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【三ノ章】闇を奪う者
第三十三話 蒼き殺意は享楽に微笑む
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……ダメだ、止まるな、動け。
思考しろ、身体に反映させろ。あれは俺達を殺す刃だ。
当たれば、間違いなく死ぬ。
最善の為に──動けッ!
「ッ、エリック!」
「うおっ!?」
指先に感覚が戻った。頭の奥の熱が軋む身体に伝播し、隣で棒立ちしていたエリックを蹴り飛ばして飛び退く。
眼前に振り下ろされた剣は蒼い軌跡を描き、アスファルトを深々と抉る。
……ただの武器だと思ってはいなかったが、認識が甘かった。
舐めてかかったら終わりだ。疲労した身体に鞭を打って、ロングソードを引き抜いて斬りかかる。
「シッ!」
ズレたフードの下。吊り上がった口角をそのままに、男は二本の剣でロングソードを受け止めた。
火花が散る。そのまま体重を掛けて、鍔迫り合いに持ち込む。
「クロト!」
「手を出すな!」
走り寄ろうとしていたエリックに叫ぶ。
「こいつの相手は俺がやる! お前は動ける奴らと一緒に負傷者を連れて逃げろ!」
「だけど……」
「いいから早く行け! こんなところで死にたくないだろッ!!」
さっきの奇襲に反応できなかったエリックがいてもどうにもならない。
荒く言葉を掛けてでも、逃げて貰った方がいい。
少しの逡巡の後、エリックは一言謝罪をして走っていった。
「ハッ、随分と優しいじゃねェか。てっきりオマエも一緒に逃げるかと思ったぜ」
「怪しい男からとはいえ、せっかく指名してくれたんだ。ダンスの相手がいなくなったら困るだろ?」
充分に離れたことを確認してから踏み込み、男を突き飛ばす。
外套を靡かせ、男は軽快に着地した。
「でも不公平じゃないか? お前は俺の名前を知ってるのに、俺はお前の名前を知らない。ぜひ自己紹介してもらいたいんだけどな」
避難が終わるまで少しでも時間を稼ぐ。男の目的は知らないが、俺が狙いだというのは分かっているんだ。だったら精々利用してやる。
俺の言葉に、男はそれもそうか……、と小声で呟く。
そしてフードが外され、男の顔が露わになる。
端正な顔立ちでありながらその目は鋭利な刃物のように鋭く、底の見えない飢えを宿していた。
軽くウェーブが掛かった髪が風に揺れ、精悍な顔にどこか奇妙な印象を抱かせる。
それを含めて全身から漂わせる人間離れした雰囲気が、声に出さずとも只者ではないと主張していた。
──圧倒される。眼前に佇む男は、正しく強者だった。
「シオン、ただのシオンだ。ここに居るオレは、な」
「……その態度で偽名か、って疑う方が失礼だな。悪い、一瞬だけそう思っちまった」
「オイオイ、これから殺し合うってのに呑気な野郎だな。そんな調子じゃ早々に死んじまうゼ?」
「あれ? おかしいな。そうなると俺はお前と面向かってもさほどビビってないって事になるな。いやぁ、強キャラな雰囲気出してる割にさては対して強くないんじゃないの?」
軽薄な笑みが挑発してきたので、お返しにアメコミヒーロー張りの──もうちょっと気の利いた挑発を返すのかもしれないが、リスペクトしたセリフを返す。
即座に空気が凍る。視線が交わり、逸れて、蒼の線が首元に奔った。
反射的に身体が動く。構えたロングソードから二度の衝撃が腕を通り抜け、痺れを残した。
あと数センチ。寸前で防がなければ、首と胴体が切り離されていただろう。
そもそも攻撃を予測して武器を置けなかった時点で、シオンの実力を把握できる。
「だったら、試してみろよ……オレの力をッ!!」
「っ!」
今まで対峙してきたどんな相手よりも感じる、濃密な死の気配。
全身を襲うおぞましい感覚を振り払って、俺は強く、剣を握り締めた──。
「ハレヴィ、リオル!」
「エリックか! あの魔導人形共はどうなった!? こっちはサイネが負傷者の救援に来てくれて、少しは立て直せたんだが……」
「魔導人形は全員倒した──が、その話は後にさせてくれ! 今はもっとヤバい奴が襲撃してんだ! 本部の救援が到着するまでに負傷者を避難させるぞ!」
困惑した様子で顔を見合わせた二人は、直後に響いた金属を打ち付けあう音に気づいたようだ。
「聞こえただろ? 今はクロトが時間稼ぎをしてくれてるが、どれくらい持つかは分からねぇ。それにこのままここに居れば、いずれはあいつらの戦闘に巻き込まれちまう」
「サイネが言ってた人、だよね? 助けに来てくれてたのは分かってたけど……というか、だったら早くしないと……!」
「よし──リオル! 君は結界の展開を維持したまま移動してくれ。俺とエリックは出来るだけ多くの負傷者を担いでその後ろをついていく。そしてサイネが安全を確保している場所まで全員を運んだ後は、継続して負傷者の救護に回る。それでいいな?」
「ああ。さっきよりも音が激しくなってやがる。早くここを離れるぞ」
近くに居た数人を担ぎ、最後にルーザーの足首を掴んで引き摺りながらリオルの先導についていく。
クロト、頼むから無事でいてくれよ……!
