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神様の旅
神有祭日本神様会議
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「おい、イエヤス!まっことおぬしは太りすぎぜよ!」
「なんだと!リョウマ!そもそもお前がこんなに小さな車を借りたからいけないんだろうが」
「おぬしら、うるさくてマロは眠れんぞ」
「ミチザネ!お前は助手席で地図を見てろ」
三人の若い男達が小さな軽自動車の中で口喧嘩をしている。あまりの車内の熱気にフロントガラスが曇り始めてきた。
イエヤス、リョウマ、そして、ミチザネ。。。
どれも聞いたことがある名前ではないだろうか?聞いたことがないとしたら、日本の歴史の授業をもう一度受け直した方がいい。
そう、イエヤスとは江戸幕府を開いた徳川家康、リョウマとは日本の近代化に貢献した坂本龍馬、そして、ミチザネとは学者、そして、政治家として活躍した平安時代の貴族の菅原道真その人である。
この有名な偉人達がなぜか軽自動車のなかで罵り合っているのだ。
きっと様々な「?」が浮かんでいるのではないだろうか。確かにおかしな話だ。彼らに接点はないはずである。そもそも、彼らはそれぞれ異なる時代を生きた偉人である。イエヤスとリョウマは共に江戸時代に活躍したが、ご存知のとおりイエヤスは江戸幕府を開いた将軍で、リョウマは幕末に大車輪の働きをした人物だ。二人が同じ車に乗ることは不可能である。そもそも江戸時代にはガソリンで走る車などは存在しないはずである。そして、その車には平安貴族のミチザネこと、菅原道真も同乗している。やはり、ありえない。
しかし、現実として、イエヤス、リョウマ、そして、ミチザネは令和の時代に軽自動車を駆り、社内で偉人らしからぬ小競り合いを展開している。
何が起きているのだろうか?
それでは、そろそろ種明かしをしよう。その前に、まずはこの三人のくだらない喧嘩を運転席で聞いている私自身について紹介しておく必要があるだろう。
私の名は大国主大神である。縁結びの神社として有名なあの出雲大社の祭神である。
私は年に一度我が出雲大社で神在祭を主催している。神在祭とは日本全国の神社に祀られている神様が一堂に集い、翌年の日本について議論を繰り広げる会議である。ホスト神社の神様である私は毎年議長として会議の進行役を務めているが、今年、この会議が珍しく紛糾した。あまり喜ばしいことではないが、神在祭に参加する神様達にとってこのイベントは慰労旅行に近いものがある。議論といっても内容はないに等しい。最後に議長の私が、「来年も人間さんたちには自力で頑張ってもらいましょう」と言い、人間ガンバレ宣言を採択して閉会することが慣例になっている。
しかし今年の会議は異なる展開を迎えた。まず参加する神様のメンバーの顔ぶれが例年とは違った。元ニン、つまり、元々は人間であったものの、死後に神社に祭神として祀られた神様が3柱も参加していたからだ。ちなみに神様は人ではなく柱と数える。それが冒頭で喧嘩をしていた徳川家康(日光東照宮)、坂本龍馬(霊山護国神社)、そして、菅原道真(北野天満宮)である。
まず口火を切ったのは徳川家康であった。
「今年は人間たちはとても苦しみました。来年は是非我々が力添えし、彼らが笑って過ごせる一年にしましょう」
一瞬会場が静まり返り、その後、ヒソヒソ声の会話が至る所で始まった。しかし、所詮は他人事である。家康の発言を支持する声はなかなか上がらなかった。それどころか、
「パワーを使うと疲れるから嫌じゃ」
「そんなことしたら人間はつけあがるだけだ」
など、次々に野次が飛び始めた。
私が野次を飛ばす神様を注意しようとしたその時、黒袴をまとい、両腕を背中の後ろで組んだ神様が立ち上がった。そして、
「家康殿の言う通りやき。助けるべきぜよ」
と土佐弁で上から目線で訴えた。坂本龍馬である。再び会場が静まり返る。すると今度は、
「マロも賛成じゃ。今年ほど神頼みをする人間が多い一年はないでごじゃるよ」
