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第9章☆アルとルナ
5ダンス特訓②
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☆アルファルド殿下
カストルの別邸で、ダンスの指導を受ける事になった。
ディオールからの指導の元、ルナとダンスを始めるが、緊張し過ぎのルナからは笑顔がない。
『引き攣ってます』って、仕方ないだろ?王族に公爵家に上位貴族が集まっている。
いくら、友人や幼馴染だとしても、彼らは子供の頃から特訓を受けている。
出来て当たり前のスキルだ。
ルナは熱を出しやすかったし、それほどダンスはしていなかっただろう。苦手だとも言っていた。
だが、思っていたよりずっと綺麗に踊る。兄達とレッスンしていたのか?あまり聞いた事がないが……
変な力が入っているのは、期待に応えようと必死になっているからだな。
ディオールも、多分……ルナなら出来ると思っているから、指示が細かいのだ。細かさゆえに間違えないようにと、ルナはガチガチになっていく。リラックスさせなければと思うのに、視線も合わなくて悪循環になってしまう。
結局、ディオールからのストップで休憩する事になった。
少し、ルナと話そうと思った時。
カストルに俺とディオールが手本を見せろと言われた。
ルナには、幼馴染だとは伝えてある。
「なら、アルの事を分かってる人なら心強いね」
そう言って笑った。
あまり不安にさせたく無かったから、誤解させないように心がけていた。
まさか、ここでダンスしろとか、カストル……余計な事を。
それにルナからもダンスを見たいなんて、確かに見た方が分かりやすいのだろう。この曲は、グランデ流に少しアレンジされているから。
思わず、ため息をつく。
仕方なく、2人で中央に向かう。
「貴方は、第2王子だ。
嫌でもグランデで、お披露目をしないといけない。
私が厳しくする分、ちゃんとルナ様の気持ちの方をリードしてください。
政治利用の婚約者候補にされて迷惑していたのは私も同じです」
「分かっている」
あの頃、伯爵の意見は、絶対で俺もディオールも従うしか無かったのだ。もちろん、伯爵が俺を護る為だったとしても。
幼馴染という、甘いものでも優しいものでもない。
従順に教育する為の程のいい監視役の1人がディオールだった。
俺には、行動制限と他にも監視がついていた。あの日、精霊にからかわれたのか?森に飛ばされて、迷った森で出逢ったのが……ルナだ。
俺の闇属性を肯定してくれた唯一の存在なんだ。
ルナの側に行く為だけに力を付けてきたのだ。
今更、手離したりしない。
伯爵は貴族の嗜みに関してはさらに厳しかった。
ダンスのパートナーとして、当然レッスンしてきたから、癖も分かるし踊りやすい。
だが───手を取りたいのは、お前じゃないし。
「貴方の手を取った、ルナ様を後悔させる気ですか?」
口角が上がる。
「させない」
「ですが──ルナ様の騎士が他にもいそうですよ?」
ディオールが笑う。
気がつけば、ルナとシリウスがダンスをすると言う。
息抜きだと言うダンスは、慣れた曲なのか……ルナがホッとした様にシリウスに身を任せる。
俺とのダンスでぎこちなかった動きは、シリウスのリードで優雅で、軽やかなものに変わった。
歳上のシリウスは流石に上手い。
何より、ルナが自然に楽しそうに笑う。
いつの間にか側に来たレグルスが、ルナ達を見ながら俺に話かけてきた。
「慣れた曲なら──ルナも上手いだろう?
俺達もずっと一緒だったんだ。お前達の関係はどれほどの物か知らないが、ルナにはもっとちゃんと説明しとけ。次のダンスの相手は俺だからな」
何言ってるんだ。
何も、言い訳する事なんて、無い。
無いはずだ。
──それが、駄目だったのか?
シリウスがルナを連れて戻って来る。楽しそうなルナに、胸が痛む。
ルナの前に立ち、今度はレグルスが手を取って連れて行く──曲が、変わった。
少し、テンポが速い。
軽やかに始まる。
ステップがさらに難しい、だが。
「流石王子と言った所でしょうか……レグルス殿下のリードが素晴らしい。
それに、ルナ様の動きがとても綺麗です。
ずっと、一緒に練習していた事が分かりますね。息がピッタリです。
ですが、あの笑顔は不味い。あれでは、皆を魅了してしまう。良からぬ者に狙われたら厄介ですね……」
そんな事をディオールが言っている。
2人のダンスから目が離せない。
俺は、直接側にはいなかった。鏡で、会話はしていたが……
でもルナを何よりも大切にしてきたのは、この2人だ。
「魅了した所で手を出せる者はいないな。
ルナにとって、俺達は大切な幼馴染でレグルス殿下と過ごして来た時間の中でダンスの練習はルナの楽しみの1つだったからな。俺もレグルス殿下も、ルナをリードする為に真面目にレッスンを受けてた位だ」
思い出したのだろう、普段笑わない男が、少しだけ見せた表情は優しい。
だが、ディオールの方を見たシリウスの視線は冷たいものに変わった。
「噂がルナの耳に入る前に、説明した方がいい。何が真実で、どれが嘘なのか。
それから、もう一つ言っておくが幼馴染として、兄としてルナを護るのは変わらない。
傷付ける事は、許さない」
本当にグランデの貴族より厄介だな。
「──申し訳ありませんが、私は、これっぽっちも、この男に恋愛感情はありません」