鋭く、速く、重く。
いくつもの衝突を重ねても、勢いは止まらない。
練度も、キレも、身のこなしも。要所に見える粗削りな部分を除いても、自分の戦いを進めていく要素をシオンは全て兼ね備えていた。
加えて異常なまでに闘争を欲しているからこそ、行動の隙を無くし、流れるような繋ぎを生み出している。
蒼の双剣が絶え間なく振るわれているのが何よりの証拠だ。
……勝てない。仮に俺も双剣を使ったとしても、きっと今のように防ぐので精一杯になる。
乱れた呼吸のリズムを整えようと一瞬、動きを止め──明確に命を奪い取る剣閃が迫った。
奥歯を噛み締めて、数度。黒と蒼が交差し、最後に黒が押し切られた。
蒼の剣線が閃く。容赦なく肩を切り裂かれ、血飛沫が空を舞う。
焼けるような鈍痛が身体を支配して動きが止まった。いや、止めるな。死ぬぞ。
「ッ──!」
思考を切り替える。肉体の記憶をトレースした血液に傷を縫い合わせ、アスファルトを蹴る。
振り向き様に見えたシオンの笑みが何を意味しているのか。分からずに高速化した身体で高速道路を縦横無尽に駆ける。
しかしこれまで疲労の蓄積が徐々に思考を蝕む。邪魔しないでくれ、頼むから。
そんな心中の懇願は聞き入れられず、膝が折れた。速度を保ったまま併設された線路の上に転がる。
砕石が肌を裂き、衝撃を返した。頭から垂れた血が落ちる。
なんとか立ち上がろうとして──脇腹に走った衝撃によって阻止された。
視界がチラつく。蹴られたと認識した途端に、肺の中の酸素が全部吐き出された。
「ハッハァ! どォした、もっともっと気張れよ!!」
蒼の双剣を弄びながら、シオンは狂ったように笑う。
気配を感じなかった。いつの間に接近していたんだ。
ズキズキとした痛みと疑問に揺さぶられ、倒れる訳にもいかず、立ち上がってロングソードを構える。
一瞬の間も無く、シオンの姿がブレた……いや、視界に残らず消えた。
そして真横から振り抜かれた剣をロングソードで防ぐ。衝撃で弾かれながら、右から左からと放たれる閃きをかろうじて逸らす。
「お前、なんなんだよ、それはッ!?」
「いいだろォ? こいつの限界はこんなもんじゃねェぜ?」
笑みを絶やさず、蒼の双剣で連撃を叩き込まれる。
シオンの言葉通りに受け取れば、気配や姿を感じなくなるのは蒼の双剣が持つ力が原因だ。
仄かに、呼吸をしているかのように蒼く明滅する双剣。
可変兵装にも似た機械的な外見。組み立てた歯車から飛び出した刀身。
魔力とは違う、肌で感じ取れる力。理解を拒んでも強引に理解させられる。
普通の武具ではないとは分かり切っていた。だが、そうだとしても、この双剣はあまりにも不気味過ぎる。
「例えば──こんな事だって出来ちまうんだからなァ!」
「っ、また消え……!」
力の拮抗が消失し、体勢が崩れる。
どこに行った。周囲を見渡そうと首を回して……待て、嘘だろ?
なんで、俺は空中に浮かんでるんだ? さっきまで線路の上に居たはずだ。なのに目線はビルの屋上と同じ?
何が起きた。何をされた。
「身体の自由が利かねェってのは、気分が悪いよなァ?」
「ぐっ!?」
混乱した意識の中。左腕の鋭い痛みがシオンの存在を気づかせた。
視線を向ける。蒼い剣が肌を裂き、肉を絶ち、血を滴らせ、貫いていた。
遅れて熱が伝播し、顔が火照る。
まずい、このまま引き抜いて……いや、利用してやる!
血液魔法で止血し、その血で剣が抜けないように縛り付けて……!
「あ?」
ロングソードを逆手に持った手で胸ぐらを掴み。
不思議そうに眉を寄せたシオンの顔に。
「──あああッ!」
「ごっ!?」
全力で頭突きをかます。
さすがに想定外の行動だったのか、間抜けな悲鳴と共に刺していた剣を手放して落ちていった。
はっはっは! どうだ、わざわざアクセラレートで加速して威力を高めてやったぜ! こちとらやられっ放しで鬱憤が溜まってたんだよ!