黄緑色の雅な和服を着こなし、烏帽子をかぶった色白の男が、扇子で仰ぎながら、甲高い声でさらに上から目線で告げたのであった。菅原道真である。
「なんだと!リョウマ!そもそもお前がこんなに小さな車を借りたからいけないんだろうが」
「おぬしら、うるさくてマロは眠れんぞ」
「ミチザネ!お前は助手席で地図を見てろ」
三人の若い男達が小さな軽自動車の中で口喧嘩をしている。あまりの車内の熱気にフロントガラスが曇り始めてきた。
イエヤス、リョウマ、そして、ミチザネ。。。
どれも聞いたことがある名前ではないだろうか?聞いたことがないとしたら、日本の歴史の授業をもう一度受け直した方がいい。
そう、イエヤスとは江戸幕府を開いた徳川家康、リョウマとは日本の近代化に貢献した坂本龍馬、そして、ミチザネとは学者、そして、政治家として活躍した平安時代の貴族の菅原道真その人である。
この有名な偉人達がなぜか軽自動車のなかで罵り合っているのだ。
きっと様々な「?」が浮かんでいるのではないだろうか。確かにおかしな話だ。彼らに接点はないはずである。そもそも、彼らはそれぞれ異なる時代を生きた偉人である。イエヤスとリョウマは共に江戸時代に活躍したが、ご存知のとおりイエヤスは江戸幕府を開いた将軍で、リョウマは幕末に大車輪の働きをした人物だ。二人が同じ車に乗ることは不可能である。そもそも江戸時代にはガソリンで走る車などは存在しないはずである。そして、その車には平安貴族のミチザネこと、菅原道真も同乗している。やはり、ありえない。
しかし、現実として、イエヤス、リョウマ、そして、ミチザネは令和の時代に軽自動車を駆り、社内で偉人らしからぬ小競り合いを展開している。
何が起きているのだろうか?
それでは、そろそろ種明かしをしよう。その前に、まずはこの三人のくだらない喧嘩を運転席で聞いている私自身について紹介しておく必要があるだろう。
私の名は大国主大神である。縁結びの神社として有名なあの出雲大社の祭神である。
私は年に一度我が出雲大社で神在祭を主催している。神在祭とは日本全国の神社に祀られている神様が一堂に集い、翌年の日本について議論を繰り広げる会議である。ホスト神社の神様である私は毎年議長として会議の進行役を務めているが、今年、この会議が珍しく紛糾した。あまり喜ばしいことではないが、神在祭に参加する神様達にとってこのイベントは慰労旅行に近いものがある。議論といっても内容はないに等しい。最後に議長の私が、「来年も人間さんたちには自力で頑張ってもらいましょう」と言い、人間ガンバレ宣言を採択して閉会することが慣例になっている。
しかし今年の会議は異なる展開を迎えた。まず参加する神様のメンバーの顔ぶれが例年とは違った。元ニン、つまり、元々は人間であったものの、死後に神社に祭神として祀られた神様が3柱も参加していたからだ。ちなみに神様は人ではなく柱と数える。それが冒頭で喧嘩をしていた徳川家康(日光東照宮)、坂本龍馬(霊山護国神社)、そして、菅原道真(北野天満宮)である。
まず口火を切ったのは徳川家康であった。
「今年は人間たちはとても苦しみました。来年は是非我々が力添えし、彼らが笑って過ごせる一年にしましょう」
一瞬会場が静まり返り、その後、ヒソヒソ声の会話が至る所で始まった。しかし、所詮は他人事である。家康の発言を支持する声はなかなか上がらなかった。それどころか、
「パワーを使うと疲れるから嫌じゃ」
「そんなことしたら人間はつけあがるだけだ」
など、次々に野次が飛び始めた。
私が野次を飛ばす神様を注意しようとしたその時、黒袴をまとい、両腕を背中の後ろで組んだ神様が立ち上がった。そして、
「家康殿の言う通りやき。助けるべきぜよ」
と土佐弁で上から目線で訴えた。坂本龍馬である。再び会場が静まり返る。すると今度は、
「マロも賛成じゃ。今年ほど神頼みをする人間が多い一年はないでごじゃるよ」
黄緑色の雅な和服を着こなし、烏帽子をかぶった色白の男が、扇子で仰ぎながら、甲高い声でさらに上から目線で告げたのであった。菅原道真である。
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