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第4章☆前世の2人編
10.崩壊の足音②
しおりを挟む流石に夕食の時間が過ぎると不安が一気に襲って来た。
「何か、あった?」
町で?森の中で?
それとも、もうここには帰って来ない?
「どうしょう。すれ違うといけないから、手紙を残してから町に転移する?」
ドクドクと心臓の音が煩い。
嫌な、感じがする。
もう、一人前として認めたんだ。
この町の住人なんて問題なく倒せる。例えば、王都の騎士程度なら簡単なはずだ。もちろん、そんな事をする子じゃないけれど。
数十人相手だったら、話は別かも知れないけれど…逃げる手段とかも結構教えたつもりだ。
逃げられない相手?
───王国魔法師とか?
「一対一なら…でも数人いたらキツいかな…。」
ローブを羽織る。
マジックバックに、使えそうな物や着替え、薬、食料を詰め込む。
「無事でいて、セディ。」
転移陣を作り、町へと向かう。
少し離れた場所に転移したから、町民にはバレないはず。
辺りをサーチしても、魔力等の反応は…微々たるものだ。
セディはいないのだろうか?
魔力を隠して認識阻害をしているなら、町の人に聞いても答えてもらえない。
どうする?
急ぎ、町の方へと走る。
あの時みたい。
大丈夫。大丈夫。
セディは、強いもの。
魔法を使うのは、最終手段だから。ただ必死に走る。
「なに、これ?」
建物が壊れてたり、焦げた臭いがする。
でも、人の気配がしない。
みんな、逃げた?隠れているのかな?
「何があったの?」
その小さな呟きに、反応した人がいた。
小さな…声で私の名前を呼んでる?
あの家…少しだけ窓が開いた。
『おおーい…イリアちゃんか?』
『あ、おじさん。』
『ちょっとこっちに、おいで。』
手招きされた。
恐る恐る、おじさんに近づいた。
『あの?一体どうしたの?』
キョロキョロと周りを見渡したおじさんが、物置の方を指差して人目につかないようにと促す。
建物と物置の隙間に身を隠しながら、会話をする。
『イリアちゃんと一緒にいた子。連れて行かれたよ。イリアちゃん…魔女だろ?』
『え?』
『悪りぃ。隠すつもりは、なかったんだよ。ちょっとだけ魔法が使えるんだよなぁ。大したもんじゃないけど。』
『おじさん、が?』
『心配すんな。ちょっと、耳が良くて、逃げ足が早いだけの。まぁ、盗賊くずれだよ。』
『あ、サーチとか?聞き耳とか?』
『そうだ。危険を察知してすぐ逃げんの。その程度の微々たるもん。聞き耳のおかげで、イリアちゃんが魔女ってのは、知ってたよ。訳ありの子だってな。こんな、外れの町にいる奴なんて…それなりになぁ。』
『黙っててくれたの?ありがとう。その、連れて行かれたって本当に?』
『はは。俺みたいなのにお礼なんていらねぇ。なんでもよぉ。あいつは、どこぞの王子らしいぞ。行方知れずになってたらしくてなぁ。魔法師5人と何やら傭兵のような騎士ぽい奴と、お偉いさんがいたよ。』
『そんな。』
『んー怪我とかは、してなさそうだったぞ?相手の方がぼろぼろだったんだがなぁ。』
『なら、逃げれたんじゃ?』
『でもなぁ。迎えなんだから、帰るのも良いとは思ったんだ。』
『──帰るとこが…』
セディには帰る場所が、あったんだ。
『よく分からんけど。なんか言われたんだよ、あいつ。そしたら、ピタリと抵抗をやめたんだよ。』
『何を言われたの?』
『そこはなぁ。阻害がかけられたって言うか。なんか条件でも言われたかもだが…。イリアちゃんの名を一言いったのが聞こえたから、心配になってよぉ。もしかして、イリアちゃんを人質にしたのかと思ってな。無事で良かったよ。だからさ、今のうちに逃げとけ。あいつも、連れて行かれた先で、イリアちゃん居なかったら、逃げて来るだろ?な。』
『人質?私を?』
『ほら、今イリアちゃんがここに無事にいる訳だし。とにかく隠れておきな?な?また、探しにきたら大変だよ。いくらイリアちゃんが強くても、数が多ければ、厳しいだろ?』
『でも、私の為につかまってたら…。』
『いやいや。王子なら、酷い目に合わないだろうからさ。とにかく、イリアちゃんは、さっさと逃げな?しばらく家に戻らねぇ方がいいぞ。
逆に王都に逃げたらどうだ?人の中の方が見つからないんじゃないか?王都なら、魔力持ちも増えるから。』
もう、何を、言われているのかよく分からない。
また、逃げる?
セディに何かあったら?
仮死の薬…持ってないよね?
単なるお使いだったんだから、持ってないよね?
使わないで。
あの国は、クーデターが最近起きたとかなんかそんな話があったはずだ。
何の為に、連れて行かれたの?
おじさんが、まだ何か言ってたけど。
頭を下げて、走り出す。
転移出来そうな場所を探した。
あの国なら、私の住んでた場所を目印に転移出来る。そこから移動すれば、身を隠せるはずだから。
お願いだから、無事でいて。
応援ありがとうございます!
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