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第4章☆前世の2人編
3.一緒に。
しおりを挟む町を後にして、比較的整備された道を進む。人通りもほとんどなくなり、脇道へ入りその先の細い山道を進んで歩く。
さらに足場が悪くなり獣道になった所で、サーチをかけて、よし。大丈夫そう。
「セディ、今から転移で家まで飛ぶからね。落っこちない様に抱きかかえるからね。分かった?」
「ニャー。」
「良い子だね。」
魔法陣の中央から、そして一気に転移をする。
大きな樹の中に作った我が家。
その樹の中とはいえ、空間魔法でかなり広い間取りだ。
外見は、まんま樹なので住居とは思わないだろう。
薬草園はさらに森の奥。
念の為にこの辺り全てに結界を張っている。
所謂、魔石結界だ。
ずっと自分の魔力を放出してたら枯渇してしまうから、魔石は本当に助かるんだよね。
外よりは暖かいけれど。
魔石をポン、ポンと部屋の四隅にある魔石ランプに入れていく。
灯りと、暖房代わりだ。
肩に乗ったまま、珍しいのかキョロキョロと部屋を見ている。
可愛い~な~。
駄目駄目。
元に戻してあげないとね。
「セディ。お疲れ様。
今から元に戻すね。」
魔法陣の上に乗せる。
「うわ。よ、よかった。元に戻れた。」
両手を見たり、頬を触ったり。落ち着きがない。
「ちゃんと、戻すって言ったよ。」
クスクスと笑うと、気まずいのか俯いている。
「とりあえず足の治療をしないとね。あ!先にお風呂に入ろっか。」
「足は痛く無いから大丈夫だよ。」
「足は、一時的に痛みの感覚止めているの。ずっとは止められないんだ。無理して悪化しちゃうでしょ?治らなくなるから。綺麗に洗ってから腫れ止めの薬草を貼るよ。熱も上がるから、食事後に薬を飲んでおこうね。
身体をめちゃくちゃ洗わないと…汚れ過ぎだし。他にも怪我とかあるかも出し。一緒寝るのに、臭いも気になるもの。」
「一緒に寝る?嘘だろ。」
「ベッドは1つしか無いもの。ソファは寝るにはちょっと硬いし小さいしね。雪が溶けたら木材集めてベッド作ろうね。それまで一緒ってこと。それに今日、明日は熱の可能性が高いんだってば。側にいないと看病出来ないでしょ?」
「お、女の人と寝れる訳ない…」
ああ、そこか。
「私は、男だよ。だからお風呂も一緒に入ろうね。なんか君は、大雑把にしか洗わなそうだから。」
「え、水浴びなんて、1人で出来るよ!」
「足が駄目でしょ。あーもう。ウダウダ五月蝿いなぁ。行くよ。それとも、猫の状態で洗う?」
ぶんぶんと首を横に振る。
そんなに嫌かな~黒猫セディは、可愛いのに~。
漸く大人しくなったので、杖代わり支えながら浴室に向かう。
なんか、骨格がしっかりしてる。
ちゃんと食べさせてたら、私より大きくなりそうだなぁ。
さてさて、自慢の浴室なんだよね。
薬湯だから、肌荒れやちょっとした傷に効果抜群なんだよね。
もちろん、誰も入れた事はない。
自慢する相手がいなかったから、ちょっと嬉しい。
「服、脱げる?」
「で、出来るよ!」
「そう?パッパ脱ぎなよ?」
何トロトロしてんのかな?
全部脱いで、脱衣籠に置く。
振り返ると、固まってる。
「どうしたの?
そっか、ズボン脱ぎにくいんだね。手を貸すよ。」
椅子の背に手を置かせて、ズボンを下ろす。
全裸にしたけど、なんか動きが変。
「恥ずかしい?…男同士なのに、照れ屋さんだね。」
しかし、この服汚いなぁ。
お風呂に入っている間に洗浄魔法で、しばらくつけ置きしておこう。
椅子の所に連れて行き、お湯をかけた。
「あちっ。」
「ごめん。すぐ慣れるよ。気持ちいいでしょ。まずは、髪の毛からね。」
早く湯船に浸からせたいけど、なんせ汚れ過ぎだよ。
どうだ、3回も洗えば、髪の毛の色…が変わった。薄汚れた茶色だと思ってた。
「うわ。なに綺麗だね。ハニーブロンドだったんだぁ。じゃあれ全部汚れか。」
このソープは、傷んだ髪にも効果あるけど、もうツヤツヤだ。
鎖骨近くまで伸びているけど、ボサボサ過ぎる。これも後で綺麗にしてあげよう。
皮膚もすごい綺麗になった。垢とか取れたら…あれ?どこか良いところの子息なんじゃ…
「セディって、人攫いに遭ったとか?」
めちゃくちゃ、美少年だ。
「ただの親なし、だよ。」
そっか、君もワケアリなのか。
「イリアって、魔法使いなの?」
「──そうだよ。秘密だよ。町の人に知られたら、ここから出ていくよ。噂は早い。貴族とかに囲われたくないんだ。ま、バレた時はセディともお別れだね。」
「言わない!言わないけど魔法教えて。このまんまじゃ弱いままだから。それに俺…ちょっとは魔力ある、から。」
つまり、平民では無い可能性が高いよね。
魔力持ちは貴族がほとんどだから。
魔力の多さも関係するけど、僅かなら平民でいられる。多ければ囲われ血を繋ぐ道具にされやすい。
囲われる相手次第で、扱いがましかが変わるから…。
魔道具で、奴隷のように扱われる事だってあるのだから。
「まず、薬師を目指そうか?その方が仕事になるから。ついでに魔法を教える。どう?」
「はい!」
「ニャーでも良いよ。」
途端にブスっと膨れる。
可愛いな、本当に。
「いつか、イリア様を猫にしてやる。」
「何だそれ。名前に様を付けても、言葉使いが敬ってないよ。」
「でも、本当に男の人なんですね。あの、年齢は?俺は、10歳くらいだと思うけど…」
「18歳だよ。最近誕生日迎えたんだ。あ、じゃあ同じ日にしよう。10歳おめでとう。弟子なんて初めてだけど、よろしくね。」
可愛い弟子と出逢った最初の日の話。
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