ああでも俺も落ちるってか結構高く飛ばされてたのか地面が遠いってかこの速度で落ちたら死ぬんじゃないの待ってこんなのどうすれば……あっ、そうだ!
「ビルの壁に……!」
止血していた血液を杭付きのロープに変化させて、伸ばし、線路脇のビルに突き刺す。
体重を支える両腕に引き裂かれるような激痛が奔る。
苦痛で狭まる視界に、破片を散らして削れていく外壁が見えた。修理費とか請求されないよね? 大丈夫だよね!?
見当外れな心配が思考を埋めていく。そして、ようやく落下が止まりかけて──杭が外れた。
「嘘ぉ!?」
しかも全部だ。突然の事で血液も操作できなかった。
悲鳴も上げれずに墜落。線路のレールが背中に直撃。息が止まり、のたうち回る事になったが、頭は庇えたし落下の勢いで剣が抜けたから良しとしよう。
でも、ダメだ。血液はなんとか回収したけど、魔力を練る程の気力が無い。
連戦に次ぐ連戦で疲労が溜まり過ぎてる。本音を言えばこれ以上動きたくない。
しかし、じっとしているのもマズい。シオンがあの程度でやられる訳が無い。
どれだけ武器を振るっても息切れすら起こさない並外れた体力。
見た目からは想像も出来ない人外染みた膂力。
蒼の双剣が持つ力とやらを利用した戦闘スタイルを実現させる技量。
加えて何故かは分からないが強者──強くもない俺に執着しているように見えるのは気のせいだとしても、戦う事に喜びを感じてやがる。ああいう思考回路を持つヤツほど、厄介な相手はいない。
──やってられるかぁ! あんなのに目を付けられるとか何なの!? 普段の行いが悪いからか!? そんなに悪い事してないぞ! せいぜい教頭先生が大事にしていた花瓶を割ったぐらいしか身に覚えがない!
何より一番注意しなければいけないのは双剣の能力だ。ある程度の予想は立てているとはいえ、確信が持てないし、その片割れが身近にあるというのは非常に気が休まらない。
早急にこの場を離れた方が身の為に…………なんか、地面が揺れてるような気が……?
「……おい、冗談だろ?」
傾けた視界に汽笛を鳴らす魔導列車が迫ってきていた。直線の為か、かなりの速度だ。
いやいやいや、線路の隣で爆炎が上がってたり戦闘が起こってるのに通常運行とかバカじゃないのか!? 運転見合わせしてから走行出来るか判断しろよ常識的に考えて!
やはりここから離れないと。そう思って身体を起き上がらせようと力を込める。
筋肉が、骨が軋む。開いた傷口から垂れた血を払って、蒼の剣をレール上から蹴飛ばして跳躍する。
直後に風を引き起こしながら列車が通過。あと数秒、遅れていたら潰れたザクロになる所だった。
残り少ない魔力で身体を強化し、ビルの壁を蹴って高速道路に戻って──、
「やってくれるじゃねェか……なあ?」
「──はっ」
聞こえるはずの無い声に思考が止まる。身体も、動かなかった。
ただ、声のした方に視線を向ける。それだけで精一杯だった。
口の端から流れる血を舐め、シオンは背中の翼を羽ばたかせる。
黒い蝙蝠羽だ。翼膜は向こう側が見える程に薄く、羽の先には短いながらも鋭利な爪が伸びている。
ゆっくりと流れる常識外の光景に気の抜けた吐息が漏れた。確かにエルフや獣人がいるファンタジーな世界なんだから、翼を持った種族が居たって不思議じゃない。
これまでの生活で亜人のほとんどには見慣れたと思っていたけど……翼を持った種族は初めて見た。
だが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
こちらは蓄積したダメージのせいで、現状は気合で動いてるようなものだ。
反面、相手は体力気力共に余裕があり、翼を持つ種族であり、空中を自由に動き回れる。
……つまり、今、この瞬間。この場所はシオンの独壇場になったのだ。
「っ!!」
気づいた時には遅かった。
シオンの瞳が歪んだかと思えば、視界がブレる。
次いで感じた、全身を切り裂かれる痛み。そして流れるような動作で踵落としが繰り出された。
あまりの激痛に息が止まり、意識を手放さないように歯を食いしばる。紡いだ思考が身体を巡り、軽々と命を奪う重撃をロングソードで受け止め──切れず、吹き飛ばされた。
風を切る音が。後ろに延びる視界が。防いだロングソードが肩口に押し込まれ、噴き出した血が。
どれもが他人事のように思えてしまった。そんなはずは無い。分かっている。
ただ、その事実だけが、身体を硬直させる。受け身を取る事が出来ず、強い衝撃が全身を打ち付けた。
