて議論している。数分におよぶ激論の末、三人の審判はもとの位置に戻った。

そして、主審が「取り消し」を宣告した。冷泉堂大学陣営から安堵の溜息が漏れた。
一方の京仙院大学の剣道部員たちは悔しがった。

「はじめ!」
主審が試合を再開した。そのとき、冷泉堂大学陣営から怒声が上がった。
「おい、武田!目を覚ませ!てめぇの実力はそんなもんじゃねえだろ!私がどんな思いで現役復帰したか分かっとんのか、ボケ!」

私は驚いて我が剣道サークルの面々を見渡した。怒声を上げたのは、私が愛する佐々木由紀マネージャー改め選手であった。

会場全体が静まり返る。

すると今度は一転顔を赤らめて、
「好きだから」
と言った。

佐々木由紀は究極のツンデレだった。

剣道部改め剣道サークルのメンバー全員が唖然とした表情で佐々木由紀マネージャー改め選手を見ている。ダンディー霧島だけは涙目であった。

その後、ダンディーは私の方を恨めしそうな目で睨み、念仏を唱えるようにぶつぶつと何かを口走った。私の場所からはダンディーが何を言っているのか分からないが、もう何を言っているのか知りたくなかった。恐らく私は末代まで呪われるだろう。

周りの視線に気づいた佐々木由紀は深呼吸すると、再び平安神宮全体が揺れるかのような大声で、
「おい、武田!そこにいるもうアホをぶっ潰しやがれ!」
と叫んだ。

私は思った。
『分かったからもう黙ってくれ、佐々木さん。これ以上あいつを刺激しないでくれ』
私の目の前で竹刀を構える北村は、怒りで身体が小刻みに震えていた。しかし佐々木由紀の暴走は止まらない。止まらないどころかエスカレートする一方だ。
「おい、武田!そこにいるボケは男尊女卑の塊だ!何が、「オレは大和撫子が好きなんだよ」だ、アホ!」
佐々木由紀は北村の口調を真似しながら言った。あまりにも似ていたため、私はクスっと笑ってしまった。
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