【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

文字の大きさ
80 / 129
第9章☆アルとルナ

5ダンス特訓②

しおりを挟む
☆アルファルド殿下



カストルの別邸で、ダンスの指導を受ける事になった。

ディオールからの指導の元、ルナとダンスを始めるが、緊張し過ぎのルナからは笑顔がない。

『引き攣ってます』って、仕方ないだろ?王族に公爵家に上位貴族が集まっている。
いくら、友人や幼馴染だとしても、彼らは子供の頃から特訓を受けている。

出来て当たり前のスキルだ。

ルナは熱を出しやすかったし、それほどダンスはしていなかっただろう。苦手だとも言っていた。

だが、思っていたよりずっと綺麗に踊る。兄達とレッスンしていたのか?あまり聞いた事がないが……
変な力が入っているのは、期待に応えようと必死になっているからだな。

ディオールも、多分……ルナなら出来ると思っているから、指示が細かいのだ。細かさゆえに間違えないようにと、ルナはガチガチになっていく。リラックスさせなければと思うのに、視線も合わなくて悪循環になってしまう。


結局、ディオールからのストップで休憩する事になった。

少し、ルナと話そうと思った時。
カストルに俺とディオールが手本を見せろと言われた。



ルナには、幼馴染だとは伝えてある。
「なら、アルの事を分かってる人なら心強いね」
そう言って笑った。

あまり不安にさせたく無かったから、誤解させないように心がけていた。

まさか、ここでダンスしろとか、カストル……余計な事を。
それにルナからもダンスを見たいなんて、確かに見た方が分かりやすいのだろう。この曲は、グランデ流に少しアレンジされているから。

思わず、ため息をつく。



仕方なく、2人で中央に向かう。

「貴方は、第2王子だ。
嫌でもグランデで、お披露目をしないといけない。
私が厳しくする分、ちゃんとルナ様の気持ちの方をリードしてください。
政治利用の婚約者候補にされて迷惑していたのは私も同じです」

「分かっている」


あの頃、伯爵の意見は、絶対で俺もディオールも従うしか無かったのだ。もちろん、伯爵が俺を護る為だったとしても。

幼馴染という、甘いものでも優しいものでもない。
従順に教育する為の程のいい監視役の1人がディオールだった。

俺には、行動制限と他にも監視がついていた。あの日、精霊にからかわれたのか?森に飛ばされて、迷った森で出逢ったのが……ルナだ。

俺の闇属性を肯定してくれた唯一の存在なんだ。

ルナの側に行く為だけに力を付けてきたのだ。

今更、手離したりしない。



伯爵は貴族の嗜みに関してはさらに厳しかった。
ダンスのパートナーとして、当然レッスンしてきたから、癖も分かるし踊りやすい。

だが───手を取りたいのは、お前じゃないし。


「貴方の手を取った、ルナ様を後悔させる気ですか?」

口角が上がる。

「させない」

「ですが──ルナ様の騎士ナイトが他にもいそうですよ?」
ディオールが笑う。


気がつけば、ルナとシリウスがダンスをすると言う。



息抜きだと言うダンスは、慣れた曲なのか……ルナがホッとした様にシリウスに身を任せる。

俺とのダンスでぎこちなかった動きは、シリウスのリードで優雅で、軽やかなものに変わった。

歳上のシリウスは流石に上手い。
何より、ルナが自然に楽しそうに笑う。

いつの間にか側に来たレグルスが、ルナ達を見ながら俺に話かけてきた。

「慣れた曲なら──ルナも上手いだろう?
ずっと一緒だったんだ。お前達の関係はどれほどの物か知らないが、ルナにはもっとちゃんと説明しとけ。次のダンスの相手は俺だからな」

何言ってるんだ。
何も、言い訳する事なんて、無い。

無いはずだ。

──それが、駄目だったのか?



シリウスがルナを連れて戻って来る。楽しそうなルナに、胸が痛む。

ルナの前に立ち、今度はレグルスが手を取って連れて行く──曲が、変わった。

少し、テンポが速い。

軽やかに始まる。
ステップがさらに難しい、だが。

「流石王子と言った所でしょうか……レグルス殿下のリードが素晴らしい。
それに、ルナ様の動きがとても綺麗です。
ずっと、一緒に練習していた事が分かりますね。息がピッタリです。
ですが、あの笑顔は不味い。あれでは、皆を魅了してしまう。良からぬ者に狙われたら厄介ですね……」

そんな事をディオールが言っている。

2人のダンスから目が離せない。
俺は、直接側にはいなかった。鏡で、会話はしていたが……
でもルナを何よりも大切にしてきたのは、この2人だ。
「魅了した所で手を出せる者はいないな。
ルナにとって、俺達はでレグルス殿下と過ごして来た時間の中でダンスの練習はルナの楽しみの1つだったからな。俺もレグルス殿下も、ルナをリードする為に真面目にレッスンを受けてた位だ」 

思い出したのだろう、普段笑わない男が、少しだけ見せた表情は優しい。

だが、ディオールの方を見たシリウスの視線は冷たいものに変わった。

「噂がルナの耳に入る前に、説明した方がいい。何が真実で、どれが嘘なのか。
それから、もう一つ言っておくが幼馴染として、兄としてルナを護るのは変わらない。
傷付ける事は、許さない」


本当にグランデの貴族より厄介だな。

「──申し訳ありませんが、私は、これっぽっちも、この男に恋愛感情はありません」

心底、嫌そうな顔をしたディオールが、口を開いた。

















しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

処理中です...