何かにぶつかったようだ。暗がりの中、ひしゃげた金属には血が付着していて、力を入れようにも何本か骨を折っているらしく、まともに身動きが取れない。
どんな馬鹿力で蹴りやがったんだよ。悪態を吐く代わりに粘ついた血液が溢れ出した。
暗く、狭く。周囲には何かの積み荷が散乱している事から、トラックの荷台に叩き込まれたのだと気づけた。
……棺桶の中ってこんな感じなのかな。
「っ、はあ、はっ……がほっ」
ちくしょう、息をするのもキツい。なんでこんな目に合わなきゃいけないんだ。
やっぱり見栄を張らずにエリックと一緒に逃げればよかった。時間を稼ぐなんて言っておいてこの様だ。
でも皆を巻き込む訳にはいかないし、シオンの狙いが明確に分かっていたからこそ、ここまで粘る事ができた。
「だけど、少し、休ませてくれ……」
傷を治せるほどの魔力も、体力も無い。持ってきたポーションは使い切った。スキルを使えば動けるかもしれないが、傷口から身体が裂けると、嫌でも理解させられる。
立て続けに発生したイレギュラー全てに首を突っ込んだせいで身体が悲鳴を上げていた。
限界なんて何度でも超えられるものらしいが……超えたら死ぬな、これ。
だが、このままではシオンに殺される。追撃してこないのは気になるが、何か策を講じなければいけない現状では有り難い。
……せめて、あの双剣の能力に対抗できれば、何か変わるかもしれない。
…………そういえば、シオンに襲撃される前に通話してきた男が何か言ってたな。
何だっけ? 確か──、
『君なら選ばれるはずだよ。暴虐を振るう烈火の如き紅の意思に──』
「……紅の、意思」
霞む視界の奥。俺がぶち抜いた穴から光が差している。
──だが、それとは別に。
薄く、しかし確かに明滅を繰り返す光。
それが漏れ出している積み荷がカタカタと揺れ出した。
倒れ伏した身体を引き摺って近づく。厳重な金属製の箱の封を解き、中身を取り出そうと身を乗り出し、そのまま箱ごと転がしてしまった。
「これ、って……」
霧が掛けられていた思考が晴れる。同時に、思い出した。
あの双剣を見た時に抱いた既視感の正体を。
実際にこの目で見た訳ではない。それでも、資料で確認したアーティファクトの外見と似ていたように思えたのだ。
仄かに紅の明滅を繰り返す、幅広で長い片刃の刀身。
調査に関わった全てを狂わせ、柄に彫られた僅かな古代文字を解読して付いた名称が『狂騒の魔剣』。
蒼の双剣──こちらも合わせて紅の大剣と呼ぶべきか──と類似しているが、こちらはどこか有機的な印象を抱かせてくる。
仮に、このアーティファクトが蒼の双剣の同類で。
もし、これが本当に、通話の男が言っていた紅の意思だとすれば。
これを手にする事で、シオンに対抗できるのだとしたら。
……迷ってる暇は無い。
身体は限界だ。意識も朦朧としている。きっと長くは動けない。
──それでも、負けたままでいるのは気分が良くない。こっちにだって意地がある。
「……っ」
歯を噛み締め、意を決して。
俺は、紅の大剣に手を伸ばした──。
「チッ、喰えねェ野郎だ」
街灯の上に着地し、クロトを叩き込んだトラックの荷台に注意を向けつつ、斬られた自分の翼を見つめる。
まさか刃先で翼を斬り付けてから踵落としを防ぐとはな。
最初はあまり食い応えの無い奴だと思っていたが、双剣の能力に徐々に適応し反撃までしてくるようになるのは意外だった。
……クロトは戦いの中、異常な速度で成長できる人間だ。
相手の実力が上であればあるほど洗練され、無駄のない動きで対応してくる。
「こんなもんで、終わりじャないだろ?」
抑えきれない喜びが顔に出る。強すぎる訳でもなく、弱すぎる訳でもない。
自分と同等の実力に至れる人間がいる。それが分かった。
あいつなら、きっと──。
『なんで、父さんと母さんが死んじゃったの……? 私が悪い子だったから……良い子にしてなかったから……?』
『違う、違うッ! 二人はオマエを……!』
『私が──殺したの……?』
想起される忌々しい惨劇を振り払い、改めてトラックの方を見る。
その瞬間。全身の肌がざわつき、思わず息を飲んだ。次にトラックから溢れ出した紅が視界を埋め尽くす。
目を細め、見つめた先には──紅に輝く大剣を空に翳し、血を垂らしながらも立ち上がるクロトの姿があった。
こいつは夢か? いいや現実だ。
証拠に身体の奥が熱くなってきた。双剣が激しく明滅し、あの大剣は同類だと騒ぎ始めている。
だったら、アイツもオレと同じ選ばれた者って事か!?
