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第8章 スピカの恋愛事情
4身分
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寮に戻り、30分後に待ち合わせて、修練をする。
ソレイユ様は、騎士団長の息子で幼い頃から剣技を鍛えている。
身長も殿下達より高く体格も良いから迫力がある。
力が強いだけじゃ無くて、動きも速い。
俺と練習して、利があるようには思えないけど……続ける事が大事だからって付き合ってくれてて、本当にありがたい。
ソレイユ様との打ち合いはまだ無理だから、動きを見せてもらったり、素振りを見てもらったり。
本当に、勉強は未来の宰相候補に剣技は未来の騎士団長候補に教わっているってめちゃくちゃ贅沢な事なんだよね。
それにしても、わざわざ教室まで来たのは何でだろう?カストル様に伝言は頼んだけれど。
おかげで、マークからの告白は保留に出来た。
俺は好きにならないと付き合えないタイプだったから、話した事もないのは……正直悩むんだよね。
でも。今まで自分が相手を好き過ぎて、我慢していたり、ご機嫌を伺ってきたから駄目だったのでは?と思うようになっていて、せっかくのやり直しなら……好かれている相手と付き合ってみるのも良いのかな?
そんな風にも思ってしまう。
ただ、1番の問題は身分かな。
気軽に付き合えるものなのか?別れたら報復とかあったりするのか?子爵家に何かあっては困る。
この世界でお友達からってあるのかな?
すっかり集中力を欠いてしまった。振っていた木剣は、簡単に弾き飛ばされてしまった。
やばいって、思った時には反応が遅くて、足を払われて地面に倒されていた。
「余裕なの?」
ソレイユ様に倒されて、木剣を突きつけられている。
「すみません。集中出来てませんでした」
手を差し出されて、掴んだ途端に引き上げられる。
「本物の剣じゃなくても、怪我するよ?本気でやらない理由は何?」
騎士団長の子息として、ずっと真剣に訓練して来た人に教わっているのに……何やっているだろう。
「すみません。生まれて始めて……告白されてしまって。なんで俺かな?ってグルグルしてしまって。ははっ。駄目ですね。今日、剣は無理そうです。ランニングを多めにして戻ります。先に戻って下さい。本当にすみませんでした」
頭を下げて、木剣を木の幹に立てかけた。
もう一度、礼をして走り出す。
どこかで浮かれてしまったんだ。
こんな自分でも、好きになってくれる人がいるのかもって。
考えないようにして、思いっきり走った。
流石に走り過ぎた。5周目を終えた時に、軽く流してからゆっくりと木剣の所へ向かうつもりだった。
その途中で声をかけられる。
「はぁ。はぁ。あ、誰?」息苦しい。
「スピカ君だよね?ちょっと話がしたいんだけど」
誰だろう?見た事ないけど。でも新入生っぽくは無い。先輩なのかな?
「はぁ。ご、ごめんなさい。ちょっと息が、また今度、でいいですか?」
頭を下げて、背を向ける。
木剣を取りに行ってから、さっさと帰ろうと思って歩き始めた。無理し過ぎたなぁなんて、背後の人の事なんて全く気にしなかったんだ。
急に背中から抱きしめられて口を塞がれる。
「うっ」
何?ちょっと、待って。
「ちょっと付き合ってくれる?」
走り過ぎて、息が上がっていたから抵抗しようにも力が入らない。酸欠状態の所で口を塞がれた為に意識が遠退きそうになる。
やばい、やばいってって思うのに大した抵抗も出来ない。
─怖い。逃られない。連れていかれたら……
───誰か、助けて。
誰か───
濃紺の髪色が浮かぶ。
カ、カストルさ、ま──助けて。
気を失ったら、不味い。
苦しぃ……クラクラし始めた。
その時、引きずられていた地面がぐらついた。
「う、わ。なんだ!」
土が盛り上がり、植物の蔦のような物が出てくる。
バランスを崩した男が、口を塞いでいた手を外した途端に身体が傾いていく。
倒れかけた所を抱きとめられる。
嫌だ、怖い。離して……身じろぐとさらに抱きしめてきた。
「い、やだ。離して」
「落ち着け、俺だ」
この声……カストル様?
涙が溢れてきた。
「カ、カストルさま、助けて」
「ああ、もう大丈夫だ」
大丈夫?本当に?
「ソレイユ!逃すな!」
ソレイユ様も来てくれてたの?俺は、主人公じゃ無いよ。
なんの、役にも立たないけど。
せめて、ルナ様と弟の為に頑張ろって……
告白されて、浮かれたからなのかな?お前なんて──調子に乗るなって事かな?
震えが止まらない。
「大丈夫だ。ルナの所に行こう。それなら、怖く無いだろう?」
ルナ様?
