【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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第2章 パルムの樹と精霊

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さっさと解呪させないと、俺の立場が悪くなるんだ。
メガネちびじゃなくて、ルナだったな……

小さいくせに歯向かうから、ムカついた。

だからって、怪我をさせたかったわけじゃない。

呪いを受けてから、魔術が暴走するようになった。魔力量が安定せずに急激に減って枯渇しそうになる。
呪い痕に激痛が走ると手が痺れてコントロールが効かない。

精霊の目で診てもらえるように、父上が頼んでくれたんだ。
フォレスト辺境伯に学園生の頃、父上は護衛兼側近をしてもらっていたそうだ。
歳が近かった為、兄のような存在なのだと、言っていた。
口が堅く最も信頼出来る友だからこそ、預けられたのだ。
第1王子が呪われているなど知られてはならない。とりあえず、体調不良での療養になっている。
治療が出来ないか?一縷の望みをかけて辺境まで来る事になった。

フォレスト領は、思った以上に整備されていて綺麗だった。
港もあるからか、活気に満ちていて王都に比べれば小さいけど、治安の良さが際立つ。隣接領のフォーマルハウト侯爵とも関係が良く息子同士も交流している。

それにしても……
『ルナは可愛いから手を出さないで下さいね』
なんて念押しされて、シリウスのに会うのを楽しみにしてたのに、フォレスト辺境伯そっくりで、揶揄われたと気付いて腹が立つ。
可愛い要素がない。
辺境伯にそっくりなんだから、騎士になったら、凛々しくカッコよくなる気はする。
他の兄弟に比べて小さくて華奢な手足とかが可愛いのだろうか?
確か、俺より3歳上のシリウスはルナの兄ダレンと同い年だ。
だから、弟みたいに可愛く感じるのかな?

シリウスは、第1王子の側近候補で俺とも交流がある。
治ったら帰りにフォーマルハウト家に寄って文句言ってやるからな。


ダメだ、やっぱり気になる。
背中は、打身くらいだから、大丈夫って言ってたけど……熱が高いから昨日は会わせてもらえなくて。
謝る事が出来なかった。

それに、血を見た時の異常な反応。胸を締め付けられる様な悲鳴。護衛が、あっという間に抱きかかえて連れて行ってしまった。

馬車の事故の件を聞いた。
トラウマ……だよな。
当たり前か、血だらけの死んだ母親に抱き締められて発見されるまで2日位かかったと言っていた。


あーもう、なんでこんなに気になるんだ。

元気になったら、は優しくしてやるか。

俺の方がデカいんだし。

なんか、落ち着かない。
行き損ねたパルムとか言う樹の所に行ってみるか。

見えているから迷うわけないしな。
部屋に篭っているのも、俺らしくない。

よし、そうと決まれば気分転換だ。


従者も護衛もいらない。
多分、距離を空けてついてくるだろう。

ドアを開けて、フォレスト辺境伯に一言伝えてもらうことにした。
「庭を散策する」

余計なことは、言わなくて大丈夫だろう。


本当に、デカい樹だな。見えてるのに遠い。
チビのくせに案内するとか余計な事言うなよな。
そしたら、怪我なんて……

「はぁ。俺のせいだな」


ようやく樹に近づく。
誰かいる──

光沢のある白いシャツに黒のゆったりとしたズボン。
ズボンは腰帯で巻かれてて、細さが際立つ。

ミルクティー色の柔らかそうな髪に光が当たって、艶やかだ。
肩より長い髪が風に揺れる。


なんだ?
周りが、キラキラしている。

精霊か?

俺は、王家の中でも珍しく宝石眼って呼ばれるサファイアブルーの瞳だ。
王家は青色の瞳が多い。
透明度の高い澄んだ色味を宝石に例える。宝石眼は、見た目だけで無く精霊などの気配を感じ取ることが出来る、特別な瞳の総称だ。他にもルビー、アメジスト、ガーネット色等もある。

あいつの周りの空気が澄んでいて、光の粒がキラキラと見える。

使用人?なわけないな。
騎士見習い?魔術師でもないか。

大樹の側だから小さく見えるのかと思ったけど、実際小さいな。

「おい。そこで何をしているんだ?」

つい、声をかけた。

一瞬肩をビクッとさせ、慌てて振り返った。

色白で──
少しだけ垂れ目の大きな瞳。
エメラルドグリーン──宝石眼だ。

顔が少しだけ紅潮していた。
薄いピンク色の可愛らしい唇。





一瞬で俺の方が真っ赤になった。
ヤバい、なんで俺。顔が熱い。

か、可愛い!!!
誰だ?こんな可愛い子を見た事がない。


俺を見て、目を見開き、慌てて走ってきた。

「レグルス殿下!顔が真っ赤です。どこか具合でも悪いのですか!?」

「なんで、俺の名前を?」
驚いた。なんで俺の事を知っているんだ!?

「当たり前です。王子様なんだから。それより、誰か──早く来て!」
どこからともなく、ザッと護衛が3人姿を現す。

うおっ。

驚いたじゃないか、ビビらせるな。

オロオロしている間に、抱きかかえられた。

「ちょ、ちょい待っ」
なんで、横抱き?お姫様抱っこされてしまった。

「殿下、失礼致します。医務室へ参ります」

護衛がその一言で、この子に一礼をして、ダッシュで邸に向かって走りだした。

うそ。名前、名前が知りたい。

このヤロー離せ!!

あまりのスピードに意識が飛びそうだ。胃が圧迫される。苦しい。

また、会いたい。
可愛い、名前をって──

駄目だ、本当に気持ちわるい……








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