「心が躍るなァ……!」
双剣を打ち合わせて、跳ぶ。
翳した大剣とロングソードを構えたクロト目掛けて振り下ろす。
耳障りな金属音と頬を掠める火花。
それが、第二ラウンド開始の合図だった
思考しろ、身体に反映させろ。あれは俺達を殺す刃だ。
当たれば、間違いなく死ぬ。
最善の為に──動けッ!
「ッ、エリック!」
「うおっ!?」
指先に感覚が戻った。頭の奥の熱が軋む身体に伝播し、隣で棒立ちしていたエリックを蹴り飛ばして飛び退く。
眼前に振り下ろされた剣は蒼い軌跡を描き、アスファルトを深々と抉る。
……ただの武器だと思ってはいなかったが、認識が甘かった。
舐めてかかったら終わりだ。疲労した身体に鞭を打って、ロングソードを引き抜いて斬りかかる。
「シッ!」
ズレたフードの下。吊り上がった口角をそのままに、男は二本の剣でロングソードを受け止めた。
火花が散る。そのまま体重を掛けて、鍔迫り合いに持ち込む。
「クロト!」
「手を出すな!」
走り寄ろうとしていたエリックに叫ぶ。
「こいつの相手は俺がやる! お前は動ける奴らと一緒に負傷者を連れて逃げろ!」
「だけど……」
「いいから早く行け! こんなところで死にたくないだろッ!!」
さっきの奇襲に反応できなかったエリックがいてもどうにもならない。
荒く言葉を掛けてでも、逃げて貰った方がいい。
少しの逡巡の後、エリックは一言謝罪をして走っていった。
「ハッ、随分と優しいじゃねェか。てっきりオマエも一緒に逃げるかと思ったぜ」
「怪しい男からとはいえ、せっかく指名してくれたんだ。ダンスの相手がいなくなったら困るだろ?」
充分に離れたことを確認してから踏み込み、男を突き飛ばす。
外套を靡かせ、男は軽快に着地した。
「でも不公平じゃないか? お前は俺の名前を知ってるのに、俺はお前の名前を知らない。ぜひ自己紹介してもらいたいんだけどな」
避難が終わるまで少しでも時間を稼ぐ。男の目的は知らないが、俺が狙いだというのは分かっているんだ。だったら精々利用してやる。
俺の言葉に、男はそれもそうか……、と小声で呟く。
そしてフードが外され、男の顔が露わになる。
端正な顔立ちでありながらその目は鋭利な刃物のように鋭く、底の見えない飢えを宿していた。
軽くウェーブが掛かった髪が風に揺れ、精悍な顔にどこか奇妙な印象を抱かせる。
それを含めて全身から漂わせる人間離れした雰囲気が、声に出さずとも只者ではないと主張していた。
──圧倒される。眼前に佇む男は、正しく強者だった。
「シオン、ただのシオンだ。ここに居るオレは、な」
「……その態度で偽名か、って疑う方が失礼だな。悪い、一瞬だけそう思っちまった」
「オイオイ、これから殺し合うってのに呑気な野郎だな。そんな調子じゃ早々に死んじまうゼ?」
「あれ? おかしいな。そうなると俺はお前と面向かってもさほどビビってないって事になるな。いやぁ、強キャラな雰囲気出してる割にさては対して強くないんじゃないの?」
軽薄な笑みが挑発してきたので、お返しにアメコミヒーロー張りの──もうちょっと気の利いた挑発を返すのかもしれないが、リスペクトしたセリフを返す。
即座に空気が凍る。視線が交わり、逸れて、蒼の線が首元に奔った。
反射的に身体が動く。構えたロングソードから二度の衝撃が腕を通り抜け、痺れを残した。
あと数センチ。寸前で防がなければ、首と胴体が切り離されていただろう。
そもそも攻撃を予測して武器を置けなかった時点で、シオンの実力を把握できる。
「だったら、試してみろよ……オレの力をッ!!」
「っ!」
今まで対峙してきたどんな相手よりも感じる、濃密な死の気配。
全身を襲うおぞましい感覚を振り払って、俺は強く、剣を握り締めた──。
「ハレヴィ、リオル!」
「エリックか! あの魔導人形共はどうなった!? こっちはサイネが負傷者の救援に来てくれて、少しは立て直せたんだが……」
「魔導人形は全員倒した──が、その話は後にさせてくれ! 今はもっとヤバい奴が襲撃してんだ! 本部の救援が到着するまでに負傷者を避難させるぞ!」
困惑した様子で顔を見合わせた二人は、直後に響いた金属を打ち付けあう音に気づいたようだ。
「聞こえただろ? 今はクロトが時間稼ぎをしてくれてるが、どれくらい持つかは分からねぇ。それにこのままここに居れば、いずれはあいつらの戦闘に巻き込まれちまう」
「サイネが言ってた人、だよね? 助けに来てくれてたのは分かってたけど……というか、だったら早くしないと……!」
「よし──リオル! 君は結界の展開を維持したまま移動してくれ。俺とエリックは出来るだけ多くの負傷者を担いでその後ろをついていく。そしてサイネが安全を確保している場所まで全員を運んだ後は、継続して負傷者の救護に回る。それでいいな?」
「ああ。さっきよりも音が激しくなってやがる。早くここを離れるぞ」
近くに居た数人を担ぎ、最後にルーザーの足首を掴んで引き摺りながらリオルの先導についていく。
クロト、頼むから無事でいてくれよ……!