ルナ様の優しい顔が、思い浮かんだ。
「──は、い」
それだけ言うのがやっとだった。
「ルナの所は安全だから心配するな。連れて行くから、落ちないように捕まって」
ただただ、怖くて安心したくてカストル様にしがみ付いた。離されたく無かった。
口が悪かったりするのに、時々……優しい。
今だけ、許して下さい。
──身分が、違い過ぎる事。
十分過ぎるほど分かっているから。
ソレイユ様は、騎士団長の息子で幼い頃から剣技を鍛えている。
身長も殿下達より高く体格も良いから迫力がある。
力が強いだけじゃ無くて、動きも速い。
俺と練習して、利があるようには思えないけど……続ける事が大事だからって付き合ってくれてて、本当にありがたい。
ソレイユ様との打ち合いはまだ無理だから、動きを見せてもらったり、素振りを見てもらったり。
本当に、勉強は未来の宰相候補に剣技は未来の騎士団長候補に教わっているってめちゃくちゃ贅沢な事なんだよね。
それにしても、わざわざ教室まで来たのは何でだろう?カストル様に伝言は頼んだけれど。
おかげで、マークからの告白は保留に出来た。
俺は好きにならないと付き合えないタイプだったから、話した事もないのは……正直悩むんだよね。
でも。今まで自分が相手を好き過ぎて、我慢していたり、ご機嫌を伺ってきたから駄目だったのでは?と思うようになっていて、せっかくのやり直しなら……好かれている相手と付き合ってみるのも良いのかな?
そんな風にも思ってしまう。
ただ、1番の問題は身分かな。
気軽に付き合えるものなのか?別れたら報復とかあったりするのか?子爵家に何かあっては困る。
この世界でお友達からってあるのかな?
すっかり集中力を欠いてしまった。振っていた木剣は、簡単に弾き飛ばされてしまった。
やばいって、思った時には反応が遅くて、足を払われて地面に倒されていた。
「余裕なの?」
ソレイユ様に倒されて、木剣を突きつけられている。
「すみません。集中出来てませんでした」
手を差し出されて、掴んだ途端に引き上げられる。
「本物の剣じゃなくても、怪我するよ?本気でやらない理由は何?」
騎士団長の子息として、ずっと真剣に訓練して来た人に教わっているのに……何やっているだろう。
「すみません。生まれて始めて……告白されてしまって。なんで俺かな?ってグルグルしてしまって。ははっ。駄目ですね。今日、剣は無理そうです。ランニングを多めにして戻ります。先に戻って下さい。本当にすみませんでした」
頭を下げて、木剣を木の幹に立てかけた。
もう一度、礼をして走り出す。
どこかで浮かれてしまったんだ。
こんな自分でも、好きになってくれる人がいるのかもって。
考えないようにして、思いっきり走った。
流石に走り過ぎた。5周目を終えた時に、軽く流してからゆっくりと木剣の所へ向かうつもりだった。
その途中で声をかけられる。
「はぁ。はぁ。あ、誰?」息苦しい。
「スピカ君だよね?ちょっと話がしたいんだけど」
誰だろう?見た事ないけど。でも新入生っぽくは無い。先輩なのかな?
「はぁ。ご、ごめんなさい。ちょっと息が、また今度、でいいですか?」
頭を下げて、背を向ける。
木剣を取りに行ってから、さっさと帰ろうと思って歩き始めた。無理し過ぎたなぁなんて、背後の人の事なんて全く気にしなかったんだ。
急に背中から抱きしめられて口を塞がれる。
「うっ」
何?ちょっと、待って。
「ちょっと付き合ってくれる?」
走り過ぎて、息が上がっていたから抵抗しようにも力が入らない。酸欠状態の所で口を塞がれた為に意識が遠退きそうになる。
やばい、やばいってって思うのに大した抵抗も出来ない。
─怖い。逃られない。連れていかれたら……
───誰か、助けて。
誰か───
濃紺の髪色が浮かぶ。
カ、カストルさ、ま──助けて。
気を失ったら、不味い。
苦しぃ……クラクラし始めた。
その時、引きずられていた地面がぐらついた。
「う、わ。なんだ!」
土が盛り上がり、植物の蔦のような物が出てくる。
バランスを崩した男が、口を塞いでいた手を外した途端に身体が傾いていく。
倒れかけた所を抱きとめられる。
嫌だ、怖い。離して……身じろぐとさらに抱きしめてきた。
「い、やだ。離して」
「落ち着け、俺だ」
この声……カストル様?
涙が溢れてきた。
「カ、カストルさま、助けて」
「ああ、もう大丈夫だ」
大丈夫?本当に?
「ソレイユ!逃すな!」
ソレイユ様も来てくれてたの?俺は、主人公じゃ無いよ。
なんの、役にも立たないけど。
せめて、ルナ様と弟の為に頑張ろって……
告白されて、浮かれたからなのかな?お前なんて──調子に乗るなって事かな?
震えが止まらない。
「大丈夫だ。ルナの所に行こう。それなら、怖く無いだろう?」
ルナ様?
ルナ様の優しい顔が、思い浮かんだ。
「──は、い」
それだけ言うのがやっとだった。
「ルナの所は安全だから心配するな。連れて行くから、落ちないように捕まって」
ただただ、怖くて安心したくてカストル様にしがみ付いた。離されたく無かった。
口が悪かったりするのに、時々……優しい。
今だけ、許して下さい。
──身分が、違い過ぎる事。
十分過ぎるほど分かっているから。
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