心底、嫌そうな顔をしたディオールが、口を開いた。
カストルの別邸で、ダンスの指導を受ける事になった。
ディオールからの指導の元、ルナとダンスを始めるが、緊張し過ぎのルナからは笑顔がない。
『引き攣ってます』って、仕方ないだろ?王族に公爵家に上位貴族が集まっている。
いくら、友人や幼馴染だとしても、彼らは子供の頃から特訓を受けている。
出来て当たり前のスキルだ。
ルナは熱を出しやすかったし、それほどダンスはしていなかっただろう。苦手だとも言っていた。
だが、思っていたよりずっと綺麗に踊る。兄達とレッスンしていたのか?あまり聞いた事がないが……
変な力が入っているのは、期待に応えようと必死になっているからだな。
ディオールも、多分……ルナなら出来ると思っているから、指示が細かいのだ。細かさゆえに間違えないようにと、ルナはガチガチになっていく。リラックスさせなければと思うのに、視線も合わなくて悪循環になってしまう。
結局、ディオールからのストップで休憩する事になった。
少し、ルナと話そうと思った時。
カストルに俺とディオールが手本を見せろと言われた。
ルナには、幼馴染だとは伝えてある。
「なら、アルの事を分かってる人なら心強いね」
そう言って笑った。
あまり不安にさせたく無かったから、誤解させないように心がけていた。
まさか、ここでダンスしろとか、カストル……余計な事を。
それにルナからもダンスを見たいなんて、確かに見た方が分かりやすいのだろう。この曲は、グランデ流に少しアレンジされているから。
思わず、ため息をつく。
仕方なく、2人で中央に向かう。
「貴方は、第2王子だ。
嫌でもグランデで、お披露目をしないといけない。
私が厳しくする分、ちゃんとルナ様の気持ちの方をリードしてください。
政治利用の婚約者候補にされて迷惑していたのは私も同じです」
「分かっている」
あの頃、伯爵の意見は、絶対で俺もディオールも従うしか無かったのだ。もちろん、伯爵が俺を護る為だったとしても。
幼馴染という、甘いものでも優しいものでもない。
従順に教育する為の程のいい監視役の1人がディオールだった。
俺には、行動制限と他にも監視がついていた。あの日、精霊にからかわれたのか?森に飛ばされて、迷った森で出逢ったのが……ルナだ。
俺の闇属性を肯定してくれた唯一の存在なんだ。
ルナの側に行く為だけに力を付けてきたのだ。
今更、手離したりしない。
伯爵は貴族の嗜みに関してはさらに厳しかった。
ダンスのパートナーとして、当然レッスンしてきたから、癖も分かるし踊りやすい。
だが───手を取りたいのは、お前じゃないし。
「貴方の手を取った、ルナ様を後悔させる気ですか?」
口角が上がる。
「させない」
「ですが──ルナ様の騎士が他にもいそうですよ?」
ディオールが笑う。
気がつけば、ルナとシリウスがダンスをすると言う。
息抜きだと言うダンスは、慣れた曲なのか……ルナがホッとした様にシリウスに身を任せる。
俺とのダンスでぎこちなかった動きは、シリウスのリードで優雅で、軽やかなものに変わった。
歳上のシリウスは流石に上手い。
何より、ルナが自然に楽しそうに笑う。
いつの間にか側に来たレグルスが、ルナ達を見ながら俺に話かけてきた。
「慣れた曲なら──ルナも上手いだろう?
俺達もずっと一緒だったんだ。お前達の関係はどれほどの物か知らないが、ルナにはもっとちゃんと説明しとけ。次のダンスの相手は俺だからな」
何言ってるんだ。
何も、言い訳する事なんて、無い。
無いはずだ。
──それが、駄目だったのか?
シリウスがルナを連れて戻って来る。楽しそうなルナに、胸が痛む。
ルナの前に立ち、今度はレグルスが手を取って連れて行く──曲が、変わった。
少し、テンポが速い。
軽やかに始まる。
ステップがさらに難しい、だが。
「流石王子と言った所でしょうか……レグルス殿下のリードが素晴らしい。
それに、ルナ様の動きがとても綺麗です。
ずっと、一緒に練習していた事が分かりますね。息がピッタリです。
ですが、あの笑顔は不味い。あれでは、皆を魅了してしまう。良からぬ者に狙われたら厄介ですね……」
そんな事をディオールが言っている。
2人のダンスから目が離せない。
俺は、直接側にはいなかった。鏡で、会話はしていたが……
でもルナを何よりも大切にしてきたのは、この2人だ。
「魅了した所で手を出せる者はいないな。
ルナにとって、俺達は大切な幼馴染でレグルス殿下と過ごして来た時間の中でダンスの練習はルナの楽しみの1つだったからな。俺もレグルス殿下も、ルナをリードする為に真面目にレッスンを受けてた位だ」
思い出したのだろう、普段笑わない男が、少しだけ見せた表情は優しい。
だが、ディオールの方を見たシリウスの視線は冷たいものに変わった。
「噂がルナの耳に入る前に、説明した方がいい。何が真実で、どれが嘘なのか。
それから、もう一つ言っておくが幼馴染として、兄としてルナを護るのは変わらない。
傷付ける事は、許さない」
本当にグランデの貴族より厄介だな。
「──申し訳ありませんが、私は、これっぽっちも、この男に恋愛感情はありません」
心底、嫌そうな顔をしたディオールが、口を開いた。
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