鋭く、速く、重く。
いくつもの衝突を重ねても、勢いは止まらない。
練度も、キレも、身のこなしも。要所に見える粗削りな部分を除いても、自分の戦いを進めていく要素をシオンは全て兼ね備えていた。
加えて異常なまでに闘争を欲しているからこそ、行動の隙を無くし、流れるような繋ぎを生み出している。
蒼の双剣が絶え間なく振るわれているのが何よりの証拠だ。
……勝てない。仮に俺も双剣を使ったとしても、きっと今のように防ぐので精一杯になる。
乱れた呼吸のリズムを整えようと一瞬、動きを止め──明確に命を奪い取る剣閃が迫った。
奥歯を噛み締めて、数度。黒と蒼が交差し、最後に黒が押し切られた。
蒼の剣線が閃く。容赦なく肩を切り裂かれ、血飛沫が空を舞う。
焼けるような鈍痛が身体を支配して動きが止まった。いや、止めるな。死ぬぞ。
「ッ──!」
思考を切り替える。肉体の記憶をトレースした血液に傷を縫い合わせ、アスファルトを蹴る。
振り向き様に見えたシオンの笑みが何を意味しているのか。分からずに高速化した身体で高速道路を縦横無尽に駆ける。
しかしこれまで疲労の蓄積が徐々に思考を蝕む。邪魔しないでくれ、頼むから。
そんな心中の懇願は聞き入れられず、膝が折れた。速度を保ったまま併設された線路の上に転がる。
砕石が肌を裂き、衝撃を返した。頭から垂れた血が落ちる。
なんとか立ち上がろうとして──脇腹に走った衝撃によって阻止された。
視界がチラつく。蹴られたと認識した途端に、肺の中の酸素が全部吐き出された。
「ハッハァ! どォした、もっともっと気張れよ!!」
蒼の双剣を弄びながら、シオンは狂ったように笑う。
気配を感じなかった。いつの間に接近していたんだ。
ズキズキとした痛みと疑問に揺さぶられ、倒れる訳にもいかず、立ち上がってロングソードを構える。
一瞬の間も無く、シオンの姿がブレた……いや、視界に残らず消えた。
そして真横から振り抜かれた剣をロングソードで防ぐ。衝撃で弾かれながら、右から左からと放たれる閃きをかろうじて逸らす。
「お前、なんなんだよ、それはッ!?」
「いいだろォ? こいつの限界はこんなもんじゃねェぜ?」
笑みを絶やさず、蒼の双剣で連撃を叩き込まれる。
シオンの言葉通りに受け取れば、気配や姿を感じなくなるのは蒼の双剣が持つ力が原因だ。
仄かに、呼吸をしているかのように蒼く明滅する双剣。
可変兵装にも似た機械的な外見。組み立てた歯車から飛び出した刀身。
魔力とは違う、肌で感じ取れる力。理解を拒んでも強引に理解させられる。
普通の武具ではないとは分かり切っていた。だが、そうだとしても、この双剣はあまりにも不気味過ぎる。
「例えば──こんな事だって出来ちまうんだからなァ!」
「っ、また消え……!」
力の拮抗が消失し、体勢が崩れる。
どこに行った。周囲を見渡そうと首を回して……待て、嘘だろ?
なんで、俺は空中に浮かんでるんだ? さっきまで線路の上に居たはずだ。なのに目線はビルの屋上と同じ?
何が起きた。何をされた。
「身体の自由が利かねェってのは、気分が悪いよなァ?」
「ぐっ!?」
混乱した意識の中。左腕の鋭い痛みがシオンの存在を気づかせた。
視線を向ける。蒼い剣が肌を裂き、肉を絶ち、血を滴らせ、貫いていた。
遅れて熱が伝播し、顔が火照る。
まずい、このまま引き抜いて……いや、利用してやる!
血液魔法で止血し、その血で剣が抜けないように縛り付けて……!
「あ?」
ロングソードを逆手に持った手で胸ぐらを掴み。
不思議そうに眉を寄せたシオンの顔に。
「──あああッ!」
「ごっ!?」
全力で頭突きをかます。
さすがに想定外の行動だったのか、間抜けな悲鳴と共に刺していた剣を手放して落ちていった。
はっはっは! どうだ、わざわざアクセラレートで加速して威力を高めてやったぜ! こちとらやられっ放しで鬱憤が溜まってたんだよ!
ああでも俺も落ちるってか結構高く飛ばされてたのか地面が遠いってかこの速度で落ちたら死ぬんじゃないの待ってこんなのどうすれば……あっ、そうだ!
「ビルの壁に……!」
止血していた血液を杭付きのロープに変化させて、伸ばし、線路脇のビルに突き刺す。
体重を支える両腕に引き裂かれるような激痛が奔る。
苦痛で狭まる視界に、破片を散らして削れていく外壁が見えた。修理費とか請求されないよね? 大丈夫だよね!?
見当外れな心配が思考を埋めていく。そして、ようやく落下が止まりかけて──杭が外れた。
「嘘ぉ!?」
しかも全部だ。突然の事で血液も操作できなかった。
悲鳴も上げれずに墜落。線路のレールが背中に直撃。息が止まり、のたうち回る事になったが、頭は庇えたし落下の勢いで剣が抜けたから良しとしよう。
でも、ダメだ。血液はなんとか回収したけど、魔力を練る程の気力が無い。
連戦に次ぐ連戦で疲労が溜まり過ぎてる。本音を言えばこれ以上動きたくない。
しかし、じっとしているのもマズい。シオンがあの程度でやられる訳が無い。
どれだけ武器を振るっても息切れすら起こさない並外れた体力。
見た目からは想像も出来ない人外染みた膂力。
蒼の双剣が持つ力とやらを利用した戦闘スタイルを実現させる技量。
加えて何故かは分からないが強者──強くもない俺に執着しているように見えるのは気のせいだとしても、戦う事に喜びを感じてやがる。ああいう思考回路を持つヤツほど、厄介な相手はいない。
──やってられるかぁ! あんなのに目を付けられるとか何なの!? 普段の行いが悪いからか!? そんなに悪い事してないぞ! せいぜい教頭先生が大事にしていた花瓶を割ったぐらいしか身に覚えがない!
何より一番注意しなければいけないのは双剣の能力だ。ある程度の予想は立てているとはいえ、確信が持てないし、その片割れが身近にあるというのは非常に気が休まらない。
早急にこの場を離れた方が身の為に…………なんか、地面が揺れてるような気が……?
「……おい、冗談だろ?」
傾けた視界に汽笛を鳴らす魔導列車が迫ってきていた。直線の為か、かなりの速度だ。
いやいやいや、線路の隣で爆炎が上がってたり戦闘が起こってるのに通常運行とかバカじゃないのか!? 運転見合わせしてから走行出来るか判断しろよ常識的に考えて!
やはりここから離れないと。そう思って身体を起き上がらせようと力を込める。
筋肉が、骨が軋む。開いた傷口から垂れた血を払って、蒼の剣をレール上から蹴飛ばして跳躍する。
直後に風を引き起こしながら列車が通過。あと数秒、遅れていたら潰れたザクロになる所だった。
残り少ない魔力で身体を強化し、ビルの壁を蹴って高速道路に戻って──、
「やってくれるじゃねェか……なあ?」
「──はっ」
聞こえるはずの無い声に思考が止まる。身体も、動かなかった。
ただ、声のした方に視線を向ける。それだけで精一杯だった。
口の端から流れる血を舐め、シオンは背中の翼を羽ばたかせる。
黒い蝙蝠羽だ。翼膜は向こう側が見える程に薄く、羽の先には短いながらも鋭利な爪が伸びている。
ゆっくりと流れる常識外の光景に気の抜けた吐息が漏れた。確かにエルフや獣人がいるファンタジーな世界なんだから、翼を持った種族が居たって不思議じゃない。
これまでの生活で亜人のほとんどには見慣れたと思っていたけど……翼を持った種族は初めて見た。
だが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
こちらは蓄積したダメージのせいで、現状は気合で動いてるようなものだ。
反面、相手は体力気力共に余裕があり、翼を持つ種族であり、空中を自由に動き回れる。
……つまり、今、この瞬間。この場所はシオンの独壇場になったのだ。
「っ!!」
気づいた時には遅かった。
シオンの瞳が歪んだかと思えば、視界がブレる。
次いで感じた、全身を切り裂かれる痛み。そして流れるような動作で踵落としが繰り出された。
あまりの激痛に息が止まり、意識を手放さないように歯を食いしばる。紡いだ思考が身体を巡り、軽々と命を奪う重撃をロングソードで受け止め──切れず、吹き飛ばされた。
風を切る音が。後ろに延びる視界が。防いだロングソードが肩口に押し込まれ、噴き出した血が。
どれもが他人事のように思えてしまった。そんなはずは無い。分かっている。
ただ、その事実だけが、身体を硬直させる。受け身を取る事が出来ず、強い衝撃が全身を打ち付けた。
何かにぶつかったようだ。暗がりの中、ひしゃげた金属には血が付着していて、力を入れようにも何本か骨を折っているらしく、まともに身動きが取れない。
どんな馬鹿力で蹴りやがったんだよ。悪態を吐く代わりに粘ついた血液が溢れ出した。
暗く、狭く。周囲には何かの積み荷が散乱している事から、トラックの荷台に叩き込まれたのだと気づけた。
……棺桶の中ってこんな感じなのかな。
「っ、はあ、はっ……がほっ」
ちくしょう、息をするのもキツい。なんでこんな目に合わなきゃいけないんだ。
やっぱり見栄を張らずにエリックと一緒に逃げればよかった。時間を稼ぐなんて言っておいてこの様だ。
でも皆を巻き込む訳にはいかないし、シオンの狙いが明確に分かっていたからこそ、ここまで粘る事ができた。
「だけど、少し、休ませてくれ……」
傷を治せるほどの魔力も、体力も無い。持ってきたポーションは使い切った。スキルを使えば動けるかもしれないが、傷口から身体が裂けると、嫌でも理解させられる。
立て続けに発生したイレギュラー全てに首を突っ込んだせいで身体が悲鳴を上げていた。
限界なんて何度でも超えられるものらしいが……超えたら死ぬな、これ。
だが、このままではシオンに殺される。追撃してこないのは気になるが、何か策を講じなければいけない現状では有り難い。
……せめて、あの双剣の能力に対抗できれば、何か変わるかもしれない。
…………そういえば、シオンに襲撃される前に通話してきた男が何か言ってたな。
何だっけ? 確か──、
『君なら選ばれるはずだよ。暴虐を振るう烈火の如き紅の意思に──』
「……紅の、意思」
霞む視界の奥。俺がぶち抜いた穴から光が差している。
──だが、それとは別に。
薄く、しかし確かに明滅を繰り返す光。
それが漏れ出している積み荷がカタカタと揺れ出した。
倒れ伏した身体を引き摺って近づく。厳重な金属製の箱の封を解き、中身を取り出そうと身を乗り出し、そのまま箱ごと転がしてしまった。
「これ、って……」
霧が掛けられていた思考が晴れる。同時に、思い出した。
あの双剣を見た時に抱いた既視感の正体を。
実際にこの目で見た訳ではない。それでも、資料で確認したアーティファクトの外見と似ていたように思えたのだ。
仄かに紅の明滅を繰り返す、幅広で長い片刃の刀身。
調査に関わった全てを狂わせ、柄に彫られた僅かな古代文字を解読して付いた名称が『狂騒の魔剣』。
蒼の双剣──こちらも合わせて紅の大剣と呼ぶべきか──と類似しているが、こちらはどこか有機的な印象を抱かせてくる。
仮に、このアーティファクトが蒼の双剣の同類で。
もし、これが本当に、通話の男が言っていた紅の意思だとすれば。
これを手にする事で、シオンに対抗できるのだとしたら。
……迷ってる暇は無い。
身体は限界だ。意識も朦朧としている。きっと長くは動けない。
──それでも、負けたままでいるのは気分が良くない。こっちにだって意地がある。
「……っ」
歯を噛み締め、意を決して。
俺は、紅の大剣に手を伸ばした──。
「チッ、喰えねェ野郎だ」
街灯の上に着地し、クロトを叩き込んだトラックの荷台に注意を向けつつ、斬られた自分の翼を見つめる。
まさか刃先で翼を斬り付けてから踵落としを防ぐとはな。
最初はあまり食い応えの無い奴だと思っていたが、双剣の能力に徐々に適応し反撃までしてくるようになるのは意外だった。
……クロトは戦いの中、異常な速度で成長できる人間だ。
相手の実力が上であればあるほど洗練され、無駄のない動きで対応してくる。
「こんなもんで、終わりじャないだろ?」
抑えきれない喜びが顔に出る。強すぎる訳でもなく、弱すぎる訳でもない。
自分と同等の実力に至れる人間がいる。それが分かった。
あいつなら、きっと──。
『なんで、父さんと母さんが死んじゃったの……? 私が悪い子だったから……良い子にしてなかったから……?』
『違う、違うッ! 二人はオマエを……!』
『私が──殺したの……?』
想起される忌々しい惨劇を振り払い、改めてトラックの方を見る。
その瞬間。全身の肌がざわつき、思わず息を飲んだ。次にトラックから溢れ出した紅が視界を埋め尽くす。
目を細め、見つめた先には──紅に輝く大剣を空に翳し、血を垂らしながらも立ち上がるクロトの姿があった。
こいつは夢か? いいや現実だ。
証拠に身体の奥が熱くなってきた。双剣が激しく明滅し、あの大剣は同類だと騒ぎ始めている。
だったら、アイツもオレと同じ選ばれた者って事か!?
「心が躍るなァ……!」
双剣を打ち合わせて、跳ぶ。
翳した大剣とロングソードを構えたクロト目掛けて振り下ろす。
耳障りな金属音と頬を掠める火花。
それが、第二ラウンド開始の合図だった
10
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